ネットショップが身近なものとなり、どこに住んでいても、地方の名物グルメにたどりつくまでの距離感は近くなった。高級品の「お取り寄せ」だけではない。地域では有名、しかし地元を一歩出ると驚くほど知られていない庶民の味が、ネットの口コミによってもてはやされる。愛知県碧南(へきなん)市の小笠原製粉が製造する、即席の袋めん「キリンラーメン」の「復権」もこの流れだ。

 キリンラーメンの誕生は昭和40年代。なんとも趣きがあるレトロなパッケージの解説によれば、「キリンは首が『長く』、子どもから年配まで大変『親しみやすい』動物」。そこに「『末永く』『親しみやすい』商品」の願いを込めた。大手メーカーに押されて1995年に一度姿を消したが、長年親しまれた地元の味の復活を求める声は途切れることなく続いた。その後、何度か限定復活するたびに完売するという愛されぶり。ついには2010年からネット販売もスタートし、すでに通販が浸透していたことと、食にはめざといネットユーザーの口コミによって、大きなヒットになった。最近では、有名商品に負けじとスーパーで見かける機会も多い。ちなみに、筆者も食べているが、いかにも「昭和から変わらずに残った味」という感じで、懐かしく親しみやすいテイストだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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