「きごしょ」とは、伏見とうがらしなどの葉のことである。夏の終わりごろ、八百屋の店先には、畑から引き抜いたままのような状態のものを一束にまとめた、長さ1メートルはあろうという「きごしょ」が並ぶ。枝には、葉も、実も、ついたままである。「きごしょう」や「きのしょ」とも呼ばれ、とうがらしの実や葉を炊いた佃煮の名称でもある。伏見とうがらしは全長20センチメートルもある細長い実をつけ、味は辛みというよりも独特の甘みがある。そのため「伏見甘」(ふしみあま)とも呼ばれており、おばんざいに欠かせない京野菜である。

 厳しい残暑が続く時期には、消耗した体の疲労回復に効果がある野菜の料理が食欲をそそってくれる。「きごしょ」は食物繊維やカルシウム、ビタミンCに富み、佃煮にすれば、ごはんがすすむこと間違いない。

 佃煮をつくる場合、まず枝から実と葉をもいで、湯がく。それからちりめんじゃこか、だしじゃこと合わせ、酒と醤油で味をつけて炊きあげる。だしじゃこを使うときは、頭と腹のにがりを取り除き、わずかに背割りをしておくとよい。京都では、ごはんのおかずにするなら淡口(うすくち)醤油を使ってさっと炊いてつくる。お茶漬け用にするならば、濃口(こいくち)醤油でしっかりと味付けするのが一般的である。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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