曲玉とも書く。逆C字形に湾曲した玉で、頭部が膨らみ孔(あな)が穿(うが)たれ、尾部が細くなっているのが普通の形である。縄文・弥生(やよい)・古墳時代を通じてみられるが、縄文時代のものは湾曲を示すが不定形のものが多く、石器時代勾玉ともよばれ、弥生・古墳時代のものと区別される場合がある。逆C字形に整美された勾玉は、主として弥生時代に現れ、古墳時代に盛行するが、後期に至るとコ字形に変化してくる。材質も縄文時代のものは硬玉、軟玉、蛇紋岩、粘板岩、硅岩(けいがん)、片麻(へんま)岩など多種多様であるが、弥生時代になると硬玉、蛇紋岩、ガラス製のものが多出する。古墳時代は、前期には硬玉が、前期末から中期には碧玉(へきぎょく)が、後期には瑪瑙(めのう)の勾玉が主流をなし、硬玉は減少する。大形の滑石製勾玉で、腹、背、胴などに数個の小勾玉をつけた子持勾玉が出現するのは中期のころで、他の滑石製勾玉とともに祭祀(さいし)に主用されたものと考えられている。なお、頭部に数条の刻線をつけたものは丁字頭(ちょうじがしら)勾玉といわれ、尾部と頭部が付着し環状を呈したものや2個の勾玉が背で付着したものなどは異形勾玉と称されている。勾玉の発生は獣類の歯牙(しが)に穿孔(せんこう)したものが祖形で、のちにその形を模して玉石でつくられたとする獣牙起源説が一般的であるが、縄文時代前期に盛行した飾玉類より発展したとする説が近時有力となってきている。『古事記』には勾玉、『日本書紀』には曲玉が用いられているが、一般には勾玉の字を使用している。勾玉は日本独自の形の玉で、朝鮮半島南部の古墳出土のものは日本よりの伝来品とされている。