正式名称は「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(平成11年法律第86号)といい、通称として「化管法」「PRTR法」ともよばれる。PRTR制度(環境汚染物質排出移動登録制度)とSDS制度(安全データシート制度)を柱として、「事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止すること」を目的として、1999年(平成11)7月に制定された。2001年1月より段階的に施行。本法は、従来の公害関連法令とは異なり、「規制」という手法を含まないという特徴を有する。
本法の対象となる化学物質は、PRTR制度とSDS制度の双方の対象となる「第一種指定化学物質」と、SDS制度のみの対象となる「第二種指定化学物質」とに分かれるが、ともに「有害性」と「暴露可能性」(環境中に広く存在するかどうか)を考慮して定められる。有害性については第一種と第二種は同じであるが、暴露可能性については両者は異なる(第二種は地域環境での滞留が「将来も見込まれる」点が第一種との相違である)。
PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)とは「環境汚染物質排出移動登録」のことである。PRTR制度とは、人の環境や生態系に有害となるおそれのある化学物質について、事業所から環境(大気、水、土壌)への排出量、および廃棄物に含まれるかたちでの事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計し、公表する制度である。また、国民からの請求があった場合は、営業秘密を確保しつつ、個別事業所の届出データも、国によって開示される。PRTR制度は、2001年(平成13)4月から実施されている。
SDS(Safety Data Sheet)とは「安全データシート」のことである。SDS制度とは、事業者による化学物質の適切な管理の改善を促進するため、対象化学物質またはそれを含有する製品をほかの事業者に譲渡・提供する際には、化学物質等の譲渡・提供事業者に対して、その化学物質の特性および取扱いに関する情報(SDS)を事前に提供することを義務づける制度である。SDS制度は、2001年1月から運用が始まった。取引先の事業者からSDSの提供を受けることにより、事業者は自らが使用する化学物質について必要な情報を入手し、化学物質の適切な管理に役立てることが期待される。また、特定化学物質管理促進法とは別の観点から、労働安全衛生法や毒物及び劇物取締法においてもSDSの提供に係る規定があり、同様の制度が実施されている。
なお、SDSは、国内では2011年度(平成23)までは一般的に「MSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)」とよばれていたが、国際整合の観点から、GHS(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)で定義されている「SDS」に統一された。