怪しげな来訪者が商品を売りつけてくる「押し売り」。「押し買い」はその逆だ。高齢者などの家に狙いを定め、貴金属のたぐいを強引に買い取る。しかも相手がよく考える隙も与えずに、買値は捨て値に等しい。背景には金の価格の高騰という「事実」がある。嘘つきは話の中に本当のことを混ぜてくるので、油断は禁物なのだ。もし疑問を感じても、いつまでも帰らずに「押し」てくるので、やがて怖くなって示された額をのんでしまうという。

 こうした消費者の被害を受け、2013年2月より改正特定商取引法が施行された。業者が依頼を受けずに飛び込み訪問することは禁止され、買い取りに際して書面の交付も義務化されている。さらに、これまで訪問「販売」に当たらないとしてできなかったクーリングオフ(契約8日以内の解約)が適用されることは大きい。大切なアクセサリーを奪ったあげく、「もう溶かしてしまった」「転売した」などと返す手口はいちおう封じられることになる。

 なお今回の規制では、これまで表だった被害のない大型家電や家具、中古の流通が盛んな自動車や本などははずされた。特に中古車はトラブルが多いので、規制に含めるべきでは、という意見もある。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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