不登校の子どもをはじめ、国籍や年齢などにかかわらず、すべての人に義務教育に相当する多様な教育機会の提供を目的とした法律。正式名称は「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(平成28年法律第105号)。超党派の議員立法で2016年(平成28)に成立、2017年に完全施行された。不登校の児童生徒のほか、義務教育の未修了者、在留外国人の子女などが通いやすい民間のフリー・スクール、公立の教育支援センター、特別な教育課程をもつ不登校特例校、夜間中学など、通常の学校以外の多様な学びの場を確保する施策の策定を国と自治体の責務とし、状況に応じた必要な財政支援に努めるよう求めている。
不登校者の増加を踏まえ、教育機会確保法は、学校復帰を大前提としていた従来の政策を転換。不登校者を無理に通学させることはかえって状況を悪化させる懸念があるため、子どもたちの「休養の必要性」と校外での「多様で適切な学習活動」の重要性を認めた。また、第二次世界大戦中や戦後の混乱期に義務教育を十分に受けられなかった未修了者に加え、不登校などで十分に学べないまま義務教育を終えた形式的卒業者や、近年増加傾向にある日本の通常の学校で学ぶのが困難な外国人子女にも教育機会を確保する観点から、夜間中学への就学機会の提供を盛り込んだ。不登校の小中学生は2022年度(令和4)に約29.9万人と、同法成立前(2015年度約12.6万人)から大幅に増えたほか、2020年実施の国勢調査によると、戦中・戦後の混乱などで最終学歴が小学校卒(約80.4万人)や小中学校に在学したことがない、あるいは卒業していない未就学者(約9.4万人)を含め、義務教育を終えていない人が全国で約90万人に上る。文部科学省によると、2021年度に日本語指導が必要な児童生徒数(含む公立高等学校生)は約5.8万人に達した。国は都道府県と政令指定都市に、夜間中学の最低1校の設置を求めるなど、多様な学習の場の整備を求めているが、全国にフリー・スクールは351か所(2018年12月時点)、教育支援センターは1654か所(2022年時点)、夜間中学は44校(2023年10月時点)にとどまる。