海外に住む有権者が、海外にいながら、自国の国政選挙などに投票できる制度。すべての国民に選挙権行使の機会を確保する目的があり、これによる投票を在外投票とよぶ。日本では、1998年(平成10)の公職選挙法(昭和25年法律第100号)改正で導入され、2000年(平成12)から実施された。在外投票できるのは、日本国籍をもつ満18歳以上の有権者で、在外選挙人名簿に登録され、在外選挙人証をもつ人である。登録の申請には、出国前に市区町村へ申請する出国時申請と、海外の日本大使館などに申請する在外公館申請の二つから選択できる。在外公館申請の場合、登録には、同一在外公館の管轄区域内に引き続き3か月以上住所を有する必要がある。対象選挙は、比例代表、選挙区、補欠などすべての国政選挙(衆議院議員選挙と参議院議員選挙)で、地方選挙は対象外。なお、在外選挙人登録をすることにより、「憲法改正国民投票法」(正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」平成19年法律第51号)に基づく国民投票や、「最高裁判所裁判官国民審査法」(昭和22年法律第136号)に基づく国民審査の投票ができる。投票は、日本国内での公示日翌日から在外公館ごとに設定する投票締切日(日本への送付日数で異なる)までに投票する「在外公館投票」か、日本の投票終了時刻までに投票用紙を日本へ送付する「郵便等投票」のいずれかを選択する。在外選挙人名簿の登録者数は約9万7000人(2023年9月時点)。
日本の在外選挙制度の対象は当初、比例代表選挙に限定され、選挙区選挙や最高裁判所裁判官の国民審査は対象外だった。しかし最高裁判所は、在外邦人の投票権について、比例区選挙への限定は違憲(2005)、国民審査権の制限は違憲(2022)との判断を相次ぎ示した。これを受け国会は公職選挙法をたびたび改正し、選挙区選挙への対象拡大、登録手続の迅速化、郵便等投票の追加、在外国民審査の導入などを実施した。なお、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど多くの主要国に在外選挙制度があるが、イギリスのように在留期間が15年を超えると在外投票権を失う国もある。