病院等の病床の整備を図るにあたり、都道府県が医療計画のなかで設定する地域的単位。一次~三次医療圏まであるが、二次医療圏、三次医療圏については医療法第30条の4第2項14および15に規定されている。
一次医療圏とは、一次医療(初期医療、プライマリ・ケア、身近な医療)を提供する区域で、おもに診療所や病院の外来医療が中心である。医療法に規定はないが、基本的に市町村を単位として設定されている。
二次医療圏とは、医療計画において、病院等の病床の整備を図るべき地域的単位となる区域である。一般的な入院医療が医療提供の中心である。地理的条件等の自然的条件および日常生活の需要の充足状況、交通事情等の社会的条件を考慮して、一体の区域として病院等における入院医療を提供する体制の確保を図る地域的な単位として、医療法施行規則第30条の29の1に規定されている。複数の市区町村を単位とし、おおむね人口20万人前後の区域である。全国に330の二次医療圏が設定されている(2024年4月時点)。
三次医療圏とは、二次医療圏をあわせた区域であって、主として特殊な医療を提供する病院の病床の整備を図るべき区域として、医療法施行規則第30条の29の2に規定されている。特殊な医療とは、特殊な診断または治療を必要とする医療であって、(1)先進的な技術を必要とするもの、(2)特殊な医療機器の使用を必要とするもの、(3)発生頻度が低い疾病に関するもの、(4)救急医療であってとくに専門性の高いもの、のいずれかに該当するものである。医療法施行規則第30条の28の7に規定されている。原則として都道府県の区域を単位として設定されており(北海道は広域であるため6医療圏)、全国に52の三次医療圏が設定されている(2024年3月時点)。
医療介護総合確保推進法(平成26年法律第83号)の成立を受け、地域包括ケアシステムの構築を通じ、地域における医療および介護の総合的な確保を推進するため、地域医療構想(ビジョン)が医療計画に導入された。地域包括ケアシステムとは、地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその人の能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、予防、住まいおよび自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制のことである。また、地域医療構想とは、地域の医療供給体制の将来のあるべき姿を示すものであり、地域における病床の機能の分化および連携を推進するための基準として、病床の機能区分(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとの病床数の必要量推計とその達成に向けた方法等に関するものである。地域医療構想については医療法第30条の4第2項7に規定されており、医療計画の必須記載項目の一つである。地域医療構想を検討する「構想区域」は二次医療圏を基本として、「人口構造の変化の見通しや医療の需要の動向、医療従事者および医療提供施設の配置の状況の見通し等を考慮して、一体の区域として地域における病床の機能の分化および連携を推進することが相当であると認められる区域」とされている(医療法施行規則第30条の28の2)。既設の二次医療圏が入院医療を提供する一体の区域として成り立っていない場合(人口規模が20万人未満、かつ流入患者割合が20%未満、流出患者割合が20%以上)や人口規模100万人以上の二次医療圏については、必要に応じて区域の設定の見直しの検討が必要とされている(厚生労働省医政局長通知。令和5年6月15日)。なお、「流入患者割合」とは、二次医療圏内の医療施設で受療した入院患者のうち、圏外に居住する患者の割合であり、「流出患者割合」とは、二次医療圏内に居住する患者のうち、圏外の医療施設で受療した入院患者の割合である。