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  11. おこたる

おこたる

ジャパンナレッジで閲覧できる『おこたる』の全文全訳古語辞典・日本国語大辞典のサンプルページ

小学館 全文全訳古語辞典

おこた・る 【怠る】
最重要語

{ら・り・る・る・れ・れ}

休むなまける、が基本の意だが、これはある状態で進行していたものがとまることで、そこから病気がよくなる、の意も生まれてくる。

〔自動詞ラ行四段〕

休む。なまける。

「滴(しただ)る事少しといふとも怠る間なく漏りゆかば、やがて尽きぬべし」〈徒然草・137〉

したたり落ちる水の量が少ないといっても休む間なく漏っていけば、すぐになくなってしまうにちがいない。

病気がよくなる。

「日ごろ、月ごろ、しるき事ありて悩みわたるが怠りぬるもうれし」〈枕草子・うれしきもの〉

幾日も、幾月も、ひどい状態で病気だったのがよくなったのもうれしい。

〔他動詞ラ行四段〕なまける。やらない。

「なほ朝まつりごとは怠らせ給ひぬべかめり」〈源氏・桐壷〉

(桐壷更衣(きりつぼのこうい)を失った帝は、その生前と同じく)やはり朝のご政務はなまけておしまいになるようだ。



日本国語大辞典

おこた・る 【怠・惰】

解説・用例

【一】〔他ラ五(四)〕

(1)しなくてはならない事をしないで、なまける。精を出さないでいる。

*日本書紀〔720〕敏達四年二月(前田本訓)「皇子と大臣とに詔して曰はく、『任那の事に莫懶懈(なオコタリそ)』とのたまふ」

*落窪物語〔10C後〕四「をかしき物は、日毎におこたらず君達に、まめなるものは北の方にと夜中暁にも運び奉り給へば」

*源氏物語〔1001~14頃〕桐壺「猶、朝まつりごとは、をこたらせ給ひぬべかめり」

*大唐西域記長寛元年点〔1163〕五「福を殖うるに殆(オコタ)ること無し」

*徒然草〔1331頃〕三九「或る人、法然上人に『念仏の時、睡りにおかされて行をおこたり侍る事、いかがしてこの障りを止め侍らん』と、申しければ」

*小学教授書〔1873〕〈文部省〉「学文を、怠りますと、貴き人に、なられませぬか」

(2)油断する。注意を払わないでいる。

*源氏物語〔1001~14頃〕若菜上「今よりは疎からず、あなたなどにも物し給て、をこたらんことは、おどろかしなども物し給はんなん、嬉しかるべき」

(3)いい加減にして、過失をおかす。あやまりをおかす。

*栄花物語〔1028~92頃〕浦々の別「身づからおこたると思ひ給ふる事侍らねど、さるべき身の罪にてかくあさましきめを見侍れば」

【二】〔自ラ四〕

(1)病気がよくなる。病気や苦しみがなおる。

*大和物語〔947~957頃〕一〇一「おなじ季縄(すゑなは)の少将、病にいといたうわづらひて、すこしをこたりて内にまゐりたりけり」

*宇津保物語〔970~999頃〕忠こそ「山々、寺々におこたり給ふべきことを祈らせ給ふに、しるしなし」

*源氏物語〔1001~14頃〕若紫「御迎への人々まゐりて、をこたり給へるよろこび聞こえ、内裏(うち)よりも御とぶらひあり」

*今昔物語集〔1120頃か〕一四・八「一部も法花経を書写供養し奉らば、少しにても苦は怠りなむと云て」

*宗祇終焉記〔1501~02〕「身に患ふ事ありて、日数になりぬ、やうやう神無月廿日あまりにをこたりて」

*読本・昔話稲妻表紙〔1806〕二・七「おのづから若君の病日を追(おひ)て怠(オコタ)り危(あやうき)命をたもちけり」

(2)事態がもとにもどる。事態がおさまる。

*平家物語〔13C前〕二・康頼祝言「夕には深山に向って宝号を唱ふるに、感応おこたる事なし」

*随筆・こがねぐさ〔1830頃か〕「酒のゑひもおこたるまま、やうやう真心になりて思へば、ありしことも夢なる心ちして」

語誌

【二】は【一】の転義で、現代にはない用法。【一】は「…をおこたる」の形をもとるが、【二】にはその用法がない。【一】【二】を通じ、「おこたる」べき内容、対象が明示されない場合が多い。韻文にはほとんど用いられず、散文に用いられる語。

語源説

(1)オコタル(起垂)義で、たゆむ意か〔和訓栞・大言海〕。また、興垂の義か。タルはタユと、興は行と義通う〔俚言集覧〕。

(2)オコナヒタユル(行絶)の義〔名言通〕。

(3)ヲコ(自来)タエルの略〔紫門和語類集〕。

(4)オコナル(行撓)の転〔言元梯〕。

(5)ヲコはヲカコトの反。タルは為ス義〔名語記〕。

(6)寝入ってオクル(起)事、たるむ故からか〔和句解〕。

(7)オクルル(後)に通う〔国語の語根とその分類=大島正健〕。オソナル(遅成)の転か〔和語私臆鈔〕。

発音

〓[0][タ]〓平安〓〓〓〓鎌倉・江戸〓〓〓〓〓[0]

辞書

色葉・名義・和玉・文明・天正・饅頭・易林・日葡・書言・ヘボン・言海

正式名称と詳細

表記

色葉名義和玉文明饅頭書言ヘボン言海

色葉名義和玉文明書言

色葉名義和玉文明言海

色葉和玉文明書言

〓〓色葉名義和玉

〓色葉名義

〓色葉和玉

天正書言

退紿色葉

辿名義

〓〓〓和玉

懈怠易林

同訓異字

おこたる【怠・惰・堕・慢・懈・嬾・懶】【怠】(タイ)心にしまりがなくだらけ、なすべきことをせずなまける。「怠業」「怠惰」「怠慢」「倦怠」《古おこたる・ゆるなり・ものうし・たゆむ》【惰】(ダ)心がゆるんでやる気がおこらない。意欲がわかずなるがままにすごす。「惰気」「惰眠」「怠惰」《古おこたる・ものうし》【堕】(ダ)心がゆるんで何もしない。だらしなくすごす。《古おこたる》【慢】(マン)気持がゆるんでなまける。心が散っておろそかにする。「怠慢」《古おこたる・ゆるなり》【懈】(ケ・カイ)緊張が解けておこたる。心がたるむ。「懈惰」「懈怠」《古おこたる・ものうし・ものぐさし・たゆむ》【嬾】(ラン)仕事をそのままほうっておく。ものぐさをする。「嬾婦」《古おこたる・ものうし・ものくさし》【懶】(ラン)気持が集中しない。ものうい。やる気がおこらない。「懶惰」「懶婦」「老懶」《古おこたる・ゆるなり・ものうし》


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おこたるの関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 276
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検索コンテンツ
1. 怠(おこたる)【篇】
古事類苑
人部 洋巻 第2巻 655ページ
2. おこた・る【怠る】
デジタル大辞泉
[動ラ五(四)] 1 すべきことをしないでおく。なまける。また、気をゆるめる。油断する。「学業を―・る」「注意を―・る」 2 病気がよくなる。快方に向かう。 「
3. おこた・る【怠・惰】
日本国語大辞典
「惰気」「惰眠」「怠惰」《古おこたる・ものうし》【堕】(ダ)心がゆるんで何もしない。だらしなくすごす。《古おこたる》【慢】(マン)気持がゆるんでなまける。心が散
4. おこた・る【怠る】
全文全訳古語辞典
ら・り・る・る・れ・れ 休む、なまける、が基本の意だが、これはある状態で進行していたものがとまることで、そこから病気がよくなる、の意も生まれてくる。 〔一〕〔自
5. おこたる【怠る】
プログレッシブ和英
勉強を怠る neglect [be negligent in] one's studies ドアの戸締まりを怠る neglect [forget] to lo
6. おこたる【怠る】
ビジネス技術実用英語
through neglect to exercise it ⦅意訳⦆それを行うことを怠った[放棄した]ために when she failed to stop
7. おこたる【怠る】
ポケプロ和仏
négliger 義務を怠る manquer à son devoir
8. おこたる【怠る】
和西辞典
descuidar, desatender 仕事を怠る descuidar el trabajo /努力を怠る descuidar los esfuerzos
9. おこたる【怠る】
和伊中辞典
((怠ける)) essere negligente[-ɡli-]in ql.co.; ((注意を払わない)) trascurare ql.co., venire
10. 懈
新選漢和辞典Web版
〈おこた・る〉なまける。気がゆるむ。
11. 解(觧)
新選漢和辞典Web版
常用漢字 学習漢字 【一】 ①〈と・く〉〈とか・す〉〈と・ける(―・く)〉 (ア)切り分ける。動物などを解体する。 (イ)分ける。 (ウ)分裂する。散らばる。
12. 弛
新選漢和辞典Web版
人名用漢字 ①〈ゆる・める(―・む)〉〈ゆる・む〉 (ア)弓のつるをゆるめる。⇔張 (イ)たるむ。弱まる。 (ウ)延期する。 ②〈おこた・る〉 ③〈こぼ・つ〉
13. 怠
新選漢和辞典Web版
形声。心が形を表し、台(たい)が音を示す。台には、ゆるやかな気持ちがある。怠は、気がゆるんで、おこたること。やす 【逆引熟語】倦怠(けんたい)・懈怠(けだい/げ
14. 惰
新選漢和辞典Web版
常用漢字 ①〈おこた・る〉 (ア)いいかげんにすます。 (イ)なまける。「怠惰(たいだ)」 ②ばかにする。 ③おとろえる。振るわなくなる。
15. 慢
新選漢和辞典Web版
常用漢字 ①〈おご・る〉いばる。とくいになる。「傲慢(ごうまん)」 ②〈あなど・る〉ばかにする。 ③〈おこた・る〉なまける。 ④おそい。 ⑤ゆっくりと。 ⑥な
16. 懶
新選漢和辞典Web版
①〈ものう・い(―・し)〉だるい。おっくう。 ②〈おこた・る〉なまける。
17. 〓画像
字通
たち。ゆく。 〓予はためらう意。おこたる。〔字鏡集〕〓 人の門を出づるに從ふ
18. おこたる【怠】[標準語索引]
日本方言大辞典
よこたえるなまける【怠】仕事をおこたる:怠あぷれる / たぼることを間断なく、また、つとめておこたる:怠ずにするさまよーしゃくおこたる:怠ことじーぐー / へっ
19. おこたる【怠る】
ポケプロ和独
vernachlässigen, versäumen
20. おこたる【怠る】
ポケプロ和西
descuidar,desatender 注意を怠る|no prestar la debida atención,descuidarse
21. おこたる【怠る】
ポケプロ和伊
…を〜|〔怠ける〕 essere negligente in ql.co. 〔注意を払わない〕 trascurare ql.co.
22. おこたる【怠る】
和羅辞典
neglego. ▽気をつけるべきことを怠り, 〜べきことを行なう quaedam custodienda omittit, facit omittenda.
23. おこたる【怠る】
ポケプロ日中
懒惰 lǎnduò. 職務を~ 不履行职务 .
24. おこたる【怠る】
ポケプロ日韓
게을리하다,소홀히 하다 職務を~ 직무를 게을리하다 努力を~な 노력을 게을리 하지 마라. 注意を~ 주의를 소홀히 하다.
25. 懈画像
字通
烝民〕に「夙夜解るに匪ず」、〔墨子、尚賢下〕に「心を攸ひ、體を解る」とあり、解・懈を通用する。 おこたる。 とく、ゆるむ。 つかれる。〔名義抄〕懈 オコタル・モ
26. 〓画像
字通
疲れてものに〓むことをいう。 つかれる、うむ、おこたる、うずくまる。 やすむ。〔名義抄〕〓
27. 怠画像
字通
り、怠慢の意とする。諸経注には「懈る」「嬾る」「壞る」などの訓があり、懈怠することをいう。 おこたる、なまける、ゆるむ。 あなどる、あきる。 おとろえる、くずれ
28. 惰[〓][〓]画像
字通
といい、嬾〓の意となる。 おこたる、なまける。 つつしみのないさま、なまる。 つかれる。〔名義抄〕惰 オコタル 〔字鏡集〕惰 
29. 慢画像
字通
と声義が近い。 あなどる、かろんずる、そまつにする。 おこたる、なまける。 おごる、うとんずる。〔名義抄〕慢 オコタル・オゴル・アナヅル・マダラナリ・オク
30. 〓[〓]画像
字通
とは舒緩なるさまをいう。 あなどる、かろんずる、ないがしろにする。 けがす、あざむく。 おこたる、おごる。 ゆるやか。〔名義抄〕〓
31. 慵画像
字通
きるに慵し」の句がある。陸游が懶の字を愛したのと似ている。 ものうい、けだるい。 おこたる、なまける。〔名義抄〕慵 モノウシ・モノクサシ 慵zjiong、容ji
32. 嬾[懶]画像
字通
は「女性に怠多し」とする。古い用例がなく、おそらく六朝後期ごろから用いられた字であろう。 おこたる、なまける。 字はまた懶に作る。〔名義抄〕嬾 オコタル・オロカ
33. 懶[嬾]画像
字通
同字異文とみてよい。懶婦魚の油は、遊戯場で用いると明るいが、紡績場では暗くて役に立たぬという。 おこたる、ものうい。 にくむ、いやがる。 正字は嬾に作る。*語彙
34. 〓[〓]画像
字通
れた糸を解き治める意である。 わずらわしい。 みだれる。 おこたる。〔字鏡集〕〓 ミダル
35. 〓画像
字通
乎」ということもあり、声義が近い。 つかれる、やみつかれる。 おこたる。 たれる。〔名義抄〕〓 カサナル・カサヌ
36. skive
プログレビジネス英語
vi【英略式】怠る,怠ける ((off)),サボるskivern
37. 官(かん)は宦(かん)の成(な)るに怠(おこた)る
故事俗信ことわざ大辞典
役人は、役所の仕事に熟達してくると、なまけ心が生じる。初心を忘れぬようにせよ。「宦」は、宮仕え、官職。また、「官」に同じ。 説苑‐敬慎「曽子曰、官怠二於宦成一
38. 戦(たたか)い勝(か)ちて将(しょう)驕(おご)り卒(そつ)惰(おこた)れば敗(やぶ)る
故事俗信ことわざ大辞典
戦争に勝って、将軍が慢心して敵をあなどり、兵卒がなまけるようになると、必ず次には負けることになる。 史記‐項羽本紀「再破二秦軍一、項羽等又斬
39. 病(やまい)は癒(い)ゆるに怠(おこた)る
故事俗信ことわざ大辞典
病気は治癒しかけると油断して、再発を招くなど失敗することがある。 浮世草子・世間御旗本容気(1754)四・二「病は癒ゆるに怠るとやら、心能に心ゆるみ、此ほどのつ
40. うち-おこた・る【打ち怠る】
全文全訳古語辞典
〔自動詞ラ行四段〕ら・り・る・る・れ・れ《「うち」は接頭語》なおざりにする。なまける。 「世をのどかに思ひて打ちおこたりつつ」〈徒然草・188〉一生をのんびりし
41. うみ‐おこた・る【倦怠】
日本国語大辞典
〔自ラ四〕飽きておろそかになる。*古活字本毛詩抄〔17C前〕一六「物をよくつとめて、ち共倦怠る事のないは、文王の令聞ぞ」*古道大意〔1813〕上「学問は〈略〉此
42. おぼし‐おこた・る【思怠】
日本国語大辞典
〔自ラ四〕(「おもいおこたる(思怠)」の尊敬語)お心から離れる。お忘れになる。*源氏物語〔1001~14頃〕帚木「君はおぼしおこたる時のまもなく、心くるしくもお
43. おもい‐おこた・る[おもひ‥]【思怠】
日本国語大辞典
〔自ラ四〕心から離れる。考えがゆるむ。忘れる。*夜の寝覚〔1045~68頃〕五「かた時も思おこたらず胸心やすからずのみ思ひ給へられしが苦しさに」*苔の衣〔127
44. みえ‐おこた・る【見怠】
日本国語大辞典
〔自ラ四〕しばらく訪れないでいる。*蜻蛉日記〔974頃〕上・天暦八年「又ほどへて、みえをこたるほど」
45. やまい は 癒(い)ゆるに怠(おこた)る
日本国語大辞典
病気は治癒しかけると油断して、失敗することがある。*浮世草子・世間御旗本容気〔1754〕四・二「病は癒ゆるに怠るとやら、心能に心ゆるみ、此ほどのつかれも出、我し
46. shirk音声
プログレッシブ英和
[動詞]他動詞〈責任・義務などを〉避ける,逃れる,さぼる;〈…するのを〉おこたる≪doing≫;自動詞〈人が〉(責任などから)逃げる≪from (doing)≫
47. おろそかにする
和西辞典
descuidar, desatender ⇒おこたる(怠る)
48. 葵(源氏物語) 20ページ
日本古典文学全集
して、さまざまの御つつしみせさせたてまつりたまふ。かやうなるほど、いとど御心の暇なくて、思しおこたるとはなけれど、途絶え多かるべし。〔四〕新斎院御禊の日、葵の上
49. 葵(源氏物語) 34ページ
日本古典文学全集
、なかなかもの思ひのおどろかさるる心地したまふに、御文ばかりぞ暮つ方ある。源氏「日ごろすこしおこたるさまなりつる心地の、にはかにいといたう苦しげにはべるを、え引
50. 葵(源氏物語) 43ページ
日本古典文学全集
葵の上が、物の怪にもうち勝って、多年待たれていた源氏の子を無事産んだことを喜ぶ。葵の上のご気分。「おこたる」は病状が快方へ向うこと。あれほど重かった病気の後だか
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