政府が外交・領事事務等を行わせるために外国に設置した機関。日本では、1870年(明治3)にヨーロッパ(イギリス、フランス、プロイセン)に1名、アメリカに1名の外交官(計2名)を派遣し、翌1871年にパリとワシントンに公使館を設置したのが始まりである。現行の外務省設置法(平成11年法律第94号)は在外公館として大使館、公使館、総領事館、領事館、政府代表部の5種類を規定しているが、公使館は1967年以降、領事館は1997年以降設置されておらず、現在設置されているのは大使館、総領事館、政府代表部のみで、総数200以上である。
大使館は、特命全権大使を長とする外交使節団の公館。原則として相手国の首都に置かれるが、予算・人員の制約のため、ある国の大使館が近隣国の大使館を兼ねることがある(兼轄)。総領事館は、総領事を長とする領事使節団の公館。相手国の主要都市に置かれ、外務省訓令によって定められた領域を管轄し、領事事務を行う。大使館とは異なり、自国を代表して相手国政府と交渉する機能はもたない。政府代表部は、国際連合やASEAN(アセアン)(東南アジア諸国連合)などの国際機関等において自国を代表する公館で、当該機関の所在地に置かれる。在外公館は、「外交関係に関するウィーン条約」や「領事関係に関するウィーン条約」に基づき不可侵であり、また課税を免除される。
大使館および総領事館は、在外選挙制度にかかわる事務も行う。国外に居住する選挙人が投票するためには、在外選挙人証の交付を受ける必要がある。2024年(令和6)の公職選挙法施行令の改正により、在外公館が行う在外選挙人証の交付や記載事項の変更等の事務手続が簡素化され、市区町村の選挙管理委員会と在外公館とが、外務省を介さず直接に電子データをやり取りすることが可能になった。これにより在外投票を希望する人の利便性が向上することが期待される。