(1)太田天神山古墳 群馬県太田市内ヶ島にある。平地につくられた全長210メートルの東日本最大の前方後円墳。盾形二重の濠(ほり)を巡らす。県・市が計3回にわたって周濠(しゅうごう)部の調査を行っている。墳丘には川原石使用の葺石(ふきいし)を施し、円筒埴輪(はにわ)のほかに器財形埴輪を樹立する。後円部中腹に、江戸時代以前に盗掘された凝灰質砂岩製の縄掛(なわかけ)突起を有する長持形石棺(ながもちがたせっかん)底石棺材が遺存する。近くに数基の陪塚(ばいづか)のほか、同一主軸をとって同工の円筒埴輪を有する帆立貝(ほたてがい)式古墳の女体山(にょたいざん)古墳が存在する。5世紀中葉の古墳。国指定史跡。
(2)前橋天神山古墳 群馬県前橋市後閑(ごかん)町字坊山に所在する。広瀬川右岸の段丘上に築造された全長129メートルの前方後円墳。葺石と周濠をもつ。1968年(昭和43)の団地造成時に市が調査し、後円部に北頭位の長大な粘土槨(かく)を確認した。奈良桜井茶臼山(ちゃうすやま)古墳、宮崎持田48号古墳などの鏡と同笵(どうはん)関係にある三角縁神獣鏡をはじめとする5面の鏡と、銅鏃(どうぞく)、鉄鏃、刀剣類、靫(ゆぎ)などの武器・武具、鉄斧(てっぷ)・鑿(のみ)・鉇(やりがんな)・刀子(とうす)などの工具類、紡錘車形石製品などが出土した。後円部墳頂には焼成前に底部を穿孔(せんこう)した丹(に)塗りの壺(つぼ)形土器、高坏(たかつき)、小型丸底坩(かん)、器台が存在した。4世紀後葉の関東における畿内(きない)的色彩の強い前期古墳。現在、後円部の一部を残すのみである。副葬品類は国指定重要文化財。
(3)大和(やまと)天神山古墳 奈良県天理市柳本町天神にある。柳本天神山古墳ともいう。山麓(さんろく)に立地する全長113メートルの前方後円墳。崇神(すじん)陵古墳の陪塚的位置にある。1960年(昭和35)橿原(かしはら)考古学研究所が発掘し、後円部に木櫃(もくひつ)を納めた竪穴(たてあな)式石室を検出した。木櫃内外から後漢(ごかん)の方格規矩鏡(ほうかくきくきょう)6面を主体とする23面の鏡をはじめ、鉄剣、直刀、鉄鏃、鉄斧、鉇(やりがんな)、鉄鎌(てつがま)などと約41キログラムの水銀朱が出土した。特異な主体部構造、人体埋葬を伴わないとされること、水銀朱の大量出土、副葬鏡に三角縁神獣鏡を含まず、大半が中国鏡であることなど、隣接する崇神陵古墳との関係で注目すべき点が多い前期古墳である。