東京電力の一般的な電気の契約は「従量電灯B」というもので、アンペア数(A)に応じた基本料金に、電気の使用量に応じた料金が加算される。1か月の基本料金は10Aが273円で、10A大きくなるごとに273円ずつ高くなり、最大の60Aは1638円だ。これに、電力使用量に応じて、1キロワット時(kWh)あたり18.89~29.10円が加算される。

 あまり知られていないが、この従量電灯Bのほかに、「従量電灯A」という契約もある。こちらは基本料金がかからず、電気を使った分だけ料金を支払う契約だ。電気の使用量が8kWhまでは224.45円で、その後は1kWh使うごとに18.89円が加算されていく。ただし、1度に使える電力量は5Aまで。電子レンジや炊飯器を使うには、13~15A必要なので、実質的には一般家庭で使うことはできないとされている。

 しかし、福島原発事故後、この従量電灯Aに切り替える「5アンペア生活」を始める人が少しずつ出てきている。その裏には、「できるだけエネルギーに頼らない生活をしたい」「自らのエネルギーの使い方を見直したい」という思いがあるようだ。

 「5Aでは、とても生活できないのではないか」と思われがちだが、冷蔵庫(450リットル)は2.5A、洗濯機は2A、テレビ(液晶42型)は2.1Aなど、必要な電力量が案外小さいものもある。これらは、ほかの電気器具と併用しなければ使うことは可能だ。

 一度に5A以上必要な電子レンジや炊飯器、ヘアドライヤー、エアコンなどは使えないが、5アンペア生活をしている人は「ごはんは土鍋でガス炊き」「暑さ寒さは着るもので調節」などの工夫をして、電気に頼り過ぎない生活を送っている。

 家族構成やライフスタイルによって電気の使い方は異なるので、誰もが5アンペア生活を送れるわけではない。だが、「炊飯器と電子レンジは同時に使わない」など電気器具の使い方を工夫すれば、5Aは無理でも15~20Aの電気契約でも生活できるのではないだろうか。

 仮に40Aから20Aに変更すれば、基本料金だけでも546円節約できる。一度に使用できる電力が小さくなれば、工夫して電気器具を使わなければいけないので、家庭で使う電気の使用量は減らせるだろう。そうした省エネの意識が広がっていけば、大量消費を前提としたエネルギー政策を転換できる可能性もある。

 電気をたくさん使わなくても、普通に暮らすことはできる。福島原発事故から3年目の夏。我が家のエネルギーの使い方を見直してみてはいかがだろうか。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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