風などで木の葉を吹き集めたり、種々のものを寄せ集めたりすることを吹寄(ふきよせ)という。
 京都はまもなく紅葉が見ごろを迎える。平年は11月末の一週間ほどが最盛期である。町中をつかの間の錦(にしき)に染めた木の葉は、一週間もすれば、北風に吹き飛ばされてしまう。風が吹いては落ち、吹き流され、それがひと所へと吹き溜(だ)まる。木枯らしに吹かれ、寒々と枯れていく景色に風情を感じる気持ちは、日本人らしい感受性の一つといえる。吹寄と名づけられた料理や菓子、器や着物が多いのは、そのことばの印象を思い思いにかたどってきた気持ちの表れである。
 お菓子の吹寄は、小麦粉に卵や砂糖などを加え、色づけも、形も、いろいろな種類のものを寄せ集めた焼き菓子。これと似たあられもあり、どちらも紅葉の時期によく食べる。同じ菓銘(かめい)でも店によってさまざまな菓子を組み合わせ、見た目の違いも楽しい。吹き溜まった落ち葉を踏んだときのように、さくさくとした軽い食感が吹寄ならではの風情である。


昆布や豆、あられ、海老煎餅などが入った、ぎぼし(京都市下京区)の「吹きよせ」。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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