採取した血液などを検体とし、次世代シークエンサーなどを使ってがんのゲノムを解析する検査手法。英語のリキッドは日本語の「液体」、バイオプシーは「生検」をさし、液体生検ともいう。尿や唾液(だえき)など、その他の体液を使う場合も該当する。がん医療において、ある分子標的治療薬がその患者に有効かどうかを調べるために実施するコンパニオン診断で、採血によるリキッドバイオプシーが実用化されている。従来のがん組織を採取する方法に比べて体への負担が軽い(低侵襲)という利点がある。
血液には細胞から遊離したcfDNA(cell free DNA)や細胞外小胞、マイクロRNA(miRNA)などさまざまな物質が含まれている。なかでもがん患者の場合、死滅したがん細胞に由来するctDNA(circulating tumor DNA:血中循環腫瘍(しゅよう)DNA)が微量ながら存在しており、これを増幅、解析することでがんの原因となっている遺伝子変異を調べることができる。
日本では、2000年代初めのがん分子標的治療薬の登場後、がん組織を採取してコンパニオン診断薬で解析する方法がとられていたが、2018年(平成30)にリキッドバイオプシーによるコンパニオン診断薬が登場した。2021年(令和3)にはがん遺伝子パネル検査でも血液で300種類以上の遺伝子を網羅的に検査できるキットが実用化され、公的医療保険の適用となった。
その後も2023年に、大腸がんの手術後のctDNA測定が再発リスクの判定に有用であるとの研究成果を国立がん研究センターなどが報告するなど、応用範囲が広がっている。
がん検診領域においても、近年、血液のほかに尿や唾液を使いmiRNAやctDNAを解析して網羅的にがんを早期発見しようという「複数がん早期検出(MCED、multi-cancer early detection)検査」の研究が国内外で進んでいる。