血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が高くなる状態。血糖を調整するインスリンというホルモンの分泌や働きが不足することにより生じる。
遺伝的要因(生まれつきの体質でインスリンが分泌されにくい、体の中でうまく働かない)と環境的要因(食べすぎ、運動不足、ストレスなど)のいずれか、あるいは両方により、インスリンの作用不足となり、高血糖に至る。糖尿病治療薬の中断や、必要量より少ない投与も原因になる。
極度のインスリン欠乏と、コルチゾールやアドレナリンなどのインスリン拮抗ホルモンの増加により高血糖・高ケトン血症(血液中に酸性物質であるケトン体が増加した状態)・アシドーシス(本来は弱アルカリ性の血液が酸性に傾いた状態)をきたした病態である「糖尿病性ケトアシドーシス」は1型糖尿病でおこりやすく、インスリン治療の中断や、感染、ストレスなどをきっかけに生じることが多い。「高浸透圧高血糖状態」は2型糖尿病の高齢者におこりやすく、脱水、下痢、感染、ストレスなどをきっかけに生じることが多い。
軽度の高血糖では自覚症状はほとんどないが、高血糖が持続・悪化すると、のどが渇く(口渇)・水をたくさん飲んでしまう(多飲)、尿量・排尿回数が増える(多尿)、全身に倦怠(けんたい)感がある、急激に体重が減る、などの症状がみられる。重度の高血糖状態では、ケトアシドーシス、高度脱水などをおこし、意識障害(傾眠〈眠くなる〉・昏睡(こんすい)〈意識がなくなる〉)に陥り、命にかかわるおそれもある。
血糖値は、食前・食後で数値が大きく異なるため、検査時の食事状況により判定基準が異なる。空腹時126mg/dL以上あるいは糖負荷後2時間値200mg/dL以上、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)が6.5%以上の場合、糖尿病が疑われる(「糖尿病」の「検査・診断」の項参照)。
糖尿病性ケトアシドーシスでは、血糖値250mg/dL以上、ケトン体強陽性(尿中ケトン体(+)~(+++))、アシドーシス(pH7.3以下)が特徴的にみられる。
高浸透圧高血糖状態では、血糖値600mg/dL以上、尿中ケトン体(-)~(+)、著しいアシドーシスは認めない(pH7.3~7.4)ことが多く、浸透圧が高い(血液の濃度が高い状態)のが特徴である。
食生活や運動習慣など、生活習慣を改めることで改善できる可能性がある。糖尿病と診断された場合には、薬物療法が検討される。重度の高血糖状態の際は、インスリンや電解質(ナトリウムやカリウムなど)を点滴で投与する治療が必要になる。
軽度の高血糖状態でも長期的に続くと2型糖尿病、さらには慢性糖尿病性合併症に至る。適切な食事・運動の継続、体重管理、定期的な検査などが必要である。