広島への原子爆弾の投下による被害に関する遺品などの資料を保存・展示する博物館類似施設。通称は原爆資料館。「原子爆弾による被害の実相をあらゆる国々の人々に伝え、ヒロシマの心である核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に寄与する」ために設置され、公益財団法人広島平和文化センターが指定管理者として管理・運営する。
広島平和記念都市建設法(昭和24年法律第219号)に基づいて「恒久の平和を記念すべき施設」として、国庫補助を受けて建設され、1955年(昭和30)に開館。初代館長には市民有志とともに被爆資料を収集してきた地質学者の長岡省吾(ながおかしょうご)(1901―1973)が就任した。1973~1975年、1990~1991年(平成2~3)の二度の大改修を経て新装開館。また、1994年には隣接する広島平和記念館が改築され、広島平和記念資料館東館として開館した。その後も常設展示の再整備が行われ、2017年(平成29)に東館、2019年に本館がリニューアルオープンする。2006年には、丹下健三(たんげけんぞう)の実施設計による鉄筋コンクリート建ての本館が、第二次世界大戦後の建築物として初の国の重要文化財に指定された。修学旅行生や外国人観光客などが多く訪れ、1980年代以降(新型コロナウイルス感染症〈COVID(コビッド)-19〉流行の影響を受けた時期を除く)、来館者が年間100万人を超える、広島市における中心的な観光施設である。
東館では、核兵器の開発と投下に至った歴史やその危険性、被爆前後の広島の歴史などが紹介され、本館には、被爆者の遺品を中心に、被爆の惨状を示す写真・資料が展示されている。リニューアル後は、それぞれの遺品にまつわるストーリーにより焦点があたる展示構成となった。おもな収蔵資料は被爆資料、写真、原爆の絵などで、関連図書・雑誌を所蔵する情報資料室も付設され、原爆被害関連資料の収集・保存・整理機能も担う。館内では、被爆体験証言者による被爆体験講話や被爆体験伝承者・家族伝承者による講話も行われる。被爆者証言ビデオの制作や国内外への写真ポスター、映像資料などの貸出しも行うほか、インターネット上でも、常設展示の紹介に加え、収蔵資料の検索が可能な「平和データベース」を整備するなど、日本における原爆被害の発信、平和学習の拠点の一つとして多彩な活動を展開している。