コロナウイルス科に属するRNAウイルス。1965年にかぜ患者からみつかった。直径80~160ナノメートル(ナノは10億分の1)で、ウイルスとしては大型の部類である。コロナとは太陽表面の光冠のことで、王冠も意味する。球形で周囲に先端が丸くなったスパイク状のとげがある形がコロナを連想させることから命名された。哺乳(ほにゅう)動物や鳥類に感染するそれぞれ固有のウイルスがいる。ニワトリとラットに感染するものは人間同様に呼吸器症状が中心のかぜウイルスであるが、ウシ、ブタ、イヌなどに感染するものは胃腸炎をおこす。
人間に感染するコロナウイルスは血清型で少なくとも4タイプに分かれる。感染については子どもは少なく、成人が中心で、冬のかぜの10~25%はコロナウイルスが原因といわれる。ボランティアによる接種実験では、2~4日の潜伏期の後、鼻汁、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛みなどがおこるが、熱はあまり高くならず、6~7日で回復する。
重症急性呼吸器症候群(SARS(サーズ))の原因として新型のコロナウイルスが特定されたが、このウイルスは高熱、さらには肺炎に進行し、比較的健康な人でも死亡することから、これまでのコロナウイルスの性質とは大きくかけ離れている。世界保健機関(WHO)は2003年4月、この新型のコロナウイルスをSARSコロナウイルスと命名した。コウモリコロナウイルスが変異し、ハクビシンなどの動物を経て人に感染するようになったと考えられている。2002年から2003年にかけ8098人に感染、774人の死者が報告された。
また、2012年には、中東呼吸器症候群(MERS(マーズ))の原因としてSARSコロナウイルスと近縁の新種であるMERSコロナウイルスがみつかった。やはり別種のコウモリからみつかっており、コウモリまたはラクダを介しての感染が疑われている。濃厚接触感染のため、SARSコロナウイルスに比べると感染力は低い。
さらに2019年末には、中国・湖北(こほく)省武漢(ぶかん)市で原因不明の肺炎患者が発生し、のちに新型のコロナウイルスが原因であると判明した。このウイルスはSARS-CoV2(サーズコブツー)と命名された。SARS-CoV2による感染症はWHOにより「COVID(コビッド)-19」と名づけられ、その後世界中に広がるパンデミックに至った。日本では「新型コロナウイルス感染症」とよばれ、2023年(令和5)5月8日までに3380万人以上の感染者、7万人を超える死者となり、社会的にも甚大な影響が出た。なお世界で報告された感染者数は2023年9月24日時点で7億7000万人を超え、死者は695万人以上となっている。