ベテランとして活躍するスポーツ選手にとって、(たとえ「偉業をリスペクトした呼称」であっても)「伝説的人物」と呼ばれるのは気持ちのよくない場合がある。「自分は過去の人ではない」という矜持があるのだ。最近では、「伝説」のニュアンスを軽くするため、「レジェンド」という言葉が使われる。2014年のソチ冬季五輪でも、スキージャンプの葛西紀明(かさい・のりあき)がレジェンドとして称えられた。41歳にして個人で銀メダルを獲得。苦労の末の称号に、本人もまんざらではない様子であった。

 もともとはプロレスなどで使われることが多かった言葉だ。声援に応え、齢を重ねてもなおリングに上がり続けるスター。スポーツに「熱い物語」を求めるファンたちを中心として、「レジェンド」という言葉は徐々に浸透していった。これにサブカルチャーの世界も追随する。人気漫画の続編『キン肉マンⅡ世』では、前作の人気超人たちが「レジェンド」として登場。また、最近の特撮ものでは、劇場版になると過去の英雄たちが「レジェンド」として再登板するのが定番の流れになっている。このことは、「今日もどこかで戦い続けている」といったイメージの、レジェンドというワードが持つ「ヒーロー性」をよく表しているだろう。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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