助産師が公衆または特定多数人のためその業務(病院または診療所において行うものを除く)を行う場所をいう(医療法2条)。助産院ともいう。助産師とは「厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若(も)しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子」と定められている(保健師助産師看護師法3条)。
施設・設備に関しては、妊婦、産婦または褥婦(じょくふ)10人以上の入所施設を有してはならないとされており(医療法2条2項)、構造設備の面では、分娩(ぶんべん)室、防火対策設備、避難経路などの基準が定められている(医療法施行規則17条)。また、清掃、消毒、感染予防対策などに関しても、基準や遵守事項が定められている。人的体制に関しては、助産所の管理者は助産師でなければならないとされている(医療法11条)。
分娩を取り扱う助産所については、分娩の安全の確保の観点から「嘱託医師および嘱託する病院または診療所の確保」が求められている。嘱託医師については「産科または産婦人科を担当する医師を嘱託医師とすること」、嘱託医療機関については「診療科名中に産科または産婦人科および小児科を有し、かつ、新生児への診療を行うことができる病院または診療所(有床)を確保すること」とされている(医療法19条、および医療法施行規則15条の2第1項および第3項)。
助産所の数は減少傾向にあり、分娩を取り扱う予定の助産所数は、2022年度(令和4)末の時点で338施設である(令和4年度衛生行政報告例)。
一方、厚生労働省は、「院内助産」の導入も推進している。これは、「妊婦の多様なニーズに応え、地域における安全・安心・快適なお産を実現するために、医療機関内で、医師・助産師が連携する仕組み(院内助産・助産師外来)」であり、緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が主体的に妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥1か月ごろまで、正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供する体制をいう。産科医師はよりハイリスクな対象に専念し、比較的ローリスクな正常産を助産師が担う方向で「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」が作成されており、産科の医師不足や分娩施設の減少への対策として、今後の普及が期待される。
日本助産師会の発行する「助産業務ガイドライン2019」は院内助産でも活用できるように内容が整備されており、2024年改訂版の発行に向けて準備が進められている。