日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 国内最大級と謳(うた)っているオンライン英語辞書を何気なく見ていたときのことである。和英辞典の中に「論戦を張る」という見出しを見つけて一瞬わが目を疑った。よく見ると「論陣を張る」と同義と見なし、 to take a firm stand あるいはto argue about などという英語を添えているではないか。インターネットの世界ではついにここまできてしまったのかと、複雑な心境であった。

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 「山海の珍味に舌鼓を打つ」などと言うときの「舌鼓」、皆さんは何と読んでいるだろうか。
 「舌つづみ」?あるいは「舌づつみ」?
 「舌鼓」は美味しいものを飲み食いしたときに鳴らす舌の音の意味なので、語源を考えれば「舌」+「鼓」である。「鼓」は「つづみ」だから「舌つづみ」が正しいことになる。
 実際、キリシタン宣教師が日本語を習得するために編纂(へんさん)された『日葡辞

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 ゆとりや味わいに乏しくて風情がないという意味の「味気ない」を、皆さんはどう読んでいるだろうか。「あじけない」に決まっているではないか、大方はそのようにお答えになるであろう。だが、半世紀前までは正しいとされた読みは「あじけない」ではなかったのである。
 では何が正しいとされていたのかというと、「あじきない」であった。今でも年配の方の中にはそう読む方もいらっしゃるはずである。

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 「素人はだし」ということばをご存じだろうか。何をばかなことを、そんなことばなどあるわけがないではないか、とお思いになった方も大勢いらっしゃることだろう。もちろんそれが正解なのだが、完璧な答えとは言えない。禅問答のようで恐縮なのだが、実はインターネットでは「素人はだし」が驚くほど多く検索に引っかかるのである。たとえば「ギターの腕前は素人はだし」などのように。
 なぜこのようなことになって

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 第109回で「愛想」の読みについて「あいそ」か「あいそう」かということを書いた。だが、この語にはもうひとつ、ぜひ触れておかなければならない問題がある。というのは、その使い方に関して「愛嬌」との混同が見られるからなのである。
 文化庁が2005年(平成17年)度に行った「国語に関する世論調査」によると、「愛想」を「愛嬌」と混同した、「愛想を振りまく」を使う人が増えているというのである。も

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