シェアハウスは、家族ではない複数の人たちが一つの家を共有して暮らすというもの。自分だけの個室はあるものの、台所やリビング、風呂場、洗濯場、トイレなどは共有で使用する居住スタイル。ゲストハウスと呼ばれることもある。

 たとえば、3LDKで家賃15万円の賃貸マンションでも、3人で借りれば、一人あたり5万円の出費で済む。一般的な賃貸住宅を一人で借りるよりも負担を抑えられるので、若年層の間でシェアハウスの利用を希望する人が増えている。

 ここ数年、売却された社員寮などをリフォームして、シェアハウスとして貸し出す専門業者も出ており、その場合は個室にベッドなどの家具類、冷蔵庫などが備わっていることもある。敷金や礼金、保証人などが不要で、短期滞在でも利用しやすい。

 だが、シェアハウスも玉石混交で、いわゆる「脱法ハウス」と呼ばれるものもある。ビルやマンションの一室を細かく仕切って2~3畳程度の個室に仕立て、月3万円程度の安い家賃で貸し出しているものが見つかり、2013年9月に国土交通省が規制に乗り出している。この規制は、シェアハウスに建築基準法の「寄宿舎」の基準を適用するように指導したものだが、脱法ハウスに留まらず、一戸建てをシェアしている場合なども規制対象となるため、困惑の声も上がっている。

 建築基準法にふれるような脱法ハウスがはびこる背景にあるのは、若年層に広がる相対的貧困だ。今や、全労働者の4割が非正規雇用で、彼らの年収は168万円だ(国税庁「平成24年分民間給与実態統計調査結果について」)。月収になおせば14万円。これで6万円も7万円も家賃を支払ったら、生活できなくなるのは想像に難くない。

 住む場所が決まっていなければ、履歴書に記載できる住所もない。事業者も家のない人は雇いたくないので、働いて安定的な収入を得るためには、まず家が必要だ。そのため、低所得の人々が、2万~3万円という安い家賃で住める場所として、脱法ハウスが貧困ビジネスとして成り立っているのだ。

 脱法ハウス問題を根本的に解決するには、貧困層が安心して暮らせる公営住宅を増やす必要がある。ところが、反対に公営住宅はこの10年で半減しており、ニーズに逆行する形となっている。単に規制を強めるだけでは、脱法ハウスからはじき出された人が路上にあふれることになる。規制よりもまず、労働政策と住宅政策の見直しが先決だろう。

   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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