就業者の存在形態をいい、就業状態の分類構成から一国の労働力をとらえたものである。15歳以上の生産年齢人口のうち、家事労働者、通学者などの無業者を除く労働力人口は、失業者と就業者に分けられる。就業者は経済活動人口economically active populationともよばれ、さまざまな角度から就業構造として分類できる。
就業構造の主要な分類に、産業別就業構造がある。これは、第一次・第二次・第三次産業別や農林業・非農林業の別、詳細な産業分類別(産業中分類・産業小分類別)にまとめられる。より詳細な産業分類は、日本標準産業分類に沿って分類される。また、産業別の就業構造以外にも、従業上の地位別(自営業主・家族従業者・雇用者別)、雇用形態別(常用雇用・臨時雇・日雇の別、もしくは、正規の職員・従業員・パート・アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託、その他の別)、職業分類別、年齢別、地域別、勤め先の企業規模別、就業時間別、雇用契約期間別、(兼業農家を含む)本業・副業別など、さまざまな就業構造のとらえ方がある。また、複数の分類を組み合わせることも多い。
就業構造を調査する統計に、全数調査である総務省「国勢調査」(初回は1920年、5年ごとに実施)や、月ごとの就業構造の変化をとらえる総務省「労働力調査」(1946年以降、毎月)がある。また、詳細に就業構造を把握できる調査として、総務省「就業構造基本調査」(1956年から1982年まではおおむね3年ごと、1982年以降は5年ごと)がある。「就業構造基本調査」は、就労環境の変化に応じて、就業構造としてとらえる分類を対応させている。たとえば、2022年(令和4)の調査においては、テレワークの実施状況別にみた就業構造も調査対象としている。
そのほかに、従業者を雇用する企業・事業所側から就業構造を把握するものとして、総務省「経済センサス(基礎調査・活動調査)」がある。就業における賃金の構造を調べる調査には、月ごとの賃金構造の変化をとらえる厚生労働省「毎月勤労統計調査」、詳細な賃金構造を調査する厚生労働省「賃金構造基本統計調査」がある。海外の就業構造を把握する場合には、各国の統計を集約しているOECD(経済開発協力機構)やILO(国際労働機関)の提供情報が役だつ。ただし、各国で集計方法や定義が異なる場合もあるため、比較をする際には注意を要する。
日本の産業別就業構造の推移をその国際的な推移と比較すると、就業人口の相対的比重が第一次産業から第二次産業へ、さらに第二次産業から第三次産業へ移動するというペティの法則の指摘する傾向が、日本の場合でも明白にみられる。1955年(昭和30)以降、就業者に占める自営業主、家族従業者の割合は低下している。一方、雇用者に正規の職員・従業員が占める割合は、1990年代末から急速に低下しており、1982年に83.1%であった正規の職員・従業員の割合は、2022年には63.1%まで減少している。