ムラサキシキブ(紫式部)はクマツヅラ科の落葉低木で、湿り気のある雑木林を好み、京都を囲む里山でよくみかける植物である。漢名は紫の実の様子から「紫珠」という。学名はCallicarpa japonica(カリカルパ・ヤポニカ)。「日本の美しい果実」という意味だ。さらにいえば、花言葉は「愛され上手」、「聡明な女性」。学名からこれだけ褒められている植物を、ほかには思いつかない。

 高いものならば、3メートルほどにも生長するだろうか。6月ごろに淡い紫色の花を咲かせ、秋には小粒の実がたわわに実る。実はやや赤みを含んだ渋い紫色で、この色が紫式部という、日本の伝統色になっている。江戸期以前は「ムラサキシキミ(紫重実)」と呼ばれていた。紫色の実の群がるような美しさが、源氏物語の作者である紫式部を連想させるので、江戸時代になってから「ムラサキシキブ」と呼ばれるようになったそうである。

 紫といえば、京都を象徴する色でもある。「日に映じて、山は紫に、澄んだ水は清くはっきりと見えること。」(『日本国語大辞典』)を意味する山紫水明ということばが、京都の紫色の由来となっている。最近では、Jリーグの京都パープルサンガのチームカラーが紫(パープル)であり、名称の一方の「サンガ」には、サンスクリット語の「群れ」という意味と、美しい「山河」という音と意味が重ねられている。サッカーチームといえども案外、古典的な意味からネーミングされたわけである。

 


ムラサキシキブ(上)を見つけたものの、まだ色が紫になっていなかった。そのため、庭木に多く、ほぼ同じ色になるコムラサキ(下)を一緒に掲載する。コムラサキは、ムラサキシキブより枝も葉も小ぶりで、葉先の半分ほどしかギザギザがないところで見分けている。


京都の暮らしことば / 池仁太   



 当たり前だが人が死ぬのは悲しい。それがまだ若い女性ならなおさらのことである。

 9月19日にフリーアナウンサーの黒木奈々が胃がんで亡くなった。32歳の若さだった。

 彼女は女子アナを多く輩出しているという理由で上智大学外国語学部に入ったそうだ。私が上智で教えていた時期と重なる。私は編集学だったが、300人の7割は女子学生でアナウンサー志望も多かったから、もしかすると会っていたかもしれない。

 『週刊現代』(10/10号、以下『現代』)によると、キー局や地方局を含めて試験を受けたが全滅だったそうだ。記者枠で大阪の毎日放送へ入るが、10か月で退社してフリーの道を選ぶ。

 07年にオーディションで『TBSニュースバード』のキャスターの座を勝ち取り、11年にNHK BS1の海外ニュース番組『ワールドWaveトゥナイト』のサブキャスターになる。

 黒木の口癖は「有名になりたい」だった。ストレスで円形脱毛症になったことがあると『現代』の記者に話したという。

 そしてついに14年4月に番組が『国際報道2014』とリニューアルされ、念願のメインキャスターに抜擢されるのである。しかしそのわずか4か月後、友人と訪れたワインバーで激しい腹痛に襲われる。入院をして検査を受けた。結果は悪性の胃がんだった。

 記者へのメールにこう書いてきたという。

 「精神的に一番つらい時期は過ぎ、あとは闘うだけって感じ。せっかく伝える仕事なんだから、わたしが乗り越えて社会復帰して同じように辛い思いをしている人をひとりでも励ますことができれば嬉しい。まだ(私は)有名じゃないけど、ひとりくらい救われる人はいると思う」

 9月にはスポーツ紙によって、黒木の不在の理由はがんだと報じられてしまった。

 年明けの1月4日、NHK総合で放送された『国際報道2015』で1日限定の復帰を果たす。3月末からは毎週月曜日だけの番組再登板が決まったが、病魔は彼女を急速に蝕んでいく。

 GWに記者が久しぶりに会おうというと、キャンセルのメールが来たそうだ。そこには「最近、心が折れそうになる」と書かれていたという。

 人生の絶頂期を迎えようとする直前の挫折。彼女の無念さはいかばかりであっただろう。

 9月24日には、私も多少袖すり合ったことのある川島なお美が亡くなった。享年54。『週刊新潮』(10/1号、以下『新潮』)によれば、13年7月に定期検診を受けていた人間ドックで病巣が見つかり、サードオピニオンまでしたうえで昨年の1月28日に、都内の病院で切除手術を受けている。

 病名は「肝内胆管がん」。『新潮』によれば「手術では胆管にとどまらず隣の胆のうまで取っている。手術時間は12時間にも及びました」。このがんはやっかいな病気だという。

 「胆管の肝臓側に内包されている部分を肝内胆管といいますが、がんがここに出来るため、進行すると肝臓に浸潤し肝機能の低下を招きます。そうなると、黄疸(おうだん)や倦怠感、それに食欲不振や体重低下といった症状が出てくるのです。このがんは発症原因もよく分かっていません」(岡山大学医学部の楳田(うめだ)祐三助教)

 川島の身長は158センチ。理想体重は48キロだそうだが、彼女はダイエットをして41キロを常にキープしていたそうだ。だが術後は30キロ台前半まで落ちて「激やせ」が話題になった。

 川島は病気がわかった時点で「余命1年」と宣告されていたそうだが、手術後のブログにこう綴っていたと『新潮』が報じている。

 「私が乗り越えた病気は/5年生存率50%/10年生存率2~30%という/厳しいものです/でも/もっと生存率の厳しい芸能界で/35年生存してきたので/これからも大丈夫!と/自分を信じたいです」

 病魔を克服して再び女優として輝く。そう思っていた彼女は、昨年12月からミュージカル『パルレ~選択~』の稽古を始めて、9月4日が初演。だが16日の長野県伊那市の公演で体調が急変し、9月20日に降板。その4日後には亡くなってしまった。

 生前彼女は、自分の血はワインでできていると言っていたが、最後は好きなワインも口をしめらす程度しか受け付けなかったという。

 かなりのがんは早期発見すれば生存率は高くなるといわれる。血液一滴で13種類の超微小がんが発見できる「革命的診断」法も実用化されようとしているという。

 一方で元慶應大学病院の近藤誠氏のように、人間ドックは受けるな、抗がん剤治療は効果がないだけではなく命を縮める可能性があると警告する医者がおり、論争になっている。

 私の周りは高齢者が多いが死因の多くはやはりがんである。医学がいくら進んでも150歳、200歳まで生きることはできはしない。がんで死ななくても老いは確実に襲ってくる。

 立川談志師匠が生前よく言っていた。「みんないなくなりやがって、話し相手がいなくて生きててもつまらねぇ」。頃のいいところでコロッと逝くのがいいようだ。

 だが、30代、40代の人ががんで死ぬのは、医学の進歩でなんとかしてあげてほしいものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 先日からおもしろいミステリーを読み始めた。なにしろ主人公が88歳のメンフィス署の元殺人課刑事なのだ。足腰も弱り妻と老人ホームに入っているが、その「暴走老人」ぶりは生半可ではない。気に入らない老人の車イスをたたき壊すなど朝飯前。体中にガタがきているのに格好いいのだ。
 この主人公を老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町(さいわいちょう)」に入れたらおもしろいだろうなと、読みながら思っている。日本でも、『三匹のおっさん』のような甘っちょろいのではなく、ここまで徹底した男の物語を読んでみたいね。ちなみに本はダニエル・フリードマン著『もう過去はいらない』(創元推理文庫)です。

第1位 「川崎老人ホーム転落死『個人資産百四十億円』“強欲”創業者を直撃!」(『週刊文春』10/1号)
第2位 「情報戦で劣勢の『六代目山口組』の激白5時間」(『週刊新潮』10/1号)
第3位 「『落選運動』の威力と効果 その実践法を公開する」(『週刊ポスト』10/9号)

 第3位。『ポスト』の巻頭は、国民と憲法を蔑ろにした安倍政権の閣僚や安保法制に賛成した議員たちを落選させる運動を、来年の参議院選に向けて起こそうという「檄文」のような特集であるが、大切な指摘である。
 もちろん主旨には賛成する。落選運動は特定の候補を当選させるための事前運動ではないから、合法的で、今すぐに始められるのだ。
 基本的なやり方を湯浅墾道(はるみち)情報セキュリティ大学院大学教授が教えている。

 「特定候補を落選させようというメールを送るのは選挙活動にならないからOKです。ホームページやSNSでも落選運動はできる。ただし、選挙期間中に落選運動をする人は匿名ではなく氏名とメルアドを明記しなければならないから、Twitterなどでは実名をハンドルネームにしておく必要があります。また、選挙権のない18歳未満は公選法で選挙運動を禁じられていますが、落選運動であれば行なうことが可能です」

 ネットの「安保法案戦犯リスト」を見てみると、安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理大臣、中谷元(なかたに・げん)防衛相、岸田文雄外相、菅義偉(すが・よしひで)官房長官、高村(こうむら)正彦自民党副総裁、山口那津男(なつお)公明党代表などを筆頭に、多くの名前が掲載されている。
 これほど参議院選が待ち遠しいのは初めてのような気がする。早く来い来い参議院選!

 第2位。『新潮』の山口組幹部のインタビュー。ヤクザに強いライターたちが各誌で競っているが、やはり当事者が出てきて話すのが週刊誌の王道である。
 ヤクザに強い雑誌はかえって両陣営に気をつかって、当事者インタビューはやりにくいのかもしれない。『新潮』はさすがである。

 「我々の世界の根本に何があるかというと、盃事なんです。汚い世界のたった一つキレイなところ、と言うてもええかもしれません。今回、彼らは我々の世界の根本にあるルールを破った。その時点で、向こうに百に一つの言い分があったとしても、それは通らない、ということなんです。
 山口組を含め、この業界では、一切の権利、一切の縄張りは親分のモン。先代と代替わりした時には、先代のカマドの灰まで当代のモンなんです。山口組の親分は、ええモンも悪いモンも全部引き継ぐ。その親分に白い物を黒や言われても、それは認める言うて我々、盃飲んどるんです。そんな大事な盃をほったらかしにして出るなんて、絶対にやってはならん。彼らには山口組を名乗る資格はない」

 白を黒だと言われることも、しょせん畳じゃ死ねないことも~。健さんの唐獅子牡丹が聞こえてくるようですな。
 山口組の分裂で「仁義なき戦い」が始まるのか、興味半分怖さ半分の野次馬としては目が離せない。
 冒頭の発言は『新潮』に載っている指定暴力団山口組の直系組長の言葉だが、情報戦では、山口組を出ていった「神戸山口組」のほうが上回っていた。
 さらに『週刊文春』(10/1号)によれば、9月17日に警視庁が約50人体制で名古屋市中区にある山口組の二次団体「司興行」の本部事務所に家宅捜索に入ったという。
 「司興行」といえば、山口組六代目の司忍(つかさ・しのぶ)組長が1967年に立ち上げ、山口組を牛耳る「弘道会」の中核組織だそうである。
 今年6月には三代目の森健次組長が「直参(じきさん)」と呼ばれる山口組の直系組長に昇格を果たした有力団体で、警察当局は常にその動向を追ってきたという。警視庁関係者がこう明かしている。

 「今回の家宅捜索は、二日前に逮捕された司興行の本部長、川崎誠治容疑者と共犯の山口組の二次団体『岸本組』幹部の森本展生容疑者らによる恐喝事件に関連して行なわれたものです」

 都内の飲食店経営者から恐喝されていると被害届が出されたため、継続捜査していたようだが、「そんな時山口組が分裂し、弘道会系の組織に手を付けられる絶好の機会だとして、一気に捜査着手への気運が高まったのです」(先の警視庁関係者)。報道では、新組織を立ち上げた連中が山口組の金銭に関する内部資料を持ち出し、警察に持ち込んだというものもあった。
 どうやらここまでは、警察とタッグを組んで攻める「神戸山口組」、守るに懸命な「山口組」という構図だ。週刊誌の報道などを見ても6対4の割合で新組織寄りの記事が多いように思える。危機感を抱いたのだろうか、山口組の幹部が『新潮』に口を開いたが、その論法は「ヤクザってのはな~」という健さんや鶴田浩二のセリフのようで、私のような古い人間には納得できるところがあるのだが。
 『新潮』のインタビューを要約すると、
 今回の騒動は「分裂」ではなく、親分の盃を飲んだ人間が盃を返すことなく出ていったのだから「謀叛」というべきで、ヤクザの世界では万死に値する犯罪だ。
 司組長が総本部を名古屋に移そうとしていたなどということは全くない、作り話だ。司組長がカネにがめつい人間のようにいうが、直系組織が支払う会費は100万円前後で、山口組の運営に使われるカネであって組長個人が私腹を肥やすカネではない。山口組には金銭に関して詳細に記した資料はない。ミネラルウォーターや日用雑貨を買わせているのは事実だが、せいぜい月に5万から20万円程度等々。
 だが、司組長になって「引退する親分に1億円の餞別を払っていた」というのはすごい。それも引退する親分が相次いでいるので、直系組長が分担拠出する金額が2000万円になってしまったそうである。
 彼の言い分をそのまま信じるわけにはいかないが、「マスコミは鉄砲をバンバン撃つんじゃないかと煽りますが、そんなことは起こらへんのです」(同)という件は頷ける。
 鉄砲を撃っただけで10年、人をケガさせたら20年、相手が死んだら無期懲役を食らうのでは「鉄砲玉」を買って出る若い奴はなかなかいないだろう。
 山口組側は、新組織から脱落する連中が多く、現在は800人もいないのではないかと読んでいるようだ。最後に直系組長は、世間をお騒がせしたことを詫び、「こういうことになった原因がどこにあるのかを検証」すると言っている。不祥事を起こしたどこかの企業の広報担当重役のセリフのようで可笑しい。
 暴排法(暴力団排除条例)などで追い詰められ衰弱してきている暴力団組織だから、この分裂騒ぎは「一和会」戦争のように、組長の首を狙うような大事にはならないで膠着状態が続いていくのかもしれない。

 第1位。3人の入居者が相次いで転落死した介護付き有料老人ホーム「Sアミーユ川崎幸町」などを全国展開している株式会社「メッセージ」最高経営責任者・橋本俊明会長(66)を『文春』が直撃している。
 『文春』によると、過去2年間で全国の「アミーユ」施設で5人が事故死、疑いのあるものも含めて9件の虐待が発生しているという。
 ここは入居の際のおカネがいらず、月々の費用も多少安いために入居希望者は多いそうで、全国に303施設、総入居者数は1万6000人を超え、営業収入は790億円にもなるそうだ。一大介護コンツェルンである。
 橋本氏は岡山大学医学部の第一外科医局を経て81年に橋本胃腸科外科医院を開業。91年にリハビリ主体の老人保健施設を立ち上げ、そこから介護事業にのめり込み始めたという。
 当初は、海外の施設を見て日本の介護のあり方に疑問を呈したり、老人に安い値段で施設を提供したいという「高邁な理想」をもっていたというが、大きくなるにつれて理想は金儲けへと変質していったようだ。
 介護付き有料老人ホームだから、入居者に対して介護職員が3対1の割合で配置されるべきだが、「全国のアミーユを視察したところ、職員が全然いませんでした」(介護コンサルタント)。他産業との賃金格差を是正するために厚労省から支給される「介護職員処遇改善加算」という補助金も都内にある「アミーユ光が丘」の場合、まったく反映されていないという。
 『文春』によれば橋本会長と家族の個人資産は140億円以上になるそうだ。「岡山のビバリーヒルズ」といわれる豪邸に住む橋本氏は、不祥事や経営のあり方にどう答えるのか。
 今回の不祥事について説明責任があるのではないかという質問には、個人的には感じていることはあるが、川崎市の第三者委員会などがあるので、その前には言わない。会長といっても取締役の一人だからと逃げを打つ。
 被害者に謝罪したいという気持ちはあるかという問いには、

 「川崎の方は第三者委員会がすぐ迫ってますから。第三者が『それは不可抗力でした』と言ったら『ああ、そうですか』と言うし、『それは責任です』と言ったら『ああ、そうなんでしょうね』という風に考えるだけの話です」

 ここまで書き写してきて、はらわたが煮えくりかえって仕方ない。こんな施設でも頼って入居してくる老人たちやその家族が不憫に思えてならない。
 まさに貧困ビジネスの最たる施設ではないのか。介護は金儲けの手段。そう考えてこの業界に参入した居酒屋チェーンのワタミが次々に施設を閉鎖し、介護事業から撤退するのではないかといわれている。
 老人福祉を根本から見直し、介護に従事する人たちの給与をアップしないかぎり、こうした問題のある施設はなくならないはずである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 LINEで「りんな」(LINE ID:@ms_rinna)という女子高校生が人気だ。といっても、「リアル」の世界に実在はしていない。その正体はAI(人工知能)なのである。開発したのは日本マイクロソフト。LINEの公式アカウントに登場したときからかなりの人気者となっていた。当初は明確なアナウンスがなく、謎めいていたことも話題に寄与したのだろう。

 あくまでサービス上の存在に過ぎないのだが、これがうまく機能していて、お茶目な女の子と本当にトークしている気分になれる……と、もっぱらのネットの評判だ。もちろん、既読スルーされることもない。たとえば、ネタとして「愛の告白」をするユーザーも多いのだが、軽くいなされる。プログラムでは難しそうに思えるユーモアのセンスがよく、じつに「人たらし」なのである。現状におけるAIという技術の出来ばえが実感できるツールといえるだろう。

 2015年8月7日、LINE株式会社が正式にアナウンスしたことで、「りんな」はビジネス向けに提供されるLINE公式アカウントの「参考例」であったことが明らかとなる。もし企業が気に入って「りんなAPI for Business」を導入すれば、人工知能との会話からユーザーに対して必要な情報を提供できるほか、これまでオペレーターが行なってきたお問い合わせへの対応も可能である。つまり、マーケティングだけでなく、人的コストの削減も意図しているわけだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2015年5月に成立した医療保険制度改革関連法に、健康保険に「インセンティブ制度」を設けることが盛り込まれた。

 インセンティブ制度は、医療や投薬の利用が少ない人にメリットを与えて、加入者に病気予防や健康づくりに励んでもらおうというもの。また、それを支援する仕組みをつくっている健康保険組合を優遇し、増え続ける国の医療や介護の費用を削減するのが狙い。いうなれば、社会保障費を削減するための国をあげての健康増進計画だ。

 実際の運用は来年度からで、次のようなスケジュールが示されている。

2016年度~:自治体などが主催する健康教室の参加者にヘルスケアポイントを付与する仕組みを拡充。

2018年度~:健康づくりを支援したり、価格の低いジェネリック医薬品の普及で成果をあげた健康保険組合などの保険料負担を軽減。現役世代が負担している高齢者医療制度への支援金を減らし、加入者の保険料の引き下げを可能にする。

 2016年度以降、各健康保険組合は国が示すガイドラインにしたがって、病気予防や健康づくりの自助努力をした加入者に、ヘルスケアポイントを付与したり、保険料をキャッシュバックしたりすることも可能になる。

 インセンティブ制度ができれば、ポイントを貯めて賞品と交換したり、現金給付を受けたりできるようになる。健康な人ほど優遇されるので、制度導入を歓迎する声もある。

 だが、健康な人の保険料を引き下げるということは、実質的には病気のある人の保険料を引き上げることになる。つまり、すでに持病のある人は受診時の自己負担に加えて、保険料の支払いでも高い負担を強いられることになり、応能負担(収入に応じて保険料を負担すること)を原則としてきた公的な健康保険を変容させる危険があるのだ。

 また、保険料のキャッシュバック目的で、本当に病院に行かなければならない人が受診を抑制して、重症化するのではないかといったことも懸念されている。

 ましてや、国はインセンティブ制度の導入理由を社会保障費の削減のためにとしているが、予防による医療費の削減効果は、ワクチン接種など一部の対策を除いて、いまだ実証された研究はほとんどない。

 インセンティブ制度の導入が、反対に医療費を押し上げることにはならないのか、国民の健康を阻害することにならないのか。制度運営を注意深く見ていく必要がある。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 このところスポーツの世界では、女性ファンの存在感が増している。たとえば球界。広島東洋カープの「カープ女子」、オリックス・バファローズの「オリ姫」などが注目され、球団と若い女性たちが良好な関係を築いている。以前にこのコーナーで取り上げたところでは、イケメンレスラーに夢中の「プロレス女子」も話題だ。

 女性の支持を受けることで、その業界全体としても盛り上がっていく。スポーツに限らず、昨今のエンターテインメントの興行全体における潮流だが、これが角界でも起こっている。すなわち、国技館にお気に入りの力士目当ての「スージョ」(あるいは「リキジョ」と呼ばれる)の姿が目立つようになって、相撲人気を牽引しているのだ。

 八百長問題などの影響もあって土俵際に追いつめられていた角界だが、2015年の大相撲初場所では、連日の満員御礼が朗報として伝えられた。「若・貴ブーム以来」ともいわれる盛況っぷりだ(が、少し大げさな表現という気もする)。横綱が3人いることに加え、逸ノ城(いちのじょう)、照ノ富士といった若手力士が頭角を現しつつあり、未来はそれなりに明るいように思える。

 スージョたちが増えた背景には、日本相撲協会の女性職員の働きが大きいようだ。イケメン力士との「お姫さま抱っこ」企画など、従来にないアイディアで地道に支持を増やしていったという。公式ツイッターでの情報発信も、稽古の合間のお茶目な画像を掲載するなど、女子に向けたツボをよく心得ている。きものなど「和」の文化が、若い世代にも好印象となっている状況とあいまって、相撲人気はしばらく続くのではないだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 秋といえば新鮮なサンマが食卓にのぼる季節だが、先日、スーパーで1匹220円もして驚いた。去年までは確か100円前後ではなかったか。

 サンマの資源量が長期的に減少傾向にあるという。「いまはまだ庶民の味のサンマだが、近い将来、高値の高級魚になるのでは」と懸念されているのだ。

 日本政府はサンマについて漁獲量に上限を設けている。2015年漁期(7月~16年6月)26.4万トン。前年比で26%も減った。これは上限制度を設けた1997年以降で過去最低の数字である。実際の漁獲量はこれを大きく下回る見通しだ。

 サンマ漁をめぐっては近年、台湾や韓国などが漁獲量を増やしている。大型漁船で北太平洋の公海に繰り出し、盛んにサンマ漁を行なっているのだ。とりわけ台湾の増加が著しく、2014年の漁獲量は23万トンで、それまで世界一だった日本を追い抜いた。

 資源量の減少について、そうした外国大型漁船による大量漁獲を指摘する声がある。

 サンマは北太平洋で6、7月を過ごした後、8月ごろから南下して日本近海にやってくる。台湾などの大型漁船は、日本近海にまでサンマが回遊する前に「先取り」している、という見方だ。日本の漁業関係者の危機感は強い。

 こうした中、「北太平洋漁業委員会」の初会合が2015年9月3日、東京都内で開かれた。同委員会は日本、カナダ、ロシア、中国、台湾、韓国などが北太平洋公海の漁業資源を話し合う国際的な枠組みだ。会合ではサンマの資源量調査を行なうことを決めた。

 漁業資源は有限であることを踏まえ、各国は資源管理に向けてきちんと議論していくべきである。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 かつて漫画、アニメほかで大人気を博した、『美少女戦士セーラームーン』(作画/武内直子)が今年、誕生20周年を迎え、いろんなイベントが開催されたり、関連グッズが販売されたり……と、けっこうな盛り上がりを見せているらしい。

 20年の歳月を経て、今なお衰えない求心力をキープし続ける漫画作品はもちろん稀で、幼年向けだと『ドラえもん』、青少年向けだと『北斗の拳』に並ぶ、ウルトラコンテンツだといえよう。

 コスプレの原点ともされる、セーラー服を極端にアレンジしたコスチュームデザインは、適度にロリータで適度にエロく、着用して似合わない日本人女子はまずいない、そこが大きなポイントかと推測される。

 昨今の萌え系アニメが、セーラームーンから「適度」を取り除いた、よりロリ寄り・よりエロ寄りの作風へとマイナーチェンジすることによって、新しいパーソナリティを模索していることを考えれば、“本家の強み”は、やはり揺るぎなく、その完ペキな“エロかわ”バランスの恒久性を改めて実感してしまう。

 あと、女子中高生の制服でセーラー服タイプが年々激減してきているのも、逆にセーラームーン再ブレイクに一役買っているのかもしれない?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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