事業者の公正な競争を促すため、製品を模倣したり、顧客名簿や設計図などの営業秘密を不正に取得したりする行為を規制(禁止)する法律。平成5年法律第47号。不競法と略すこともある。映画、音楽、小説などは著作権法、発明技術は特許法、ブランドは商標法で保護されているが、これらの法律で保護しきれていないビジネス上の知的財産権・ノウハウ・営業秘密などを保護する目的がある。グローバル化やデジタル技術の進展にあわせ、頻繁に改正されている。不正競争行為には、①他人の商品等の表示(氏名、商号、商標、包装、容器等)と同一または類似のものを使って他人の商品・営業と混同させる、②他人の著名な商品等の表示を自己の商品等の表示として使用する、③他人の商品等を模倣する、④他の事業者の営業秘密を取得・使用・開示する、⑤「限定提供データ」(営業秘密には該当しないものの、ID・パスワードによって制限された情報)を不正に取得・使用・開示する、⑥営業上の閲覧者制限技術の効果を妨げる装置・プログラムを提供する、⑦不正利益の取得や他の事業者に損害を与えるため他の事業者のドメイン名を取得・保有・使用する、⑧原産地などを誤認させる、⑨競合関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽事実を告知・流布する、⑩外国の商標権利者の代理人が本国の許可を得ずに、同一・類似の商標を使用した商品等を譲渡・輸出する、などが該当する。以上とは別に国際条約などに基づき、①外国の国旗・紋章などの商業上の不正使用、②国際機関の標章の商業上の不正使用、③外国公務員等への贈賄、も禁止行為に定めている。未遂も刑事罰の対象で、不正に取得した利益(犯罪収益)は没収される。また、被害を受けた事業者の告訴がなくても起訴できる(非親告罪)。
不正競争防止法の起源は、工業所有権の保護に関するパリ条約(1883)のヘーグ改正条約(1925)に加入する必要から、1934年(昭和9)に制定された旧不正競争防止法にさかのぼる。世界知的所有権機構(WIPO)が1992年、不正競争防止法の国際的な整合性を加盟各国に求めたことから、1993年(平成5)に全面改正され、類似表示や模倣行為が規制された。その後、1998年に外国公務員への贈賄禁止が盛り込まれ、デジタル化の進展に対応するため、ドメイン名による不正行為(2001)、限定提供データに関する不正行為(2018)、デジタル空間での模倣品提供行為(2023)などを不正競争行為に追加した。近年、産業スパイだけでなく、退職・転職者による営業秘密の漏洩(ろうえい)事件が相次いでおり、2003年(平成15)に営業秘密の刑事的保護規定を導入し、保護規定の強化(2005)、刑事罰の強化(2006、2009、2015)、被害企業(原告)の訴訟手続の整備(2011、2023)などの改正がなされている。