人や物などの位置を緯度・経度の座標で表す情報。人工衛星からの発射信号で位置を測定する測位衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)の発達や、GNSSの代表格でアメリカが提供する全地球測位システム(GPS)関連機器の小型化などで、位置情報は自動車・航空機・船舶などのナビゲーションシステムのほか、ドローンや自動運転などに応用されている。GPS搭載の携帯端末(スマートフォン、タブレット型端末など)の進化で、一般の人が常時、高精度の位置情報を得られるようになり、現在地の確認・検索、紛失端末の探索に用いられるほか、子どもの見守りサービスなど個人向けビジネスが登場したり、行楽地などの人出の推計も可能となった。しかし一方で、GNSS信号の仕様が一般に公表されていることを悪用して、偽信号で位置情報を改竄(かいざん)するスプーフィングspoofing(なりすまし)被害が世界的に問題になっている。
個人の位置情報はプライバシーなどにかかわる個人情報のため、国際的に保護・規制する動きが広がっている。ヨーロッパ連合(EU)は2018年施行の一般データ保護規則(GDPR)で、厳格な管理体制を企業に求め、違反したIT企業などに制裁金を科している。アメリカではカリフォルニア州が2020年に消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:CCPA)を施行し、GDPRに準拠した規制を導入した。日本では2005年(平成17)施行の個人情報保護法のガイドラインで、「ある個人の位置情報」それ自体については、特定の個人を識別することができない個人関連情報に、「連続的に蓄積される等して個人を識別できる場合のある位置情報」は個人情報に、それぞれ該当するとしている。2020年(令和2)の改正(施行は2022年)で、漏洩(ろうえい)した場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務づけ、個人情報保護委員会の措置命令に違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に罰則が強化された。2021年施行の改正ストーカー規制法は、相手の承諾なく位置情報を把握する行為を規制対象とした。一方で、2023年施行の改正刑事訴訟法で、保釈中の被告人の逃走を防ぐため、被告人に位置情報を把握できる端末の装着を命じることが可能になった。欧米では、動画配信アプリのTikTok(ティックトック)から位置情報などが中国当局へ流出するおそれがあり、国家安全保障上のリスクになると懸念し、政府端末でのTikTokの使用を禁止した。