『週刊現代』は8/18・25号で「3年で富士山は噴火する」、9/22・29号で「いま富士山が大噴火したら」と警鐘を乱打している。
 琉球大学の木村政昭名誉教授によると、火山の噴火は、その周辺で小さな地震活動が頻発した時期から、35年プラスマイナス4年後に発生している。富士山周辺では噴火の兆候を示す地震が1976(昭和51)年に頻繁に発生したから、そこから考えると、35年後の2011年からプラスマイナス4年のうちに富士山が噴火する可能性が高いというのだ。
 さらに木村教授は、東日本大震災の影響で、富士山や浅間山など、房総沖に近い火山は強い圧力を受けて、この圧力が富士山内のマグマを押し上げるおそれがあり、いまがもっとも危険な時期だと言っている。
 1707(宝永4)年に起きた宝永大噴火では、約7億平方メートル、東京ドーム560杯分の火山灰が放出された。内閣府は2004年に、富士山の火山灰がどこまで飛び、どれくらい降り積もるのかを想定した「ハザードマップ」を作成しているが、静岡と山梨の県境周辺には30cm、東京から千葉一帯には2~10cm程度の灰が降る可能性があるとしている。
 関東一帯は火山灰に覆われて大停電が起き、交通は麻痺(まひ)し、水道は使えなくなる。技術評論家の桜井淳氏は「富士山からもっとも近い約90kmの距離にある浜岡原発の送電が火山灰の影響で困難になれば、燃料棒などの冷却ができなくなり、メルトダウンを起こさないとも限らない」と指摘する。
 この火山灰は「マグマが粉砕され微粒子となった、いわば薄いガラスの破片です。眼に入れば角膜を、鼻に入れば粘膜を傷つけるおそれがあるし、体内に入れば肺などに傷ができたりする」(立命館大学歴史都市防災研究センター高橋学教授)
 さらに噴火にともなって山の3分の1から4分の1が崩れる山体崩壊が起きれば、「直径数百mもあるような岩塊が高速で落下してくる。(中略)過去と同じ規模の山体崩壊が起これば、富士山周辺の自治体に10万人単位で被害がでるおそれがあります」(千葉大学津久井雅志教授)
 過去の富士山噴火は巨大地震と連動して起こっていることから、南海トラフ巨大地震が噴火の引き金になることも想定しておかなければいけないと山梨大学の鈴木猛康教授は語っている。
 そうなれば完全に「日本沈没」である。不安を煽(あお)り過ぎるきらいはあるが、いつかは必ず起こる大噴火に備えて、予測・避難態勢を万全にするよう警鐘を鳴らすのはメディアの重要な役割である。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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