元旦や三が日(または元旦から7日まで)を大正月というのに対し、15日あるいは14日から16日の三日間は小正月と呼ばれている。月の満ち欠けをもとにした旧暦では、1月15日は満月で、新春の真ん中にあたる日なので、まじないや占いなどのさまざまな行事が古くからあった。それらの多くは現在の新暦における1月15日に行なわれている。左義長はそのような小正月に行なわれていた火祭りで、三本の松と青竹を三角錐の状態に組んで、その中に門松や注連縄(しめなわ)などの正月飾りを入れて燃やす行事である。トンドやトンド焼、三九郎焼、道祖土焼(さいとやき)、御幣焼(おんべやき)、ホチョウジなど、日本各地で地域独特の名称で呼ばれ、伝承されている。京都では神社や河原、田畑など、あちらこちらで火祭りが行なわれており、左義長の火で餅を焼いて食べれば、一年間無病息災で過ごせるという言い伝えがある。この日に京都を一望してみれば、市内のほうぼうから白い煙が空へ立ちのぼっていく様子が見られる。

 左義長は、もともと平安時代に行なわれていた宮中行事に由来している。三毬杖(さんぎっちょう)を略した呼称といわれ、三本の毬杖という意味で、毬杖とは、正月のめでたい遊戯、打毬(だきゅう)で使われる棒状の道具のことである。左義長の起源は、打毬の遊戯中に壊れてしまった毬杖を、陰陽師(おんみょうじ)が集めて焼いたこととされている。また、左義長のときに、年始の書き初めを燃やすことを吉書(きっしょ)揚げと呼んでおり、このときに書の燃えさしが空高く舞い上がると、書道が上達するという。これも平安時代に宮中清涼殿で行なわれていた天皇の書き初めを燃やしたことに由来している。


初冬の田畑には左義長のために準備された、写真のような木や藁などをまとめたものがちらほらと見られる。これに直接飾り付けたり、周囲に竹などを三脚に立てて松飾りなどを積み上げたりするなど、京都の中であっても地域ごとにいろいろな方式があるようだ。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊現代』(1/3・10号、以下『現代』)で1945年から現在までの各界の「立派だった日本人」を100人選び、その中から総合ベスト30を選んでいる。

 週刊誌ではよくある企画だが「立派だった」というところがミソなのだろう。だがスポーツや学術では選べるだろうが、政界や財界は立派でないヤツがこれまでもその世界を牛耳ってきたから、立派という篩(ふる)いにかけたらほとんどが落ちこぼれてしまうはずだ、と、ぶつぶつ言いながら政界から見ていく。田崎史郎と田原総一朗が講評しているのだが、1位に吉田茂ではなく安保条約を改定した安倍首相の祖父である岸信介を挙げていることからも、選考に疑問をつけざるを得ない

 「憎まれ役を引き受けた」「憲法改正も視野に入れていた」(田原)「安倍は岸の政権運営を教訓にしたはず」(田崎)の岸が、「戦前、開戦阻止を唱える」「吉田学校で池田や佐藤を育てた」吉田を上回るのはなぜか。二人は、アメリカにある岸のCIAファイルが未だに非公開であることを知っているのか。読売の社主だった正力松太郎がCIAの手先だったことは公開しているのに、岸のファイルを公開しないのは、そこには日本人に知られてはならない「不都合な真実」があるからであろう。少なくとも立派な人間でないことは間違いない。

 2位に田中角栄、3位に中曽根康弘を入れたのでは、政治家はブラックなほどいいと言っているようなものである。この3人は日本の戦後政治に汚点を残し、政治不信を極限まで高めた“戦犯”として挙げられるべきだと、私は思う。

 財界も1位松下幸之助、2位本田宗一郎、3位井深大(いぶか・まさる)では新味がなさ過ぎるが、井深と共にソニーを創業した盛田昭夫を「会社を私物化した」という理由で外したのはいい。「メザシの土光さん」で親しまれた土光敏夫が入っているのも想定内だが、これならダイエーの中内功を入れてもいいと思うのだが。戦後の流通業界に革命を起こした人間で、中内とヤマト運輸の小倉昌男(16位)はもっと評価されていい。

 芸能界は100人いれば100人が違う人間を選ぶだろう。ベスト3が高倉健、美空ひばり、渥美清。健さんは素敵だが、亡くなったばかりというご祝儀も加味しての評価で、2、3年後に選んだら、だいぶ顔ぶれが変わるのではないか。

 演技力で選べば渥美清、森繁久彌、三船敏郎、藤山寛美、フランキー堺になるだろうし、人気ということでいえば石原裕次郎、美空ひばり、吉永小百合か。立派な芸能人の第1位に祭り上げられて、苦笑しているのは健さん自身であろう。

 スポーツ界はあと10年後にやってみても長嶋茂雄、王貞治、大鵬の3人は不動だろう。4位に五輪で2大会連続金メダルをとった体操の加藤沢男、5位にボクシングのファイティング原田が入っているのがやや意外だ。8位に選んだ野茂英雄の功績はもっと評価するべきである。彼がいなければイチローも松井も田中将大も大リーグにはいけなかったかもしれない。全盛期を過ぎてはいたが日本人の実力を大リーガーに見せつけた野茂は、日本球界の大功労者である。

 文化・芸術分野も異論百出であろうが、手塚治虫、司馬遼太郎、黒澤明のベスト3は順番は別として、大方が納得するのではないか。だが岡本太郎(5位)、阿久悠(7位)、色川武大(8位)、赤塚不二夫(9位)には評価が分かれるところであろう。

 ちなみに私なら1位大岡昇平、2位東山魁夷、3位立川談志にする。

 学術は、1位から湯川秀樹、南部陽一郎、糸川英夫、今西錦司、柳田國男。ノーベル賞を取ったばかりの山中伸弥が6位に入っているのはご愛敬だが、10位に聖路加国際病院名誉院長の日野原重明が入っているのは首を傾げる。彼の魅力はわからないではないが、長生きすれば立派なのか? 少なくとも9位の丸山真男と並べるのは、評者の見識を疑う。

 とまあ、各分野で挙げられた人の中から福田和也がベスト30位までを、彼の独断と偏見で選んでいるのだが、トップは予想通り長嶋茂雄。2位が吉田茂、3位が松下幸之助、4位が美空ひばり、5位が手塚治虫としている(28位に立川談志が入っているのは、談志ほどお辞儀の綺麗な人はいないという理由から)。

 私も熱烈な長嶋ファンだからこの評価に異存はないが、新年の長嶋のドキュメンタリーを見て、その思いをさらに強くした。

 死んでいてもおかしくなかった重篤な脳梗塞から生還し、誰もが驚くハードなリハビリをこなして、もう一度グラウンドで野球に会いたいという前向きで明るさを失わない長嶋の姿に感動させられた。

 彼こそ日本人の最良の部分を体現している真のスーパースターで「人間国宝」にすべきだと思う。

 東京オリンピックでは開催国に種目提案の権利が認められたので、野球が復活する可能性が高いという。日本のオリンピック野球チームを長嶋が指揮することも、夢ではないかもしれない。(文中敬称略)

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 新年明けの『週刊現代』と『週刊ポスト』は、年末に作り置きのものだから企画が勝負になるのだが、残念ながらこれといったものはない。申しわけないが、何とか3本を選んでみたので暇つぶしに読んでください。

第1位 「有名500社『年収ランキング』」(『週刊ポスト』1/16・23号)
第2位 「2015年まるごと完全予測 景気・株・円安・会社 こう動く!」(『週刊現代』1/17・24号)
第3位「いま日本で『本当にうまい役者』ベスト100人を決める」「いま日本で『本当に歌がうまい歌手』ベスト50人を決める」(『週刊現代』1/17・24号)

 第3位。『現代』のうまい歌手、うまい役者という企画自体は褒められたものではない。これまで何度も繰り返されてきた古臭い企画だが、まあ新年ということで許そう。
 「うまい歌手」は二昔前なら1位は美空ひばりで決まりだったが、いまはよくいえば群雄割拠、悪くいえばドングリの背比べである。
 ベスト5まであげると、1位から順に桑田佳祐、中島みゆき、山下達郎、小田和正、井上陽水。3位の山下がやや意外だが、そのほかは順当だろう。6位に五木ひろし、7位に沢田研二、8位に都はるみがランクイン。
 紅白でニューヨークからライブ中継で出演した中森明菜は12位で、紅組のトリを務めた松田聖子が20位。失礼だが明菜は目がうつろで口パクではないかと心配になるほど体調がよくなさそうだった。
 NHKが強引に口説いたのかもしれないが、歌姫完全カムバックとは当分いかないようである。
 意外な低評価は氷川きよし39位、森進一、吉幾三40位。氷川は同性愛疑惑やマネジャーへの暴力沙汰が響いたのか?

 同じような企画が「うまい役者は誰」だ。すぐに上がるのは役所広司、佐藤浩市、西田敏行あたりだが、最近私が評価するのは岡田准一(じゅんいち)だ。NHKの大河ドラマ『軍師官兵衛』は一度も見ていないが、期待していなかった映画『蜩(ひぐらし)の記』の岡田が地味な役柄だったがいい味を出していた。
 さて、ベスト1には“意外な?”役者が選ばれている。『クライマーズ・ハイ』やNHKの朝の連ドラ『マッサン』で好演した堤真一 (50)が、コメディから人情もの、シリアスまで幅広くこなせると評価が高い。
 2位以降は、香川照之、藤原竜也、役所広司、浅野忠信、大森南朋(なお)、堺雅人、佐藤浩市、渡辺謙、濱田岳(がく)と並ぶ。
 岡田准一は意外に低評価で15位。中井貴一が18位。三浦友和19位、西田敏行21位、水谷豊が22位だ。
 反対に高評価だと思うのは本木雅弘の24位。お茶の宣伝と映画『おくりびと』しか印象にないが、一つ一つの仕事がていねいだそうだ。
 役所広司は何の役をやっても役所広司になってしまうところが難だし、普通の格好をしていても不潔な感じがするのはいただけない。佐藤浩市は若いころのほうがよかった。オヤジの三國連太郎を意識しすぎるためか、佐藤のよさを殺してしまって、個性を失っているように見える。
 田中邦衛のように、画面に出てきたら圧倒的な存在感を示す役者になってもらいたいと思うのだが。

 第2位。朝日新聞の1月5日付社説で安倍政権の経済政策をこう批判している。

 「金融緩和で物価を押し上げることが果たして好ましいのか。企業がきちんと利益をあげて働く人の賃金が増え、その結果、消費が活発になって物価も上がっていく。求められるのはそんな経済の姿だろう。
 物価が将来どれだけ上がると考えるか、人々の期待(予想)に働きかける政策から、実需を見る政策へ。経済のかじ取りを切り替えるべきではないか」

 日本の現実は「年収200万円以下の働き手が1100万人を超え、住民税が非課税となる低所得世帯の人が2400万人を数える。かつて日本経済を支えた中間層が細り、低所得層が増えた。それが、日本経済のいまの姿である」(同)。格差がますます広がり、わずかな富裕層やアベノミクスで恩恵を受けている一部の大企業だけが「我が世の春」を謳歌しているだけである。
 『現代』は、世界的な投資家ジム・ロジャース氏にこう言わせている。

 「日本はすでに多額の政府債務を抱えており、本来であれば財政支出を減らすべきです。そもそも人口減少が急速に進む国に、新しい道路や橋を作る必要がどこにあるのか。大規模な財政支出を止めれば減税することも可能で、そうすれば国民の生活水準は改善されていく。しかし、安倍総理がやっているのはそれとは真逆。アベノミクスは今年も日本を破壊する方向に進んでいくということです」

 急激な原油安でロシアが喘いでおり、アメリカもシェールガス景気に水を差された格好だ。欧州は経済不振から抜け出せず、中国の成長率の鈍化がはっきりしてきた。世界的にいつ何があってもおかしくない「90年代末と似てきた」(英エコノミスト誌)不安定な時代である。
 株価も不安定ながら2万円の大台に乗るのではないかと見られているようだが、『現代』によれば6月に最大の山が来るというのだ。
 それはアメリカのFRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長が9年ぶりに行なうといわれる「利上げ」だ。これまでアメリカはゼロ金利政策をとり続けてきた。景気を刺激するアクセルをふかしてきたわけだが、それをやめてブレーキを踏めば、スピンしてアメリカ経済が失速する可能性が出てくるというのである。
 そうなれば投資家たちは株などのリスク資産に投資したカネを引き上げるリスクが高まるという。
 また、もし利上げしないという判断をすればアメリカ経済が減速していることを意味するわけだから、アメリカ株の売りにつながる。こうしたアメリカ経済の余波が日本に押し寄せ、株大暴落のシナリオも考えられるというのだ。
 ところでいま世界的なベストセラーにフランスの経済学者トマ・ピケティ氏が書いた『21世紀の資本』(みすず書房)がある。その本が5分でわかるという記事を『現代』がやっている。
 こうした企画はもっとやるべきである。アメリカではこうした重要だが読むには時間がかかる大著には必ず要約本が出て、それが売れるのだ。5分とはいかないが1時間程度で内容のダイジェストをする記事が、日米の本を問わずもっとあっていいと思う。それが読みたくて週刊誌を買う読者も必ずいるはずだ。
 この本の翻訳を手がけた山形浩生(ひろお)氏がこう解説している。

 「本書で主張していることは、実はとても簡単なことです。各国で貧富格差は拡大している。そして、それが今後大きく改善しそうにないということです。
 なぜかというと、財産をもっている人が、経済が成長して所得が上がっていく以上のペースでさらに金持ちになっていくからです。ピケティの功績は、このことをデータで裏付けたことにあります」

 この格差を是正するのには相続税の増税が必要だとしているが、これは日本にも当てはまるはずだ。

 第1位。『ポスト』は、日本の企業間の格差もどんどんアベノミクスで広がっていると、有名500社の企業の平均年収を調べて公表している。
 これによるとフジ・メディア・ホールディングスが2012年度の1479万円から1506万円にアップして第1位。2位もTBSホールディングスで1484万円から1499万円。
 3位が野村ホールディングスで1334万円から1488万円。5位が日本テレビホールディングスで1491万円から少し下がって1454万円。6位が電気機器のキーエンスで1321万円から1440万円。
 7位が日本M&Aセンターで1217万円から1412万円。8位にもメディアでテレビ朝日ホールディングスが1303万円から1395万円。20位にもテレビ東京ホールディングスが入り1210万円から1221万円。
 そのほかにも20位までに損保や商社がズラッと顔を見せている。アベノミクスの「トリクルダウン」効果とは、富めるヤツがさらに儲かれば、そヤツらがどんどんカネを使って貧しい人間にも行きわたるというものだが、そんなものは気配も感じられない。
 『ポスト』は、財務省の法人企業統計を出して、「アベノミクスが始まった2013年度に『資本金10億円以上の大企業』は経常利益を平均約34%も伸ばしたが、『資本金1000万円未満の中小・零細企業』は平均マイナス2%の減益だった」と言っている。
 『ポスト』はさらに「リストをさらに細かく見ていくと、日本の政治が明らかに権力者の取り巻きだけが利益を得る『途上国型』へと大きく退化しつつあることがわかる」としている。
 円安でたっぷり利益を上げたトヨタ自動車の平均年収も43万円増の794万円、日産は67万円増の766万円にはなっているが、トヨタは13年度で1兆8231億円の純利益をあげているのに、社員の給料アップに使った金額は約240億円、純利益の1.3%しか使っていない。
 トリクルダウン効果がないことを象徴的に示すのが、自動車業界を中心に人材派遣を行なっている東証一部上場の企業「アウトソーシング」で、同社の平均年収は5万円しか上がっていなくて289万円だという。
 大企業はまるまる肥え太り内部留保で貯め込み、社員には雀の涙ほどのベースアップを施し、下請けには涙も出さない。
 驚くのはトヨタや新日鐵の大卒事務職や技術職の年収の高さだ。トヨタの大卒は入社7年目の29歳で約650万円、出世の早い人間は40歳課長で約1200万円になるという。
 新日鐵も平均年収569万円だが、これは高給の管理職を排除しているからで、30歳そこそこで管理職に昇格すると年収1000万円台に近づくという。
 大企業と中小とで格差が広がり、社内でも高卒と大卒で格差があり、出世するかしないかで大きく賃金格差が広がっていく。
 大手商社では大きなプロジェクトを成功させれば40代でも3000万円に届くという。年収200万円しかないワーキングプアは、この数字をどう見るのだろうか。
 こうした富める者だけをさらに富ませるアベノミクスは、日本人の大多数の貧しさの上にあることを、安倍首相は気付いてはいまい。
 アベノミクスを盲目的に礼賛する大新聞やテレビは、これからますます安倍首相にすり寄っていくであろう。週刊誌は、常に弱者や貧しい者に寄り添って、政権批判をこれまで以上に強めていかなければならないはずだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 いまや「農業アイドル」という呼び名が、決して揶揄などではなく、しっくりくる。ジャニーズの人気グループ、TOKIOのことだ。結成20周年を迎えた2014年は、TOKIOに関する話題に事欠かなかった。

 レギュラー番組の『ザ!鉄腕!DASH!!』(日本テレビ系)は、1995年スタートという息の長い番組だが、ここに来てなお絶好調で、バラエティの視聴率トップに立っている。『24時間テレビ』では、「リーダー」こと城島茂が、恒例のチャリティマラソンを完走した。「本業」たる音楽活動でも、「SUMMER SONIC」に登場。ライブパフォーマンスの冴えによって、「ロックファンをも納得させるジャニーズ」の評価を確立してしまった。

 そんな彼らのような、いわば「何でも自分たちでやってしまう力」を指すのが「TOKIO力」。おそらく、「テキオー(適応)力」とかけてある言葉だ。TOKIO力は「器用」という言葉だけでは片付けられない。『DASH!!』が始まった当初は、鍬の持ち方にも四苦八苦する、いたって普通の若者たちだった彼ら。いまや、農作業から重機の操縦までなんでもござれというたくましさを身につけている。それはTOKIOのメンバーの根っこに、いまどき珍しくなった「情熱」や「ひたむきさ」があるからであろう。

 TOKIO力というものに、上の世代は古き良き日本人の精神性と、若者の柔軟性の融合を見る。若者たちも、同世代の「草食系」には見られない兄貴的な頼りがいを受け取る。まさに「TOKIO力」という言葉でしか形容できない「強さ」が、そこにはある。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 時として、常識は覆されるものだ。

 これまで、冷凍に向かない食品の代表だった殻つきの生卵。これをあえて冷凍して食べる「冷凍卵」が、昨年の秋頃からブームになっている。

 作り方は簡単で、殻のままの生卵を冷凍庫で一晩冷凍するだけ。冷凍中に殻がひび割れることがあるため、フリーザーバッグに入れたり、キッチンペーパーに包んだりするとよい。

 冷凍庫から出して、1時間ほど置いておくと自然解凍されるが、冷凍する前に比べて白身はサラサラになり、反対に黄身は箸で持ち上げられるほど、モッチリした食感になるという。インターネットのレシピサイトには、この冷凍卵を使った卵かけごはん、黄身の醤油漬け、天ぷらなどが紹介されており、「おいしい」と評判になっている。

 また、凍っている間に殻を剥いて、半分にカットしてフライパンで焼けば、ミニサイズの目玉焼きが2つ作れるのでお弁当のおかずやハンバーグのトッピングなどにも便利。調理の幅を広げてくれる冷凍卵は、今年、大ブレークの兆しを見せている。

 一年でもっとも寒いこの時期、全体的に鶏の産卵数は減っていくが、反対に滋養を蓄えて栄養価は高くなる。そのため、大寒の日(1月20日)に産まれた卵を食べると、健康に暮らせると言われており、開運の象徴として珍重されてきた。

 ちなみに、二十四節気を5日ごとに分ける七十二候では、大寒の末候(まっこう)に「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」という言葉がある。これは、鶏がはじめて卵を産み始めるという意味で、暦をめくると、もうそこまで春がきていることを告げている。

 長年、物価の優等生といわれてきた卵だが、アベノミクスによる円安が外国産飼料の高騰を誘い、2013年秋頃から卸売価格がじわじわと値上がりしている。

 だが、卵は手頃な価格で庶民の食卓を支えてきた貴重なタンパク源だ。今年もまた、たくさんの家族の食卓を卵料理が飾り、健康で暮らせることを祈りたい。

 2015年が、世界中の人にとって幸多き年になりますように。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 育児参加に積極的な「イクメン」。その概念が生まれてからまだ日が浅く、妻子とのうまいつきあい方は、男性諸氏にとってまだまだ模索中というところだ。いくら子ども好きでも、あるべき育児の難しさに直面することになるだろう。これが女性ならば、ご近所との関係性が希薄な現代であっても、ママ友どうし情報交換する場が存在しうる。父親はどうか。パパ友が「こんなときどうすればいい?」と相談し合う環境は、なかなか見つけにくい。

 ならば、「場」を自ら作り出せばよいという考え方がある。たとえば、子育てに奮戦中のパパ友たちが集まるグループをつくる。イベントなどを通して地元の子たちとふれ合うことは、我が子だけでなく子どもという存在自体の理解にもつながる。パパ友の「戦友」ができることは、精神衛生上もよい。こんな「地“域”で活動するイクメン」を、最近は「イキメン」と称することが多くなった。

 「イキメン」という語は、「育児」を離れて、地元のお祭りやボランティアへの参加など「地域参加大好き」な父親に対して使われることも多い。昭和の時代は、にぎやかな場所では必ず見かける「近所のおじさん」という存在がいたものだ。震災後の日本は、てんでバラバラに生きるのではなく、少しずつ地域のコミュニティを大事にする方向へ回帰しつつあるのだ、と思いたい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 不正競争防止法は、企業の「営業秘密」を不正な形で、外部に持ち出したり、外部の者が取得したりすることを禁じる法律。この場合、営業秘密とは、独自技術や設計図、製造法、顧客情報、仕入れ先リストなどのことで、企業にとっては文字通り、門外不出のものだ。

 経済産業省は2014年11月末、罰則強化などを盛り込んだ不正競争防止法改正案を2015年の通常国会に提出することを明らかにした。日本企業の営業秘密が韓国や中国など外国企業に流出するケースが相次いでいるからだ。

 たとえば2012年に新日鉄住金が、韓国の鉄鋼会社、ポスコに対し高機能鋼板の製造技術を不正に取得したとして東京地裁に提訴。2014年には東芝が最先端の半導体技術を不正に韓国メーカーに流出されたとして同じく東京地裁に提訴している(2014年12月19日、東芝が和解成立と発表)。

 改正案の罰則強化の内容は(1)罰金上限(現行は個人1000万円以下、法人3億円以下)の引き上げ、(2)未遂罪の新設、(3)被害の申告を必要としない「非親告罪」とし、捜査機関の独自捜査を可能とする、(4)不正入手した情報によって企業が得た利益の没収――などが検討されている。

 日本の「ものづくり力」の源泉が、産業スパイによって韓国や中国にやすやすと流出している実態は、何としても食い止めなければならない。国内企業も情報管理を徹底するなど自衛措置を行なう必要がある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



1:「昼にシャンプー(洗髪)をすること」の略語。二昔ほど前、起きがけに洗髪して爽やかな気分で一日を過ごす「朝シャン」が流行したが、水商売に就く女性の場合は労働時間が夜であるため、「昼シャン」「夕シャン」が「朝シャン」に該当する。

 夜遊びに忙しいOLが、昼休みに会社近辺の美容室で洗髪するケースもあるらしい。

2:まっ昼間からシャンパンを飲んじゃうこと。あるいは、「昼間にシャンパンが飲めるような優雅な生活ってイイなあ願望」のことを指す。

 日本だと「なんとなく日の出営業のホストみたい」という理由で、昼シャンに食指を動かす男性は案外少ない。しかし、女性のあいだでは「ちょっとした玉の輿にさえ乗ることができれば、ランチ・シャンパンくらいたしなむ、ドラマ『昼顔』的な生活を得ることは、けっこう容易い」という意味で、比較的リアリティーのある“憧れキーワード”となりつつある。ビールやチューハイやハイボールだと、キッチンドランカーやアルコール依存症のイメージが強くなるのでダメみたいだ。

 昼シャンな日常を当たり前のように過ごす上流階級層の主婦などは、下民との差別化を図るため「昼アワ(泡)」と呼ぶこともある、という噂も聞く。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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