眼球に密着(コンタクト)させて目の屈性異常を矯正する小さくて薄いレンズ。CLとも略される。19世紀末から使われ始めた記録がある。最初はガラス製であったが、1930年以降ポリメチルメタクリレート(PMMA)を素材にした強角膜レンズが考案・作成された。1948年には現在のハードコンタクトレンズ(HCL)の原型となる角膜レンズが作製され、角膜に涙の表面張力を利用して装着するレンズとして普及した。しかし、PMMAレンズは酸素透過性をもたないため、長時間装用や不規則な装用で角膜への酸素供給不足による充血や角膜障害をおこしやすくなる欠点がある。このため、酸素透過性の高いケイ素やフッ素含有の樹脂を素材としたガス透過性HCL(RGPCL)が開発され、現在は日本のHCLはほとんどRGPCLになっている。
一方で、より柔らかい素材で角膜と強膜の境界を超えて被覆するソフトコンタクトレンズ(SCL)は、HCLより遅れて開発された。装用感がよく装用のための練習も少なくすみ、安価に生産できるレンズとして急速に普及が進みCLの主流になっている。高分子間の空隙(くうげき)に取り込んだ水を介して角膜に酸素を供給するハイドロゲルレンズと、高いガス透過性をもつシリコーン素材が混合することで十分な角膜への酸素供給を可能にしたシリコーンハイドロゲルCL(SHCL)に分けられる。SCLとしての共通点はあるが、素材の違いによりそれぞれ異なる性質をもつレンズとして扱うのが適切である。
素材とともに、CLのデザインは安全に角膜の上に装着するための種々のくふうがされている。CLを安全に装用し良好な視力を得るためには、使用者の目の屈折の状態、涙液の状態を含めた目の診察と角膜形状などの計測を行い、最適なベースカーブ、レンズの大きさ、レンズデザインを選ぶ必要があり、専門知識をもった眼科医師の診察が必要である。
通常の屈折矯正に加えて、乱視用のレンズ、遠近両用レンズがHCLにもSCLにもある。また、SCLには角膜が強く混濁した状態を目だたなくするための整容目的虹彩(こうさい)つきや、おしゃれ目的のカラーコンタクトレンズなどがある。
CLは、日本では薬事法でクラスⅢの「高度管理医療機器」に指定されており、販売するには高度管理医療機器販売業の許可を得る必要がある。おしゃれ目的のカラーコンタクレンズも同様の扱いになっている。
CLは日中など活動している間に装用して使用し、就眠前には取り外すのが基本であるが、酸素透過性の高いCLの一部は、就眠中も連続して装用できる承認をとっている製品もある。特殊な使い方になるが、角膜形状を変化させて屈折異常(おもに軽い近視)の程度を減らす目的で、就眠中に装着し覚醒後はレンズを外して生活するオルソケラトロジーレンズ(特殊なカーブをもつHCL)がある。
HCLの多くは汚れの洗浄等を適切に行えば、2年近くは使用可能なものが多いが、SCLは、使い捨てレンズ(外したら捨てて再装用しない)、頻回交換レンズ(最長2週間で交換する)、定期交換型(最長1~3か月で交換する)レンズが主になる。使い捨てレンズを除けばHCLもSCLも、取り外した後のレンズごとに指定されたレンズケア(洗浄、消毒、保管など)が必要である。レンズケアが不適切であると重症の角膜障害をきたすリスクが高くなることが明らかにされている。