地震、台風、豪雨など、国民経済への影響が著しく、被災自治体への財政援助や被災者への助成がとくに必要となる大災害。1962年(昭和37)施行の「激甚災害法」(正式名称「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」昭和37年法律第150号)に基づき、政令で指定される。列島を縦断した台風や大震災など、地域を特定せずに災害そのものを指定する「激甚災害指定基準による指定(本激)」と、局地的豪雨などを市町村単位で指定する「局地激甚災害指定基準による指定(局激)」の2種類がある。内閣府に置かれる中央防災会議の答申を受けて、内閣総理大臣が指定・適用措置を決定し、被災地の早期復旧や被災者の早期生活再建を支援する。激甚災害に指定されると、道路、橋、トンネル、河川、学校、図書館、被災者住宅などの復旧・建設事業、農地や水産業施設の復旧事業、感染予防事業などの国庫補助率が通常の5~8割から1~2割かさ上げされる。また、被災地の中小企業、農林漁業者への貸付制度や災害保証の特例措置も設けられる。
激甚災害の指定は、復旧・復興見込み額が被災自治体の標準税収入に対してどの程度に達するかなどを基準に判断される。しかし指定基準が厳しく、1990年代に全国規模の激甚災害(本激)に指定されたのは1995年(平成7)の阪神・淡路大震災のみであり、設定当初から制度の形骸(けいがい)化が懸念されていた。このため、1999年の激甚災害法改正で、たとえば公共土木施設などの被害についての激甚災害指定基準(「本激」)は、全国(被害を受けた都道府県・市町村)の災害復旧事業費(被害)査定見込み額を、全国の標準税収入に対して4%超としていたものを0.5%超の災害へと引き下げるなど、指定基準が大幅に緩和され、以後、ほぼ毎年、全国規模の激甚災害(本激)が指定されている。2004年(平成16)の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震、2024年(令和6)の能登(のと)半島地震などが「本激」として、2000年の三宅島(みやけじま)火山活動による災害や2008年の岩手・宮城内陸地震などが「局激」として指定を受けた。また、被害額の見積りのため、指定に数か月かかることもあったが、2017年以降、最速1週間程度で指定見込みを公表できるよう運用の見直しが行われた。
なお、国が指定する災害には、激甚災害のほか、大規模災害復興法に基づいて復興対策本部が復興計画をつくる「特定大規模災害」、自治体の管理する道路や橋などの復旧事業を国が肩代りできる「非常災害」、特定非常災害特別措置法に基づいて応急仮設住宅の入居期限延長などの行政手続の期限延長を認める「特別非常災害」などがある。