土地所有者などによる通常の利用が行われない地下のこと。権利関係が輻輳(ふくそう)した既成市街地では、用地買収に対する合意形成に課題が生じることから、大深度における地下利用については法に基づき運用されており、「大深度地下使用法」(正式名称は「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」平成12年法律第87号)に、その定義がされている。具体的には、同法および同法施行令により「建築物の地下室及びその建設の用に通常供されることがない地下の深さとして、地表から40メートル」と「通常の建築物の基礎ぐいを支持することができる地盤のうち最も浅い部分の深さに10メートルを加えた深さ」のいずれか深いほうの地下が大深度地下とされている。大深度地下使用法において、大深度地下では、公共の利益となる事業のために、事業者が事業区域を使用する権利を取得しても、通常は土地所有者などに補償すべき損失が発生しない(事前の補償は要しない)とされている。なお、具体的な損失が生じた場合には、使用権取得後1年以内に限り、土地所有者などから事業者に対して補償を請求することが可能とされている。また、大深度地下は、道路、河川、鉄道、電気通信、電気、ガス、上下水道などの公益性を有する事業に限り使用が認められており、対象地域は首都圏、近畿圏、中部圏と限定されている。2024年(令和6)までに、神戸市大容量送水管整備事業(2007年6月認可)、東京外かく環状道路(東京外環自動車道。関越道~東名高速)(2014年3月認可)、中央新幹線(東京都・名古屋市間)(2018年10月認可)、一級河川淀川(よどがわ)水系寝屋川(ねやがわ)北部地下河川事業(2019年3月認可)の4事業が、大深度地下使用法の適用を受けている。
この大深度地下利用は、1987年(昭和62)に閣議決定された国土総合開発法(現、国土形成計画法)に基づく第四次全国総合開発計画において、「地下深層空間を公的利用に優先させる制度、この空間を利用する新しい施設の在り方などについて検討を行う」と位置づけられ、大深度地下使用法制定に向けて動き出し、2000年(平成12)に同法が制定されたことにより実現した。
一方、大深度地下より浅い地下は、浅深度地下とよばれている。これまでも、道路や公園などの公共施設や建築物が高密度に輻輳する都市では、土地を地上と地下で立体的に活用してきた。たとえば、生活にかかわる上下水道や電力、ガス、通信などのインフラは地下空間に敷設されてきた。浅深度地下利用については、多くは公共施設の占用(道路や公園などの公共施設に一定の工作物、物件または施設を設置し、継続的に公共施設の空間を使用すること)であり、そのなかでも道路下における利用が多い。公共施設内の浅深度地下利用において、設置者別に整理すると、管路・河川・通路・鉄道など各施設管理者が設置するもの、おもに地下街会社が設置する地下街、道路事業者が設置する共同溝・駐車場・歩行者専用道路がある。民有地内における浅深度地下利用では、土地所有者自らが設置するもの、民法上の契約行為のもとで別の設置者が設置するものがある。民有地内の地下活用は地下階で示されることも多く、百貨店の地下階は「デパ地下」ともよばれている。また、建築物に附置する駐車場や荷さばきヤードなども設置されている。なお、浅深度地下利用において、民有地の地下を所有者以外が利用する場合は、大深度地下利用とは異なり地上権が設定され、所有者に必要な補償が行われる。さらに、公共用地の地下を利用する場合には、公共施設管理者の占用許可を申請することとなる。占用については、その公共施設の根拠となる法に定めてあり、基準に基づいて地下利用の許可が与えられる。たとえば、道路であれば、道路法第32条に許可対象が示されている。
地下空間を利用するにあたって、地上と違い、地下空間は実際に目で見てすべてを把握できる空間ではないため、深度にかかわらずあらかじめ可能な限り網羅的に調査し、地質を把握しておくことが、施工時にトラブルを生じさせないためにも重要である。
日本の地下利用の特徴を海外と比較すると、災害に対応した地下空間利用がされている点である。たとえば洪水リスクを低減するために、地下に大規模貯留池が設置され、洪水被害を低減させている。一方、地下空間に防災施設がある日本に対して、海外では防衛・防空施設が地下に設置されている。それも日本における大深度地下レベルの深さに防空壕(ごう)などが設置されている都市もある。