大修館書店が2011年まで行なっていた『「もっと明鏡」大賞』は、中高生から「国語辞典に載せたい言葉」を募集するという意欲的な企画だった。第1回では「最優秀作品賞」に「ツボ(個人の好みにはまった状態)」などが選ばれている。若者言葉の宿命というか、残念ながら集まった言葉で一般化したものは少ないが、最後の第6回で最優秀作品賞となった中に、教育現場の感覚の変化を示した言葉がある。それが「電索」という新語だ。

 「電索」とは電子辞書で言葉の意味を調べることをさす。いまどきの感覚では、「調べる」よりもむしろウェブやデータベースから「検索」する感覚に近いわけで、「電子辞書の検索」で「電索」と略すのである。

 いまや学生たちの勉強のツールとして一般化した電子辞書。情報を直感的に得られるため、紙の辞書と比べ、基礎の段階では記憶の定着には向かないといった意見がある。学習量が少ない小・中学のうちに紙の辞書で学び、量も内容も高度になる高校生から電子辞書に移行する、ないし併用するという手もありそうだ。「辞書を引くこと」と「電索」の違い、メリット・デメリットを、子どもに与える親がよく理解しておくべきなのだろう。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
ジャパンナレッジとは 辞書・事典を中心にした知識源から知りたいことにいち早く到達するためのデータベースです。 収録辞書・事典80以上 総項目数480万以上 総文字数16億

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。 (2024年5月時点)

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る