「ハワイで病気をして入院した」「パリの5つ星ホテルの調度品を壊してしまった」「バルセロナで置き引きに遭った」など、海外旅行中のさまざまなトラブルを補償する海外旅行傷害保険。民間の損害保険会社が扱うもので、おもに次のような補償が用意されている。

●自分の補償
(1)旅行先で医療機関を受診した場合の治療費用
(2)病気やケガで死亡した場合の死亡保険金
(3)病気やケガで身体に障害が残った場合の後遺障害保険金
(4)家族が現地にかけつける場合の渡航費用など
●他人への補償
(5)他人にケガをさせたり、他人の持ち物などを壊したりした場合の賠償責任
●持ち物の補償
(6)身の回りの持ち物が壊れたり、盗まれたりした場合の携行品損害

 このほか、飛行機が遅れたためにかかった予定外の出費を補償する航空機遅延費用などもあるが、重要なのは(1)のケガや病気をしたときの治療費用をカバーする補償だ。

 というのも、健康保険が使える日本国内で医療を受けるのとは異なり、外国で病気やケガをするとかかった医療費の全額を自己負担しなければならなくなる。これが非常に高額で、外国では数百万円の医療費が請求されることも珍しいことではない。

 旅行会社のJTBの「2011年度海外旅行保険事故データ」によれば、アメリカで硬膜下血腫(こうまくかけっしゅ)と診断されて21日間入院し、家族が駆けつけたケースでは、医療費や医療搬送の費用などで約2200万円かかっている。

 運悪く海外で病気やケガをして高額な医療費がかかったのに海外旅行傷害保険に入っていないと、家計に大きなダメージを与えることになる。ゴールデンウィークには海外旅行に出かける人も多いはずだが、出発前には必ず海外旅行傷害保険に加入しておこう。

 インターネットで加入する商品には、必要な補償だけを自分で選べるタイプもあり、割安な保険料で必要な補償を得ることができる。数千円の保険料をケチったおかげで、数千万円の支払いに悩むことのないように万全の準備をしてから出かけたい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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