茹でた栗や、栗と小豆を練った餡でつくった餅菓子のこと。栗餅の発祥は定かでないが、もっとも古い餅の一種とされ、小豆餅や胡麻餅などとともに、奈良時代にはすでに食べられていたそうである。おそらく当時は、餅と栗を一緒に混ぜ合わせたようなものであったろう。京都で栗餅といえば、茹でた栗一粒と餡を、薄くのばした餅で一緒に包み込んだ栗大福のことをいう。おまんやさん(餅菓子店)では、月見団子が一段落するころから栗餅が一斉に売り出される。

 中国栗やヨーロッパ栗に比べ、日本栗は粒が大きく、味の良い品種が揃っている。京都府中部から兵庫県にまたがる丹波地方は、平安期より知られる名高い丹波栗の産地である。丹波栗は実が大きいことで知られ、落ちるように大きい実をつけるところから、出落栗(ててうちぐり)や大栗(おおぐり)という俗称をもっている。そのためか、京都の栗餅には栗が丸ごと入った大振りなものが多く見られ、ほんのりと甘いほくほくとした味わいは、食欲の秋の本番を告げるに十分な満足感を与えてくれる。小布施(おぶせ、長野県)や中津川(岐阜県)をはじめとする有名な栗の産地では、栗餅というと、おはぎのように栗きんとんや栗餡で白餅を包んだものを呼ぶことが多いそうで、栗大福とは呼び分けているようである。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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