日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 「馬脚を晒(さら)す」という言い方をする人がいるらしい。もちろん、正しい言い方は、「馬脚を露(あら)わす」である。「馬脚が露われる」と言うこともある。
 これを、やはり間違って「馬脚を出す」という人がいるということは知っていた。実際、国立国語研究所のコーパスを検索すると、ある高名なNHKの元ニュースキャスターが、「馬脚を出す」と使っていることがわかる。ただし、「馬脚を晒す」はそこには1

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 「ハンバーガーにむしゃぶりつく」
 この文章を読んで、違和感をもった方はどれだけいらっしゃるであろうか。実はこのような「むしゃぶりつく」は今までなかった言い方なのである。
 「むしゃぶりつく」というのは、感情が激して激しい勢いで抱きつくという意味で、抱きつく相手は従来は人であることが多かった。
 それが、近年「むしゃぶりつく」対象が広がりつつある。特にその対象が食べ

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 「一生懸命働く」などというときの「一生懸命」は、もともとは「一所懸命」だったということをご存じの方は大勢いらっしゃることであろう。
 だが、どういうことか念のために説明しておくと、「一所懸命」とは、「中世、生活の頼みとして、命をかけて所領を守ろうとすること」(『日本国語大辞典 第2版』)を言ったことばである。「一所」とは、もちろん「ひとつの場所」という意味で、武士が1箇所の所領を命にか

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第196回
 

 先日ある日本映画を見ていて、主演の女優さんがベートーヴェン作曲の弦楽四重奏曲のことを「げんがくヨンじゅうそうきょく」と言っているのを聞いて、驚いた。「四重奏曲」の「四」は「ヨン」ではなく、「げんがくシじゅうそうきょく」のように「シ」と読むのが一般的だからである。その映画は笑いとサスペンスに富んだしゃれた映画で、「四重奏」を何と読もうが映画そのものの出来とは何の関係もなかったのだが、ただそのベート

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 先ずは問題から。
 悪い評判、不名誉な評判の意味の「汚名」という語を使って四字熟語を作りなさい。
 こんな問題が出たとしたら皆さんは何と答えるであろうか。
 「汚名=返上(へんじょう)」はどうであろうか? はたまた「汚名=挽回(ばんかい)」は?
 実は、従来「汚名返上」が正しいとされてきた。

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