硬骨魚綱ハダカイワシ目ハダカイワシ科に属する海水魚。北海道以南から駿河(するが)湾までの太平洋沖、小笠原(おがさわら)諸島の海域、千島(ちしま)列島南部沖、琉球(りゅうきゅう)諸島近海、オーストラリア南東海域、ニュー・カレドニアやハワイ諸島近海など西太平洋、およびカナダのブリティッシュ・コロンビア州沿岸から北米の東太平洋の海域に広く分布する。体は細長く、体長は体高の約4.5倍。尾柄(びへい)高はやや高い。頭は大きく、頭長は体高より著しく長い。吻(ふん)は丸くて短い。吻長は眼径のおよそ半分。眼径は頭長のおよそ4分の1。背びれは腹びれ基底(付け根の部分)上方から始まり、背びれ基底長は臀(しり)びれ基底長とほとんど同長。背びれは14~16軟条。臀びれは13~14軟条で、背びれ基底の後端下方から始まる。脂(あぶら)びれ(背びれの後方にある1個の肉質の小さいひれ)は臀びれ基底後端の上方にある。胸びれは15~17軟条で、やや長くて腹びれ基底を越える。鰓耙(さいは)は上枝に3~5本、下枝に9~11本。体は一様に黒色。
また、発光器は種の重要な特徴である。鼻部背側発光器Dn(図中①、以下同)はないが、小さい鼻部腹側発光器Vn(②)はある。雌雄ともに、尾柄部に尾柄上部発光腺(せん)SUGL(⑯)と尾柄下部発光腺INGL(⑰)があり、単一で著しく大きく、黒色素で縁どられる。両発光腺は小さい個体ではほとんど同長であるが、大きい個体では尾柄上部発光腺のほうが尾柄下部発光腺よりも大きくなる。脂びれの直前には発光腺がない。体側にあるすべての発光器は小さい。肛門(こうもん)上発光器SAO(⑫)は3個で、ほとんど垂直に並び、最上のものは側線直下に位置し、最下のものは腹部発光器VO(⑪)につながる。腹部発光器は5個で、ほとんど水平に並ぶ。胸部発光器PO(⑩)は4~5個で、前の2~3個はほとんど一直線に並ぶが、後ろの2個はやや上方にある。また前の2~3個の発光器の間隔は後ろの2個の発光器の間隔の約2倍。胸びれ下発光器PVO(⑧)は2個で、ほとんど垂直に並び、上のものは胸びれ基底上端より下方にある。胸びれ上発光器PLO(⑦)は側線のわずかに下にある。体側後部発光器Pol(⑭)は1個で、側線のわずかに下にある。尾びれ前発光器Prc(⑱)は3個あり、最上のものは尾びれ基底の側線上に、ほかの2個は尾柄後端の腹縁に並ぶ。前部臀びれ発光器AOa(⑬)は5~6個、後部臀びれ発光器AOp(⑮)は2~3個。
最大体長は14センチメートルほどになる。昼間は水深500~1000メートルの中深層にすみ、夜間は水深50~600メートルまで日周鉛直移動をする。
本種が属するカガミイワシ属は、背びれ基底長が臀びれ基底長とほとんど同長か、前者が後者よりわずかに長いこと、雌雄ともに黒色素で縁どりされた1個の尾柄上部発光腺および尾柄下部発光腺をもつことなどの特徴をもつ。本種は脂びれの前に発光腺がないことでカガミイワシL. luminosaによく似るが、カガミイワシは4番目の胸部発光器がほかのものよりも著しく高位にあることで本種と区別できる。