煮抜きとは、煮抜き玉子を略したことば。鶏卵を殻のままゆでた、ゆで玉子のことで、玉子をまっ二つに切って弁当に入れた丸い黄身と白身の様子が目に浮かぶ。京都や大阪を中心にした関西で定着している方言であり、語源は定かでないが、玉子を湯でぐらぐらと、しっかり「煮抜く」という意味から発したというのが定説だ。それゆえに、固ゆで玉子に限定されるという解釈もある。筆者が初めて「煮抜き」と聞いたとき、意味を問い返すと、知人はなんと「煮て命を抜くからやろ」という説明をした。京都は生々しい歴史に由来した名称がたいへん多い町なので、当然のように思えてすっかり信じていた。

 調べてみると、玉子だけに使われるわけではなく、江戸時代の料理書『豆腐百珍』には、「煮抜き豆腐」という料理があった。これはだし汁で一日中煮るという、単純でおいしそうな豆腐料理である。さらに、料理用語として使われる「煮抜き」には、「沸騰したお湯で素材を煮る」という意味で用いられることがあるとわかった。

 煮抜きが固ゆでを意味するかという点は、ちょっとした問題である。なぜならば、京都でもっとも有名な煮抜き玉子は半熟玉子であるからだ。江戸時代の地誌『花洛名勝図会』では、「瓢亭の煮抜玉子は近世の奇製なりとて、酒客あまねくこれを食悦す」と絶賛されている。当時は腰掛茶屋で、現在も同じ場所で営業をしている瓢亭(左京区、懐石)の瓢亭玉子である。瓢亭玉子に惚れ込んだ人はたくさんいたようで、明治維新で山縣有朋(やまがた・ありとも)とともに活躍し、後に内務大臣となった品川弥二郎は、酔って筆をくわえて描いたという瓢箪の中に、「一子相伝半熟鶏卵 可愛い殿御に食わせたい」と記したとか。瓢亭玉子は、庭先で飼っていた鶏の玉子をゆがき、客にふるまって評判を呼んだのがはじまりという。

 素材が一番おいしく食べられる調理法が京料理の基本。煮抜きが古くから名脇役として食べ続けられている理由はその辺りにありそうだ。


写真は京料理のゆで玉子を使ったもの。庶民の食卓なら、「煮抜きするかー、それとも、ほろほろするかー」という感じ。「ほろほろ」とは、各家それぞれの味わいのある炒り卵のようなおかず。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 1月7日、目出し帽と弾薬ポーチを身に着け、カラシニコフ銃を持った二人がフランス・パリにある風刺専門週刊紙『シャルリ・エブド』(以下『シャルリ』)の会議室に押し入り、ステファン・シャルボニエ編集長(47)を含む12人を銃殺した事件は、世界中に大きな衝撃を与えた。

 犯人はアルジェリア系フランス人兄弟、サイド・クアシ容疑者(34)とシェリフ・クアシ容疑者(32)。二人は襲撃後、シャルル・ドゴール空港から8キロのところにある印刷所に立てこもっていたが、フランス軍治安部隊が突入して射殺された。

 この兄弟と呼応して女性警察官を殺してスーパーを占拠したマリ系フランス人、アメディ・クリバリ容疑者(32)も治安部隊に射殺された。

 『週刊文春』(1/22号、以下『文春』)によれば、クアシ兄弟はモスクで知り合った男を師と仰ぐようになり、後にイエメンに渡ってアルカイダの戦闘訓練を受けたという。クリバリとシェリフは収監されていた刑務所で知り合った。

 事件後、推定370万人もの人々が事件への抗議のために街頭へ出て、「私はシャルリ」と書かれた連帯のメッセージを掲げた。共感の波は世界中に広がっている。

 『シャルリ』の発行部数は3~4万部程度だが、知名度は高い。それは風刺画がメインでイスラム教だけではなく、キリスト教、ユダヤ教などあらゆるものを批判して、しばしば物議を醸しているからだ。特にイスラム予言者のムハンマドの風刺画が偶像崇拝を禁じているイスラム教徒から強い怒りを買っていた。

 だが、シャルボニエ編集長はモロッコ誌のインタビューで「テロの標的になっているが怖くないか」と聞かれ、こう答えたと『文春』が報じている。

 「報復は怖くない。私には妻も子も車もローンもないからね。ひざまずいて生きるより立って死にたい」

 その言やよしだが、同紙の挑発的でときにはわいせつな風刺画に対しては批判も多く、事件は「言論の自由はどこまで守られるべきか」という問題も提起した。

 『週刊新潮』(1/22号)でS・P・I特派員のヤン・デンマン氏がこの問題を取り上げ、日本人記者とフランス人記者とのやり取りを載せているが興味深い。

 日本人記者が「僕も、暴力は絶対反対ですよ。でも、“表現の自由”は“何でもアリ”というものでもないはずだ」と言い、日本の新聞協会が作った倫理綱領には「人に関する批評は、その人の面前において直接語りうる限度にとどむべきである」と書いてあるとフランス人記者に言うのだが、これはあまりにもきれい事過ぎると思う。もしかすると朝日新聞の記者かな?

 それに対してフランス人記者は、フランス人は野放図に自由を謳歌しているのではないと反論する。フランスの現憲法には表現の自由に関する規定はないが、フランス人権宣言11条に「すべての市民は、法律によって定められた場合にその自由の濫用について責任を負うほかは、自由に、話し、書き、印刷することができる」とある。自由は法律によって制限され、ナチスを肯定したりホロコーストを否定するような表現は法律で禁止されているというのだ。

 だが『シャルリ』のようなイスラム教徒への挑発風刺画は、法を犯しているわけではないから「それを止める手立てはない」と話している。だが『ニューズウィーク日本版』(1/27号、以下『ニューズウィーク』)によれば、これまで『シャルリ』は名誉毀損裁判を数多く起こされているが、そのほとんどに敗訴していたそうだ。そのため経営的には苦しく、このままいけば倒産していたのではないかと報じているメディアもあった。

 言論の自由は国によっても大きく違う。『ニューズウィーク』によれば、アメリカでは合衆国憲法修正第1条で言論の自由を法律で制限することを禁じてはいるが、国家機密の漏洩(ろうえい)や名誉毀損については保護されない。

 イギリスとフランスでは、憲法上の規定はないものの、人種や宗教や性的指向を侮辱すれば刑法上の罪に問われ罰金や懲役刑の対象になる。翻って日本ではどうか。首相の女性問題が発覚したとして、表紙にスーツ姿の首相がペニスだけをポロリと出したマンガを掲載したら、どんな反響が出るだろうか(オランド仏大統領は『シャルリ』にそうした漫画を載せられたが、今回の事件後、パリでのデモの先頭に立った)。

 こんな極端なケースを出さずとも、名誉毀損はもちろんのこと、個人情報保護法や特定秘密保護法で言論の自由はがんじがらめになり、窒息寸前だ。だが、国民もメディアも、自らが血を流して権力から奪い取った権利ではないから、他人事のように「無関心」である。

 イスラム過激派のテロの恐怖は遠い国の話だと思っていた日本人に、1月20日、衝撃的な映像が飛び込んできた。

 「イスラム国」の人間がジャーナリストの後藤健二さん(47)と湯川遥菜(はるな)さん(42)を殺すと予告し、二人を救いたければ72時間以内に2億ドル払えというのだ。中東を歴訪している安倍首相が「イスラム国」対策として2億ドルを拠出し、「テロとの戦い」を表明したことがきっかけだという。

 使い古された言い方で申し訳ないが、集団的自衛権を容認してアメリカと一緒に戦争のできる国にしようと考えている安倍首相の言動が、こうした事態を招いた一因であることは間違いない。アメリカと同一視され憎悪の対象となれば、中東にいる日本人の安全は風前の灯火になる。

 アルカイダやボコ・ハラム、イスラム国の暴威は絶対許すことはできない。テロと戦うことは当然である。だが、口で勇ましいことを言ったり、したり顔でテロに屈してはいけないと書くだけでは、いまの深刻な文明の衝突から逃れることはできない。

 世界中にいる邦人たちの安全を守るためには、アメリカの“植民地”支配から脱し、平和主義を掲げてアジアや中東諸国と友好関係をつくっていくしか道はないと思う。そのためには真の言論の自由を自分たちのもとに取り戻す、という覚悟が必要なことはいうまでもない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍首相にとって厳しい年明けになったが、対応を一歩間違えると、日本国内でもテロが起こる可能性が出てくるはずだ。安倍首相が舵取りを間違えないか、注視するために役に立つ記事を3本選んでみた。

第1位 「安倍首相『がん専門医を主治医に登用』緊迫の舞台裏スッパ抜く」(『週刊ポスト』(1/30号)
第2位 「新大河『花燃ゆ』と安倍首相&創価学会『ただならぬ関係』」(『週刊ポスト』(1/30号)
第3位 「桑田佳祐と安倍晋三 どっちが歴史に名を残すか」(『週刊現代』1/31号)

 第3位。『現代』はサザンオールスターズの桑田佳祐が紅白で歌った歌が、安倍政権批判ではないかと騒ぎになっていることをとりあげ、「どっちが歴史に名を残すか」という特集を組んでいる。
 サザンオールスターズが1曲目に演奏した「ピースとハイライト」は、紛争の愚かしさや平和的な解決を訴える楽曲で、とくに〈都合のいい大義名分(かいしゃく)で/争いを仕掛けて/裸の王様が牛耳る世は……狂気(Insane)〉という歌詞は、憲法九条の解釈改憲を皮肉っているともとれる。
 また、桑田のちょび髭姿や「ピースとハイライト」という選曲は、「安倍晋三総理を独裁者になぞらえた、政権批判ではないか」と、紅白直後からインターネット上で話題になっていた。
 その3日前の昨年12月28日にも、サザンの年末ライブを安倍総理と夫人が聞きに行ったが、そこでも曲目が「爆笑アイランド」になったとき、桑田が突然替え歌で「衆院解散なんて無茶をいう」と、昨年末に突然の解散総選挙を行なった安倍総理を皮肉るようなアドリブを放ち、安倍総理はすっかり不機嫌になり、早めに会場を出てしまったそうだ。

 「桑田は、国民のお祭り行事である紅白という舞台で、自らの武器である歌を使い、総理やNHKという権威に、異議を申し立てたことになる」(『現代』)

 2曲目に歌った「東京VICTORY」の歌詞にもこういう含みがあると、滋賀県立大学の細馬宏通(ほそま・ひろみち)教授は言う。

 「この前まで大震災からの復興を考えていたはずなのに、もう忘れてオリンピックですか? そういう問いも感じさせる、陰影のある歌詞なんです」

 だが、桑田はこの騒動に対して、ラジオなどで、そんな意図はなかったと釈明している。少なくとも安倍首相に対する批判のメッセージだったとでも言ってほしかった。桑田はジョン・レノンにはなれなかったようだ。
 『現代』は、2人のうちのどちらが歴史に名をより深く刻むのか、歌手である桑田より、総理を2度も務めた安倍氏のほうが有力だというが、そうではあるまい。60年安保のときのことを思い出すとき、岸信介首相よりも西田佐知子の『アカシアの雨がやむとき』を思い出す人間のほうが圧倒的に多いと思うのだが。

 第2位。安倍首相の腰巾着の一人NHKの籾井(もみい)会長が、今年から始まった大河ドラマ『花燃ゆ』を安倍首相の出身地の山口県にしたのではないかと、『ポスト』が疑問を呈している。
 幕末の長州藩士で維新志士の理論的指導者であった吉田松陰の妹・杉文(すぎ・ふみ)の生涯を描く新大河ドラマ『花燃ゆ』だが、1月4日の第1回の視聴率が関東地区で16.7%、第2回も13.4%と全く振るわない。
 関係者の間では、そんな大河ドラマをNHKが製作したのは、NHK側に安倍政権への阿(おもね)りがあると、当初から言われていたそうだ。根拠のひとつが制作発表の遅れだという。
 山口県・萩市の商工観光部観光課課長はこう証言している。

 「NHKのチーフ・プロデューサーがこちらに来たのは(2013年=筆者注)9月のことです。脚本家2人を連れて『山口県に何か大河ドラマの題材がありませんか』などと聞かれ、市内の案内も頼まれました」

 例年なら制作発表が終わっている時期にもかかわらず題材も主人公も未定で、しかし舞台となる場所だけは決まっていたようなのだ。

 安倍首相はかねてから吉田松陰を尊敬していると公言してきた。そして制作発表がなされた後の昨年7月に、地元で開かれた講演会で『来年は長州を舞台にした大河ドラマが放送されると聞いています。松陰先生の妹さんが主人公です』と莫大な経済効果をもたらす大河ドラマ放送を嬉しそうに語っていたそうである。山口県がメインの舞台となるのは77年の『花神』以来38年ぶりのことだそうだ。
 会津藩を描いた『八重の桜』をやったことに腹を立てた安倍首相が、それなら長州ものをやれとNHKにねじ込んだのだろうか。

 第1位。『ポスト』が安倍首相の気になる情報を載せている。首相の体調管理は主治医で慶応大学医学部教授(同病院消化器内科)だった日比紀文(としふみ)氏(現在は北里大学大学院特任教授)を中心とした医療チームが細心の注意を払ってきたが、昨年末から年始にかけて、その医療体制に大きな変化があったというのである。
 日比氏に代わって主治医に就任したのは腫瘍の専門医、慶応大学病院腫瘍センター(がん専門初診外来)の高石官均(ひろまさ)准教授。
 注目されているのは両氏の専門の違いだ。高石氏はがん治療認定医、がん薬物療法指導医などの資格を持ち、大腸炎そのものではなく、症状が悪化して腫瘍ができた場合の治療が専門だそうだ。
 安倍首相の持病である潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に潰瘍ができやすい原因不明の難病だが、専門医の間では、長期間患っている患者は大腸がんになりやすいことが知られている。
 安倍首相が最初に潰瘍性大腸炎の診断を受けたのは神戸製鋼のサラリーマン時代。すでに30年が経つそうだ。
 安倍首相は新聞の首相動静欄を見ると、秘書官や記者、ブレーンの学者、財界人らと焼き肉、中華、フレンチなどの酒食を共にして健啖家(けんたんか)ぶりを発揮しているように見える
 しかし、これは健康をアピールするパフォーマンスのようだと『ポスト』は指摘している。プライベートでは違うようだ。
 安倍首相がよく通う店の関係者がこう証言する。

 「安倍さんは記者の方といらっしゃるときはお酒を飲まれますが、プライベートの時は一切口にされません。ウーロン茶ばかりです」

 記者の前ではよくカクテルの「レッド・アイ」を飲むというが、これはビールにトマトジュースを加えたものなので、実際にはどれだけビールが入っているかわからないそうだ。
 潰瘍性大腸炎の治療でアサコールとステロイドを併用することは珍しくない。副作用が出た際は、通常は量を調節する。安倍首相は表向き「健康」と言いながら、実は炎症が悪化してステロイドで抑えており、副作用が強くなっているのに炎症がひどくてステロイドの量を減らすことができず、副作用の対症薬が新たに必要になっている可能性があると『ポスト』は指摘する。
 安倍首相は党則を変えて東京五輪まで首相を続けたい意向のようだが、もしこの報道が事実なら、体力がもたない可能性が大であろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「双子コーデ」は双子がするファッション、ではない。友だちどうしで、まるで双子のように同じコーディネートをすること。女子高生など若い世代のあいだで人気とされる。「カワイイけれど、一人で着て歩くには抵抗がある」服を「共犯関係」で着るところも楽しいという。ファッション好きは「目立ちたい」気持ちがある一方で、アンビバレンツな恥ずかしさの気持ちもある。ふたりならば、一歩踏み出すことができるというわけだ。

 また、「仲良しアピール」という側面もある。おそらく、すてきな異性と歩く誇らしさに近いのかもしれない。仲の良い友だちとお揃いのコーデで出歩くことは、自分たちは(街をゆく皆よりも?)すてきな友人関係を築いているという一種の表現、パフォーマンスなのだ。

 「テンションがアガる」双子コーデは、イベントごとと相性がよい。たとえば、大都市圏のハロウィン。2014年は「双子の」ゴーストや魔女がひときわ目立った。また「サンリオピューロランド」では、10~12月期に「双子コーデ割引き」なるキャンペーンも行なわれた。これはハローキティと妹のミミィが双子であることを活かした、目のつけどころがよい企画だったといえよう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2015年1月、相続税が大幅に改正された。

 今回の見直しは、富の再分配機能の強化、格差固定の防止の観点から、基礎控除額が引き下げられた一方、最高税率は引き上げられた。そのため、今年から課税対象になる人の増加が見込まれているのだ。

 国税庁の「平成25年分の相続税の申告の状況について」によると、2013年に相続税の課税対象被相続人数は5万4421人。その年の死亡者数が126万8436人なので、課税対象となったのは全体の4.3%だ。しかし、2015年以降は、課税対象者が6%程度に上昇すると言われている。

 1月からの相続税のおもな改正点は次の2つ。

(1)基礎控除額の大幅な引き下げ
  これまで〈5000万円+1000万円×法定相続人の数〉だった基礎控除額が、今後は〈3000万円+600万円×法定相続人の数〉に縮小。
  たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、これまでは8000万円までは相続税がかからなかったものが、改正後は4800万円を超えると課税されることになる。
(2)最高税率の引き上げ
  これまで50%だった最高税率が、2015年から55%に引き上げられる。また、税率構造も8段階になる。

 基礎控除額が引き下げられることで課税対象となる遺産総額が増え、適用税率がこれまでよりも高くなる人も出てくる。つまり、課税対象者が増加するだけではなく、納税額も大幅に増える可能性もあるのだ。
 原則的に、相続税は相続の発生から10か月以内に納税することが義務付けられている。しかし、不動産はすぐに売却できないこともあり、何も対策をとっておかないと、思わぬ延滞税に苦しむことになる。

 とくに首都圏など不動産価格の高い地域に土地・建物を所有している場合は、そのほかにめぼしい資産がなくても、課税対象になる可能性が高い。これまで、一部の富裕層のものだった相続税は、今後、庶民にも身近な存在に変わりつつある。

 この機会に、預貯金や土地・建物などがどのくらいあるのか、我が家の資産の棚卸しをしてみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 2014年11月19日、インターネットを仕事中に自由に見られる職場のあちこちで、女性たちが静かにショックを受けていた。あるニュースが飛び込んで来たからだ。「西島秀俊、結婚」。これによって、しばらく何も手につかなくなる女性が続出したという。「西島ロス」である。サイバーエージェントによる女性向けアプリ『GIRL’S TALK』が、12月に公開した「女性が選ぶ2014年女の流行語」。「西島ロス」は、「昼顔妻」「ありのままの」に次いで3位に食い込んだ。昭和のような国民的スター不在のいまの時代、芸能人の結婚がここまでインパクトを持って迎えられるのも珍しい。

 西島秀俊といえば、かつてフジテレビ系の月9ドラマ『あすなろ白書』などで注目を浴びるも、当時のアイドル的な売り方に難色を示したとされている。それまでの事務所を辞めテレビ出演の少ない時代も地道に映画のキャリアを重ねていたが、ドラマ『ストロベリーナイト』などでついにブレイク。端正な顔と、大河ドラマ『八重の桜』で見せた鍛え上げた美しい肉体で女性たちを虜にしていたが、なにせその中身は、一人で映画館に通い詰め、演技を勉強するというような極端な仕事好き。非社交的なわけでないにせよ、自分の時間を大事にする「結婚できないタイプ」と考えられていた。だから、ファンの女性たちもすっかり「安心」していたわけで、反動が大きいのだ。

 ちなみに、西島秀俊や向井理(むかい・おさむ)、イケメンたちが次々と結婚する状況で、「最後の砦」といわれているのが佐々木蔵之介だそうだ。やがて「佐々木ロス」は来るであろう。後釜になれるいい俳優は、若手から育っているだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 築地市場(東京都中央区)の移転先となる豊洲新市場(同江東区)が2016年11月上旬に開場することが決まった。東京都の舛添(ますぞえ)要一知事が明らかにした。

 新市場の敷地面積は約40.7ヘクタール。いまの築地市場の1.8倍に相当し、水産仲卸売場棟、水産卸売場棟、青果棟、管理施設棟などが入る。市場はすべて屋内におかれ温度管理など衛生面の管理を徹底するという。取扱量は水産物が1日2300トン、青果物が同1300トンを見込む。

 現在の築地は東京観光の名所になっているが、豊洲では入浴施設や宿泊施設、飲食店などを備えた複合施設も整備し、国内外から年間約420万人の観光客を呼び込む算段だ。複合施設名の仮称は文字通り「千客万来施設」。新鮮な市場の食材を使った料理を楽しめる飲食ゾーンのほか、東京湾を眺望できる大露天風呂が売りという。

 新市場は当初、2012年度中の開場を目指していた。ところが現場(旧東京ガスの工場跡地)の土壌から有害化学物質が検出され、東京都が約760億円を投じて土壌改良工事を行なったため、開場が遅れた。

 市場移転後の築地は中央区が再開発・整備する。場外市場で営業する一部小売店、専門店、飲食店などが残る。都心に近い利便性を生かし、小口の買い出し人向けだという。

 2020年東京五輪に向け東京の再開発が進むが、豊洲新市場はその象徴の一つだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「自衛結婚」もしくは「自衛婚活」の略。「とりあえず既婚者という肩書きを得るための自衛的かつ政略的な結婚(婚活)」といった難しい意味ではなく、「自衛隊の夫を持つ(探す)」ことを一般的には指す。ただし、「JK(=女子高生)」なる略語が爆発的に流行中であるせいか、一部では「女子高生との結婚(婚活)」をこう呼ぶこともあるらしい。が、一歩間違えれば淫行にも発展しかねないスレスレの行為なので、“夢”として語られはしても、実際の行動に到る豪の者は高橋ジョージ(現在離婚協議中だが……)以降、少なくとも有名人のあいだでは見当たらない。

 さて、震災を境に、自衛隊をテレビで観てカッコイイと憧れる女性が激増したと言われるが、実際のところは「どうやったら自衛隊男子と知り合えるのか?」がよくわからないがゆえ、早々とJ婚をあきらめてしまう女子も多いと聞く。結婚相談所や自衛隊限定の婚活パーティなどを利用するのも一つの手だが、「そういう不自然な出会いはイヤ!」という完璧主義チックな貴女は、やはり駐屯所や基地まわりにある飲み屋などでアルバイトするのがいちばんの早道なのではなかろうか? 「AV女優とどうしてもお知り合いになりたい」と願う男子は、ホストクラブで働くのが一番の早道であるのと同じ理屈である。

[類似語] T婚(=ドラマ『S─最後の警官─』あたりを観て「特殊部隊の夫を持ちたい!」と憧れる女性のこと)
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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