「お尻」のことを京都弁で「おいど」という。「おいどかけ」のような使い方もあり、これは着物の裾を短くして歩きやすくした「裾からげ」のことである。たくし上げた裾を抱え帯で締め、裾の長さを調整することを表している。

 「おいど」は御所ことばの一種で、漢字では「御居処」と書く。昔は「居るところ」や「座るところ」という意味で使われていた。それがいつしか「お尻」という意味に変化し、さらに「おいどが重い」といったら、動作ののろい人を表すようになり、また、なにかの競争をしている場面であれば、「どんけつ」を意味することばになった。

 御所ことばは暮らしの中にもたくさん残っていて、例えば、醤油のことを「おしたじ」や「おしょい」と言ったり、お湯やお茶を「おぶ」と呼んだりする。また、来客を出迎えるときは「おこしやす」、帰るときには「おやかまっさんどした」という。これは「お邪魔しました」と同じようなことばだ。本来は複雑な上下関係や微妙な感情によって使い分けるものであるのだが、現代では、どこか愛らしい音に惹かれて使われているような点も否めない。

 京都のことばには、御所ことばに由来する接頭敬辞の「お(御)」、接尾敬辞の「さん」を付けることばが非常に多い。そのうえ、似たような庶民流儀の使い方もある。食品の呼称はその典型で、「おまめさん(だいず)」とか、「おだい(大根)」、「おたまさん(玉子)」など、本当にいろいろな呼称が使い続けられている。また、太陽を「にちりんさん」、月を「まんまんさん(仏様の意味で使われていることが多い)」といったり、比叡山から吹き下ろす風を「ひえーさん」といったりもする。自然崇拝というと大げさであるけれど、このような日常的なことばには、自然や食べ物を尊ぶ心が身近に感じられて心地よいものである。


下鴨神社・糺ノ森で、平安期に神事が行なわれていた奈良殿神庭の周辺。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 これはNPO法人ほっとプラス代表理事、1982年生まれの藤田孝典氏がつくった言葉である。下流老人の定義は「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」。彼が出した『下流老人~一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)は10万部を超えるベストセラーになっている。

 この本を読んで驚くのは、現在非正規労働者の若者はもちろんだが、40代で年収500万円以上あるサラリーマンでも下流老人になる確率が高いということである。

 総務省の調べでは高齢者夫婦の1か月の最低生活費は社会保険料込みで約27万円かかるそうだ。だが、それを全部年金で賄うことはできないから毎月貯金した分から補填していくと、高齢者世帯の平均貯蓄額(約1268万円といわれる)あったとしても安心できる額ではないという。それに病気、熟年離婚でもすればあっという間に下流老人の仲間入りするのは間違いない。

 高齢世帯の相対的貧困率(国民所得の中央値の半分に満たない人の割合)は22%。これが「お一人様」になると年金が減るから、男性が38.3%、女性は52.3%と急上昇するのだ。

 下流老人たちが最後の拠り所にするセーフティネットは「生活保護」だが、申請しなければもらえないということや、世間体が悪いなどと申請せず餓死してしまうケースも後を絶たない。

 さらに自民党は前回の総選挙で生活保護基準を10%引き下げると公約し、実施され始めているから、ますます憲法で保障されている「健康で文化的」な最低限の暮らしをすることなど夢のまた夢である。

 藤田氏はこのままいけば「一億総下流時代」が必ず到来すると言っている。そのトリガーとなるのが再予定されている消費税10%だと『週刊ポスト』(9/4号、以下『ポスト』)が警鐘を鳴らしている。

 厚労省は5年に1度、年金財政を検証し公表している。昨年6月に出されたものをもとに『ポスト』がシミュレーションしたところ、平均月給45万円の50歳のサラリーマン(60歳定年まで働き、妻は専業主婦)の場合、65歳の年金支給額が月20万4000円。70歳で19万円、75歳で17万4000円、80歳で15万8000円と減らされるのである。長生きはするなといわんばかりではないか。

 『ポスト』によれば、消費税が10%に引き上げられると、年収300万円未満の世帯でも年9万5882円の負担増になるとみずほ総研が試算しているという。下流老人層には死活問題である。

 それでなくてもアベノミクスの円安のせいで、食品などの輸入原材料も軒並み値上がりしている。さらにそこに消費税アップ時の便乗値上げがあれば、下流老人予備軍が真性・下流老人になって貧困層を拡大することは間違いない。

 下流老人半歩手前の私も、この問題に無関心ではいられない。埼玉県さいたま市にある「ほっとプラス」を訪ね藤田氏に話を聞きに行ってきた。

 小柄だが明るくはっきりした話し方をする素敵な若者である。彼は、貧困は自己責任ではなく、いまの社会構造が必然的に生み出しているものだから、生活保護をもらうのを躊躇することはない、「社会保障を受けることは権利です」と言い切る。

 申請主義を止めることはもちろんのこと、生活保護を「救貧対策」ではなく「防貧対策」に使うべきだと主張する。

 いまの制度では完全におカネが底をつき、にっちもさっちもいかなくならなければ支給されない。だがそうなった人は、すでにうつ病などの症状が出ているか重篤な病気にかかっているケースが多く、働くことができないのはもちろんのこと即入院・治療となってしまう。

 病気予防のように、そうならない前に下流老人たちを捕捉して救わなければいけないはずなのに、そうなっていないのはおかしい。まことにもっともな意見である。

 ちなみに貧困者の捕捉率(生活保護有資格者のうち現利用者の割合)は、日本は15~18%程度だが、ドイツは64.6%、フランス91.6%もあるそうだ(2010年)。それは社会保障政策がきめ細かく行なわれていることの証左である。

 日本は家賃にかかる割合が欧米などと比べても大きく、年金の半分が家賃に消えてしまうという高齢者が多い。ヨーロッパ各国では少子化や人口減少対策として民間借家への家賃補助制度や公立住宅の建設を増やすことなど、住宅政策を転換したことで効果を上げているという。日本も早急にそうするべきである。

 このままいけば日本の年金制度は5年、10年後には必ず破綻する。したがって若者に無理矢理年金を払わせるのではなく、貧困対策基本法を作り国民の防貧や救貧対策を国家戦略として強化するべきだ。フランスの経済学者ピケティの言うように、一部の富裕層から徴収して再配分するなど、社会保障を手厚くしていくことこそが喫緊の課題だと藤田氏は続けた。

 消費税を8%に上げるときは、そのほとんどを福祉の充実に使うと公約したはずではないか。それがゼネコンや株式市場に湯水の如くカネを垂れ流し、福祉はやせ細っていく一方である。そんな政治家どもを信用できるはずがない。

 私は藤田氏に、ここまできたら「困民党」という政党をつくって、あなたが平成の大塩平八郎になりなさいと言ったが、これは冗談ではない。

 国民の命を守ると言いながら戦争のできる国にしようとしている安倍政権の考え方は根本的に間違っている。国民の命は充実した社会保障制度で守られるべきで、それを蔑ろにする人間に、われわれの命を託すわけにはいかない。いまこそ老人と若者が手を結び、貧者の、貧者による、貧者のための政党ができたら第1党間違いなしだと思うのだが。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 五輪エンブレム「盗作問題」はようやく大会組織委員会が使用を中止して決着した。佐野研二郎氏には気の毒だが、彼のデザインには独創性がないことが明らかになったのだから仕方あるまい。今週の週刊誌はおもしろい記事が揃った。議員の買春疑惑から安倍首相夫人の「メロメロ現場」まで、じっくりお読みいただきたい。

第1位 「1回2万円“未成年買春”相手が告白『武藤貴也議員は議員宿舎で僕19歳を奴隷にした』」(『週刊文春』9/3号)
第2位 「昭恵さん布袋寅泰と深夜2時 酔って、唇、しなだれて」(『女性セブン』9/10号)
第3位 「愛之助と藤原紀香 信じられない濃厚ラブ写真」(『フライデー』9/11号)

 第3位。今週はしばらくぶりに『フライデー』。藤原紀香(44)と歌舞伎役者・片岡愛之助(43)のラブラブ、ベタベタ写真である。
 8月下旬、夕方5時過ぎに赤坂のエステサロン「ミス・パリ」に入った紀香だが、なかなか出てこない。
 3時間半後、出てきた紀香をピックアップした愛之助は、

 「そのまま四ツ谷駅近くの住宅街まで車を走らせた。コインパーキングに停車すると、二人はそろって車から降り、歩き始める。なんと手をガッチリつなぎながら!
 紀香はよほど気分がいいのか、大声でハシャぎ、高い笑い声が住宅街に響く。(中略)
 『二人はいまやほぼ同棲状態ですよ』
と話すのは、舞台関係者だ。
 『紀香との“浮気”報道を受け、愛之助は必死に『彼女とは友達だ』と言いわけしていましたが、二人がつき合っていることはバレバレでしたね。というのも、愛之助は仕事が終わると、常宿のホテルにはほとんど帰らず、紀香のマンション方面へ戻っていくので(笑)。現在は紀香の家で一緒に暮らしているそうです』(舞台関係者)」

 たしかに見事に二人のラブラブな様子がよく撮れている。だが、とジーッと見ながら考えた。写真誌は芸能人のツーショット写真で存在感を増し、部数を増やしてきた。『フライデー』は中でも芸能物が強かった。
 だが、中川郁子(ゆうこ)の「路チュー」写真、小泉進次郎、額賀福志郎の恋人との一泊現場写真を見てきた目には、紀香と愛之助のツーショット写真はインパクトが著しく低いのだ。
 二人との合意の上だとは言わないが、予定調和という感じがしてならない。
 写真誌に「ごたく」はいらない。権力者たちを震え上がらせる決定的現場写真を撮るにはどうしたらいいのか。どうしたらそうした情報が入る態勢がつくれるのかを、『新潮』や『文春』の写真を見て考えてほしいと思う。

 第2位。このところのスキャンダル続発に、さぞかし安倍首相は怒り心頭だろうと多少同情していたところに、今度は『女性セブン』が奥方・昭恵さんの「ご乱行」を報じたのだから、安倍さんの持病は悪くなるばかりであろう。
 舞台は南青山にある会員制バー。8月下旬のある夜、安倍昭恵(あきえ)さん(53)が仕事関係の人たちと教育関係の話をしていたという。
 だが、そこにいた常連客が見た彼女の飲みっぷりがスゴイ。

 「赤ワインにシャンパンと、ハイペースで飲んでいました。1時間もすると目がトロンとしちゃって、もうベロンベロン。そのうち同席していた人と話もせずに、携帯をいじり始めたんです」

 日付が変わっていたそうだ。携帯で話を終えた昭恵さんが「呼んじゃった!」と店内に響く声で嬉しそうに告げたという。そして10分後。黒のジャケットにジーンズ姿の男性が颯爽と現れたそうだ。
 布袋寅泰(ほてい・ともやす、53)だった。ヌノブクロじゃない布袋は、昭恵さんが大のファンでライブには必ず足を運んでいるという。
 すぐさま昭恵さんは布袋の隣へ移ると、しばらくぶりに恋人と再会したかの如く話し始めたという。

 「布袋さんにしなだれかかるように寄りかかっていたところまでは、正直まだよかった。そのうち彼の首に腕を絡ませて、肩に頭を乗せたり、彼の首筋にキスをしたりと、すごい状況になってしまって……」(別の常連客)

 彼女の唇が布袋の顔に徐々に近づいて……というシーンまであったそうな。深夜2時、SPに抱きかかえられるように昭恵さんは退店し、その直後に布袋も店を後にしたそうである。
 自業自得ではあるが、安保法制が参議院で山場を迎え、議員の不祥事が次々明るみに出る中、トイレへ行く回数も増えていると言われる安倍首相は、この記事をどう読むのだろうか。
 オバマ大統領も夫人とは不仲だそうだから、オレのところと同じだと自らを慰めるのか、母親の洋子さんに泣きつくのか。離婚覚悟で昭恵さんとトコトンやり合うとは思えない。
 『セブン』がこの件についてインタビューした一般女性の反応が、子どももいないんだし、ちょっと酔うぐらいいいんじゃないという声が多いことに驚いた。
 『セブン』を読むかぎり、ちょっと飲むというレベルではない。ときどき玄関でそのまま寝てしまった妻を安倍さんが介抱していると報じられるが、酒も弁舌も、ゴルフの腕前でも妻のほうが上だと言われる安倍家は、典型的な女房関白なのであろうか。

 第1位。先週『文春』がスクープした武藤貴也自民党議員の金銭スキャンダルは、彼が離党して記者会見したが収まる気配がない。
 今週の『新潮』でも武藤議員が弁明しているが、到底納得できるものではない。そもそも株の購入話を持ちかけた際、「国会議員枠」で購入できるからカネを集めてくれと知人に言ったとすれば(武藤議員はそういう意味でメールを書いたのではないと否定している)、そういう枠がなければ武藤議員は嘘をついてカネを集めたことになり、詐欺罪等に該当するはずである。
 自民党は徹底的に内部調査をして「国会議員枠」なるものが存在するかどうかも公表するべきだ。その上で嘘をついて株購入のための資金を集めたと確認できたならば即刻、議員辞職に追い込むべきであろう。
 だが、武藤議員の訳のわからない言い分など吹っ飛ばす重大スキャンダルを、『文春』が報じている。それは武藤議員の「未成年買春」疑惑、それも相手は美少年だというのだから驚く。これが堂々の今週の第1位。
 ゲイの掲示板サイトに昨年10月、こんな誘い文句が載ったという。

 「イケメンのエロい“ウケ”がいたらサポするよ」

 ウケとは男女間のセックスでいうと女性の立場を指し、サポはサポートの略でセックスの対価としておカネを払うということだそうだ。
 それに応じたのが「嵐」の大野智(さとし)に似た細身で長身の村井雄亮さん(仮名・19)だった。最初に会ったのは11月14日。新宿・伊勢丹の角で待ち合わせて、歩いてすぐ近くのラブホテルへ直行し、1時間くらいで2万円もらったと言う。
 終わった後、靖国通りの「びっくりドンキー」でご飯を一緒に食べたというのが可笑しい。
 元日の夜には村井さんを赤坂の議員宿舎へ招き入れた。村井さんの記憶では武藤議員と会ったのは約20回、そのうち議員宿舎は4回だったそうである。2人の関係は今年の6月に終わったという。
 さて武藤議員はどう答えるのか。村井さんという男性を知っているか? という問いには「知らない」、ゲイ専用のサイトで知り合ったのでは? という質問にも「そんなウソばっかり」と否定していたが、性行為について、一回2万円を支払ったと聞いたがと聞くと「そんな、有り得ない」と言いながら声が裏返ったそうである。
 その翌日、村井さんの携帯に武藤議員が電話を掛けてきて、「あれはウソだからって言って!」と泣きついたそうだ。
 『文春』によれば売買春が法律で禁止されているのは異性間だけで、同性は違法行為とはならないそうだ。だが、相手は未成年である。もはや武藤氏に議員バッジをつける資格はない。議員辞職は免れないはずである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 ハローキティ、マイメロディといった「スター」たちを擁し、キャラクタービジネス界の頂点に立つサンリオ。他企業とのコラボレーションなど、その展開はつねに世の耳目をひく。そんなサンリオの新たな話題が、ネット上で自分だけのキャラが作れるサービス「ちゃんりおメーカー」(http://chanrio.com/#/)である。

 種類豊富なパーツを組み合わせたり、あるいは顔写真をアップロードすることで、世界に一つのキャラを作成する。基本的には、ネットコミュニティ上で用いる「アバター」の作成と似たようなものだし、昨今のゲームでは、キャラビジュアルのカスタマイズは特段珍しくない。だが、何よりも重要なポイントがある。パーツが「サンリオ風」ということである。日本人のあいだに浸透した、サンリオ風というかわいさの文法を最大限活用してキャラができるのだ。

 2015年7月に公開された「ちゃんりおメーカー」の利用者は、9月2日現在でおよそ1677万カウント。まさにヒット企画といえる。ファンが芸能タレントのキャラを作成するという動きも見られ、そのデキのよさは驚くほどだ。中にはタレント自身が作成する例も。ちゃんりおメーカーが生み出す「おともだち」は、さらに増殖していきそうである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 毎週金曜日の夜に国会議事堂前で「SEALDs(シールズ)」という大学生を中心とした若者たちの団体がデモを繰り広げている。

 SEALDsは、Students Emergency Action for Liberal Democracy-sの略。「自由で民主的な日本を守るための、学生による緊急アクション」と称し、東京を拠点とする10代、20代の若者が、国会で審議中の安全保障関連法案に反対の声を上げている。

日本国憲法では、第10章を「最高法規」にあて、次のように定めている。

第98条
この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
(2 略)
第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 憲法は、この国を形作る最高法規で、これに違反する形での法律は本来なら許されない。そして、国会議員や公務員などには憲法を守る義務があり、憲法は権力者の暴走を縛るためのものでもある。

 ところが、安全保障関連法案は、これまで認めてこなかった集団的自衛権の行使を、憲法の解釈変更によって可能にしようとするものだ。憲法学者の大多数が違憲としており、永久の戦争放棄を定めた9条に違反することは明白だ。たとえ成立しても、98条違反で無効となるのが法の道理だろう。

 また、そうした憲法違反の法律を、数の論理によって強行採決しようとしている自民・公明両党の国会議員は、公務員の憲法遵守を決めた99条違反を犯していることになる。

 現在、国会内で起こっていることは、現政権によるクーデターであり、非暴力とはいえ、立憲主義国家としては絶対に許してはならないことだ。

 SEALDsの前身は、2013年12月に成立した特定秘密保護法に反対するために集まった大学生の集団「SASPL(サスプル:Students Against Secret Protection Law/特定秘密保護法に反対する学生有志の会)」。

 そのSASPL時代の経験を生かし、今回、危機に瀕している日本国憲法を守り、安保法制に反対の声を上げるために、「SEALDs」と名前を改めて、今年5月3日憲法記念日に発足し、活動を始めたのだ。

 安保法制の問題点をわかりやすくまとめた動画やパンフレットを作成したり、イベントなども行なっているが、注目度が高いのが街頭で行なわれるデモだ。毎週金曜日の夜に国会前で行なわれている抗議行動では、シュプレヒコールの間に必ずスピーチが挟み込まれる。

 SEALDsのデモというと、節をつけながら、「憲法守れ」「戦争反対」「立憲主義ってなんだ?」「民主主義ってなんだ?」「なんか自民党感じ悪いよね」などとラップ調で叫ぶコールが若者らしいと話題になることが多い。

 だが、彼らのデモの肝になっているのは、学生自身の言葉で語られるスピーチのほうだ。

 「なぜ、安保法制がおかしいと思うのか」「なぜ、安保法制に反対するのか」。その自分の意志を、自分の生活にリンクさせながら、自分の言葉で語る若者たち。その言葉に嘘や打算はなく、純粋に「安保法制を止めたい」という気持ちが伝わってくる。

 彼らにはその言葉を裏付けるだけの知識があり、行動がある。そして、彼らの言葉の主語は、いつも「私は」だ。誰かが使った言葉ではなく、誰かのせいにするわけでもなく、「私が、この法案を止める」という意志のもとに行動をしている。だからこそ、多くの人の胸を打ち、安保法制に反対するすべての世代の共感を呼んでいるのではないだろうか。

 そんな彼らの行動は、学者や国会議員、知識人たちを巻き込み、今、大きなうねりとなっている。

 6月初旬、数百人で始まったSEALDsの国会前の抗議行動は、その後、安保法制が衆議院の特別委員会で採決された7月15日には6万人(主催者発表)に膨れ上がった。

 東京で始まったSEALDsは地方都市に広がり、現在は関西、東北、琉球(沖縄)でも立ち上がっている。あえてSEALDsとは名乗らないまでも、現政権に「ノー」の声を上げる10代、20代の若者の姿も全国各地で見られるようになっている。

 そして、8月23日には、北は北海道から南は沖縄まで、全国64か所で安保法制に反対する若者のデモが行なわれたのだ。

 こうした若者による安保法制反対の声は世界にも広がり、パリやベルリン、カリフォルニアなどでもSEALDsの立ち上げが計画されているという。

 日本国憲法の第3章には、国民の権利及び義務について定めた次の条文がある。

第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 民主主義は与えられるものではない。

 自由と民主主義を守り続けるには、市民一人ひとりが主権者として責任を持ち、声をあげ、意志を表明し続けなければならない。民主主義は、自らの手で守り続けなければ、為政者の手で簡単に壊せてしまうガラス細工のようなものだ。

 この国の大人たちが忘れていた憲法12条の理念を、今、若い彼らによって教えられているように思う。

 SEALDsのデモでは、コーラーの「民主主義ってなんだ?」という問いかけに、参加者は「これだ!」と答える。

 「民主主義って、なんだ?」
 「民主主義は、これだ!」


 おかしいことには、「おかしい」と。いやなものには、「いやだ」と。声を上げ続けることが、民主主義を守る唯一にして、最良の手段だということをSEALDsのデモは訴えかける。

 6月から毎週金曜日の夜に行なわれてきたSEALDsのデモは、参議院での安保法制の審議が終わる9月中旬まで行なわれる予定だ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 「けっして夜に見てはいけない……」。ホラーな写真や動画の話ではない。「うまい食べもの」の話なのだ。

 わざわざ狙ってのことか、深夜にグルメな画像をSNSなどに投稿する輩がいる。このような不届き千万が俗に「飯テロ」、あるいは「夜食テロ」と呼ばれる。夕食からほどよく時間が経って、小腹がすいたあたり。こんなときに食欲をそそる画像が目に入ったら最後、健康によくないと理解しつつも、何か口にせずにはいられなくなる……。

 最近は深夜帯のドラマにグルメ系のヒット作が多く、これらの存在も「夜食テロ」と称される。小林薫主演の『深夜食堂』(TBS系)、松重豊(まつしげ・ゆたか)主演の『孤独のグルメ』(テレビ東京系)など、渋い役者が説得力のある演技で「うまい」を表現する作品が多かった。視聴者層としては上の世代を狙ったかに思えるが、最近は若い世代にもウケているのではないか。現に、早見あかり主演の『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)は、夜11時40分という時間帯にも関わらず、最高視聴率8.2%を叩き出した。昨今、『孤独のグルメ』に続けとばかりに、各局が原作となるグルメ漫画をあさっているといった状況。宵っ張りの胃に悪い状況がまだまだ続きそうな気配だ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 文部科学省が2015年6月、全国の国立大学に対し、文系学部の廃止や他分野への転換を求める通知を出したことが大きな議論を呼んでいる。

 通知を読んで大学関係者が目をむいたのは、組織見直しの章でこんな一文があったことだ。

 「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」

 ズバリ言うと、文系学部の改廃を求めたのだ。教員養成系学部の組織改廃の背景には少子化の進展があるのはいうまでもない。学校の生徒数が激減したからだ。ただ、法律、経済、文学など人文社会科学系も改廃の対象にしたことについては、国立大学側から「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない」(山極寿一京都大学総長)、「非常に短期の成果を上げる方向に性急になりすぎていないか。大学では今すぐ役に立たなくても、将来大きく展開できる人材をつくることも必要だ」(里見進東北大学総長・国立大学協会会長)などと反発の声が出ている。

 文系学部については経済界から「文系出身者はスキルがなく使えない」ため、組織改変の要望が出ているという。これには「経済界の論理だけで大学の組織改編を迫られるのは納得できない」との声も。

 大学側も自らの教育内容を見直し、優秀な学生を育成する必要があるのは当然だ。

 このほか通知では国立大学に支給する運営費交付金をメリハリをもって重点配分するために、大学の役割を3分類することを提示した。その3つとは(1)全学的に海外の大学と伍して世界で卓越した教育研究を推進する大学、(2)専門分野で強み、特色を持ち、全国的、世界的な教育研究を進める大学、(3)地域活性化、地域貢献の中核となる大学。

 こちらも結果として大学を一軍、二軍、三軍に格付けし、お金を配分するような気がしてならない。大学間の競争も激化しそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「親指=thumb」から名付けられたもので、親指を唇に当てるポーズのこと。TRFのSAMが得意とするポーズのことではない。

 若い女子のあいだで「自撮りの際に自分が可愛く写るポーズ」として、あひる口・虫歯ポーズ・ハムハムポーズ……などに続き、ブレイクの兆しを見せているという。

 小椰準子(おなぎ・じゅんこ)という人気モデルが生みの親で、「口元に手を持ってくることによってフェイスラインが隠れ、小顔に見える」「唇のぷっくり感が強調されるのでセクシー」「自慢のネイルを披露できる」……といったメリットがあるらしい。

 今回のこの記事を書くにあたって、筆者も数々のサムポーズを閲覧してみたのだが、正直な話「可愛い」と感じた女子は、ほぼ皆無だった。上目遣いでキスのおねだり風を演出しようとすれば、いつまでたっても親指をしゃぶる癖がとれない“教育上の問題があった子”にしか見えないし、口をポカーンと開けて抜け感とやらを演出しようとすれば、“アホの坂田”にしか見えない。

 結局のところは、これまで流行った自撮りポーズと比べ、プロのモデルがしなければ様にならないクラスの難易度を秘めたデンジャラスなポーズだということだ。

 筆者も試しにやってみたが、モチロンのこと「可愛い」よりは「不気味」という言葉が、まさにぴったりだった……w。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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