安倍晋三首相が2月に行なった答弁が注目を集めている。将来的に、海外からの移民を受け入れるかどうかについて「国民的な議論を経た上で、多様な角度から検討していく必要があるものと認識している」と述べたからだ。その後、答弁と歩調を合わせるように、政府の経済財政諮問会議の専門委員会(「選択する未来」委員会)でも検討項目に「女性、高齢者、外国人(労働者)」の活用とともに「移民」が掲げられた。内閣府が同専門委に提示した資料には「技能者、技術者中心に受け入れ(例えば、年間20万人)」と、具体的な数字の記述もある。

 移民受け入れには「人口減少への対策」という側面があるのはいうまでもない。

 このままだと日本の人口は2012年の1億2752万人から2110年には4300万人に、生産年齢人口(15~64歳)も同じく8017万人から2126万人にまで激減するという。人口減少は労働人口の減少であり、経済の縮小や国力の低下につながる。これに対し、移民を受け入れた場合、2110年の人口は1億1000万人台を維持するという。

 ただ問題は、年間20万人もの大量の移民を受け入れた場合、それに伴う「摩擦」を日本社会が受け入れられるかだ。保守層を中心に「治安悪化や日本の伝統文化が破壊される」との指摘もあるほか、「労働力不足を言うなら女性や高齢者の活用が先だ」との声もある。

 移民の受け入れは将来の日本のあり方を大きく左右する問題だ。今後の専門委の議論 を注意深く見守りたい。

   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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