厚生労働大臣の免許を受けて、医師の指示のもとに、生命維持管理装置の操作および保守点検を行うことを業とする者である(臨床工学技士法2条2項)。略称CE。
生命維持管理装置とは、「人の呼吸、循環又は代謝の機能の一部を代替し、又は補助することが目的とされている装置」(同法2条1項)のことで、診療報酬点数における医療機器安全管理料(2024年度)の定義では「人工心肺装置及び補助循環装置、人工呼吸器、血液浄化装置(人工腎臓を除く)、除細動装置及び閉鎖式保育器」とされている。実際の業務ではさらに幅広い医療機器を管理対象としており、おもな業務としては、呼吸治療業務(人工呼吸器)、心臓手術業務(人工心肺装置)、心血管カテーテル検査業務、不整脈治療業務(ペースメーカー)、血液浄化業務(人工透析装置)、手術室業務、集中治療室業務、医療機器の保守管理業務(前述の機器および輸液ポンプ、シリンジポンプ、生体情報モニター等)、医療安全管理業務(医療機器安全管理責任者、医療従事者に対する医療機器の安全使用のための研修、医療機器の安全使用のための情報収集等)などがある。
近年の医療機器の進歩と普及およびタスクシフト/シェアによる医師の負担軽減の流れを背景に業務範囲は拡大しつつある。2021年(令和3)、臨床工学技士法の一部改正で新たな業務範囲が追加された。追加された内容は、生命維持管理装置を用いた治療において当該治療に関連する医療用の装置(生命維持管理装置を除く)の操作(当該医療用の装置の先端部の身体への接続または身体からの除去を含む)に関するものである。具体的には、下記の3点が指定されている。
(1)手術室または集中治療室で生命維持管理装置を用いて行う治療における静脈路への輸液ポンプまたはシリンジポンプの接続、薬剤を投与するための当該輸液ポンプまたは当該シリンジポンプの操作ならびに当該薬剤の投与が終了した後の抜針および止血。
(2)生命維持管理装置を用いて行う心臓または血管に係るカテーテル治療における身体に電気的刺激を負荷するための装置の操作。
(3)手術室で生命維持管理装置を用いて行う鏡視下手術における体内に挿入されている内視鏡用ビデオカメラの保持および手術野に対する視野を確保するための当該内視鏡用ビデオカメラの操作。
現職の技師は、厚生労働大臣指定による基礎・実技研修(告示研修)を受講し必要な知識と技能を修得することにより、この追加された業務が実施可能となる。
臨床工学技士は国家資格である。臨床工学技士になろうとする者は、臨床工学技士国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない(同法3条)。国家試験の受験資格を得るには、臨床工学技士養成課程のある養成校(大学、専門学校等)で厚生労働大臣の指定する科目を修得しなければならない。医学と工学の両面の知識とスキルを有し、チーム医療と医療安全を支える重要な専門職である。