東日本大震災から2年が経過した。

 すでに生活再建に踏み出した人がいる一方で、2013年2月現在でも約31.5万人が避難生活を続けており、仮設住宅などで不便な暮らしを強いられている。なかなか住宅再建が進まないのは、津波の被害が広範囲にわたり、建設用地確保が難しいのが最大の理由だが、被災者に格差をもたらす一因になっているのが地震保険に入っていたかどうかだ。

 私有財産である個人の住宅への国の支援は限定的で、地震や津波で住宅を失っても「被災者生活再建支援制度」から被災状況に応じて最高300万円が補償されるだけだ。これで住宅再建するのは難しい。

 とくにダメージが大きいのが住宅ローン返済中の人で、全壊して住めなくなってもローンが消えることはない。返済猶予は受けられるが、借りたお金は原則としてびた一文まけてもらえないので、新たな家を借りたり買ったりすると住居費を二重負担しなければならなくなる。

 こうした自然災害による損害をカバーできる唯一の手段として存在するのが地震保険だ。契約は損保会社を通じて行なうが、政府が支払いを約束しており、火災保険では補償されない地震・津波・噴火による損害を補償してもらえる。地震保険は単独では契約できないので、必ず火災保険とセットで加入する。地震保険で補償されるのは、火災保険金額の30~50%で、建物は最高5000万円まで。被災した場合は、被害の程度に応じて全損、半損、一部損の3つに区分され、それぞれ保険金額の100%、50%、5%が支払われる。

 このように地震保険には上限があり、損害額の判定も3区分なので、受け取る保険金が実際の損害額と合わないこともあり、それを不満に思う人もいる。しかし、損害を3区分にしているのは、一度にたくさんの人が被害を受ける大地震でもスピーディーに保険金を支払うためだ。災害時は住まいだけではなく、仕事も同時に失うなど、複数のリスクが重なることもある。その時に、迅速に保険金を支払ってもらえる地震保険の仕組みは、実は理に適ったものといえるのだ。

 東日本大震災でも、地震保険に入っていたか否かによって生活再建の明暗を分けた印象もある。ところが、全国で地震保険に加入している人は2011年度末で26%に留まっており、その重要性は認識されていないようだ。

 財務省内に設置された「地震保険制度に関するプロジェクトチーム(地震保険PT)」でも、住宅ローン契約時に災害時のリスクを認識しないまま地震保険に加入しないでいる消費者が多いことを問題視しており、財務省は銀行などの金融機関に対して、住宅ローン利用者に地震保険の重要性を説明することを要請している。

 今後8年以内に首都直下地震が起こるという予測もある。地震の発生を止めることはできないが、地震保険に加入していれば経済的な損失をカバーすることはできる。とくに住宅ローンが残っているという人は、いますぐ加入を検討しよう。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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