日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 今回は辞書を引くのはいかに楽しいかという話でもある。
 先日、都内のある女子大で「辞書を楽しむ」というタイトルで、辞書の話をする機会があった。
 一方的に話だけを聞いてもらうのも退屈であろうと思い、「辞書引き学習」の開発者深谷圭助氏の許可を得て、講演の最後に実際に辞書引きにも挑戦してもらった。深谷氏の「辞書引き学習」は知っていることばから引くという逆転の発想の指導法なのだが、

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 思いを晴らすべき手立てがないという意味の「やるせない」を、「やるせぬ」と言うような誤用が広まっているらしい。たとえば、「やるせない思い」を「やるせぬ思い」としているというのである。“らしい”とことわったのは、実際にはその誤用例をめったに見かけることがないからである。インターネットで検索しても、ほとんどヒットしない。唯一検索に引っかかった、いかにも誤用らしい誤用は、

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 すきをつかれて、思いがけない手段で失敗させられることを、「○を掬(すく)われる」と言うが、○に入る語は何か?
 またしてもクイズのような書き出しになってしまったが、正解はというと「足」である。ところが、文化庁が発表した平成19(2007)年度の「国語に関する世論調査」では、「足をすくわれる」を使うという人が16.7パーセント、本来の言い方ではない「足もとをすくわれる」を使うという人が7

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 「年越し」を漢語で言うと「越年」になるということは、皆さんもご存じであろう。たとえば交渉事が年をまたいで行われると「越年交渉」などと言う。秋に発芽して冬を越し、翌春に開花する1年生植物は「越年生植物」などとも言う。
 この「越年」だが、今でこそ「エツネン」と読まれているが、明治時代までは「オツネン」という読みが主流であった。というよりも、そのころまでの例では、「エツネン」という読みはほ

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 「名前負け」という語の誤用が高校球界で広まっていると知ったのは、日経新聞の記事審査部の記者さんたちが書いた、『謎だらけの日本語』(日経プレミアシリーズ 2013年刊)という本によってであった。「名前負け」の意味を本来と違って使っている人がいるということは承知していたのだが、限られた世界で広まっているということまでは知らなかったのである。
 この本を読んだ直後に、たまたま手にしたスポーツ

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