私が吉永小百合、綾瀬はるかの次に好きな女性である。昨年春ごろだと記憶しているが『週刊ポスト』(以下『ポスト』)のグラビアを突然飾った謎の美女である。年齢不詳、国籍不明。幾分愁いに満ちた表情と整った顔立ち。服装は清楚だが脱ぐと裸身は驚くほど豊満である。

 石川達三(作家)風に表現すると、大きく熟した二つの乳房の間の深い美しい谷から、温かい情熱の湯が滾々(こんこん)と湧き流れているようだ。

 山深い鄙(ひな)びた駅のホームで佇(たたず)むモノクロ写真がある。そこで暮らしている純朴な女の子が都会へ帰って行く恋人を見送っている。映画のワンシーンのようである。

 恍惚の表情を浮かべているヘア・ヌード写真もあるが、男の影を感じさせない。清潔なわいせつ感とでもいおうか。グラビアアイドル界に久々に現れた大型グラドル。『ポスト』はいい女を見つけたものだと思った。

 以来、YURIのグラビアが掲載されるのを心待ちにした。どの号も、彼女についての情報は一切なかったが、彼女が花の匂いを嗅ぐ仕草に、ソファに横たわる一糸まとわぬ裸身にときめいた。グラビアをスキャンして「Evernote」に保存し、深夜iPadで愉しんでもいた。

 ところが彼女は昨夏突然、引退してしまったのだ。それからは「消息」などと標題をつけてたまに載ることはあったが、熱烈なYURIファンとしては心寂しくしていたところ『週刊アサヒ芸能』(3/21号、以下『アサ芸』)に驚愕情報が載ったのだ。

 YURIがAVに出ているというのである。タイトルは『続・素人娘、お貸しします。 VOL.63』(プレステージ)。仮名で柏木美玲、22歳、家事手伝いとなっているそうだ。

 間違いであってくれ。私の切なる願いは、アイドル評論家の織田祐二氏が打ち砕く。

 「顔や胸の谷間のホクロの位置が完全に一致しており、YURI本人だと断定できます」

 私にとっては苦渋の選択だったが、件のDVDを通販で取り寄せた。似ている……が、断定はできない。

 同じ週に『ポスト』(3/29号)は意味深なタイトルを付けてYURIのグラビアを組んでいた。「誰も。。何も。。知らない」

 そのYURIが『ポスト』(5/31号)で初めて肉声を聞かせたのである。「衝撃の初告白」によると彼女は長崎県生まれで、高校を卒業してからヘアサロンの見習いをやったりしていた。東京で暮らしたくて20歳の時に上京。いろいろなアルバイトをやり、夜のお店もちょっとだけやったと話している。

 現在27歳でモデルでもタレントでもない一般人。いまはカフェでウエイトレスをやっている。これまで彼氏は二人いたが、セックスは嫌いじゃないけど、「世の中の男の人はエッチしたいという欲望が強くて、ときどき怖い」から、うまく付き合えないといっている。

 ヌードになったのは友達に紹介されたから。抵抗はなかった。『アサ芸』でAV嬢だと暴露された件については「アダルトビデオですか……知りません。私じゃないと思います」と“曖昧”に否定している。彼女のちょっぴり山口百恵似の笑顔を見ていると、そんなことどうでもいい、そう思えてしまう。私にとってYURIは永遠の美女である。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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