清水寺に向かう参道は十数通りあり、どの道も甚だしい人込みである。それでも、周辺は名所旧跡揃いなので、どの道を歩こうかと考えつつ、何度行っても楽しい場所である。

 清水寺は798(延暦17)年に創建され、参道として最も古い歴史をもつのは、創建の頃から確認される「清水坂(松原通)」である。だが、この参道に人が溢れていたのは、東大路の清水道交差点に市電の駅があった頃までで、現代では比較的空いている道になっている。最近は、団体客なら五条坂をバスで行くし、東山を散策しながら歩く人ならば、石塀小路より高台寺を経るなどしながら、二年坂、産寧坂(三年坂とも)を行く人が多いだろうか。あるいは、東大路から八坂の塔を回っていく道かもしれない。

 緩やかな登り道の二年坂(140メートル)、それに続く46の石段坂になっている産寧坂(100メートル)には、昔から歴史的建造物をいかして清水焼や古美術、漆器や扇子などの少し高級な土産物店が多く建ち並んでいる。「産寧坂」という名称の由来にはいくつかの説があり、江戸期の地誌「京童(きょうわらべ)」には、次のように記されている。

 「ここをさんねんざかというは、大同三年にひきならしたるゆへ三年坂ともいへり。また、清水寺のこやすの塔に続きたるゆへ、産寧坂といふ」

 坂上田村麻呂によって、二年坂が807(大同2)年、産寧坂が808(大同3)年に開かれたので、この名がついたという説が有力である。現在、清水寺本堂の南にある子安塔(こやすのとう)は、明治末期まで入り口の仁王門前にあった。この子安観音(子安塔)は安産を祈願する場所なので、安産にかけて「産寧坂」と呼ばれるようになったともいわれる。また、産後のお礼参りに再び登るため、「再念坂」と呼ぶこともあったそうである。

 本当に話題の尽きない道で、坂本龍馬の定宿であった明保野(あけぼの)亭や、竹久夢二の寓居跡もある。また、「この坂で転ぶと3年以内に死ぬ」という穏やかならない俗説があり、これは坂を登るとき、足下を気をつけるよう促す意味があるとか。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 広島東洋カープが25年ぶりにセ・リーグ優勝を果たした。去年までエースだった前田健太がメジャーリーグのロサンゼルス・ドジャースに移籍したため、戦力不足が心配されたが、「今季は復帰2年目の黒田博樹投手(41)、新井貴浩内野手(39)らベテランと菊池涼介内野手(26)、野村祐輔投手(27)らがかみ合い、シーズン序盤の混戦を抜け出し、6月5日から一度も首位の座を譲らなかった」(9月10日のYOMIURI ONLINEより)

 これでリーグ優勝7回になる。これまで6回出場した日本シリーズでは3度日本一になっている。

 『週刊文春』(9/22号、以下『文春』)はカープを「叩き上げて勝つ」チームだと評している。

 例えば今年4年目の外野手・鈴木誠也(22)。甲子園出場経験はなく全国区の知名度はなかったが、ドラフト2位で指名している。

 異次元の守備力を誇る二塁手の菊池涼介もマイナーな岐阜学生リーグの中京学院大学出身。ドラフトでは2位指名だったが、明大の野村祐輔をはずしていたら、菊池を1位に指名するつもりだったと松本有史スカウトは語っている。

 広島のスカウトの要諦は、「選手を即戦力ではなく、素材として探します。二年後、三年後に活躍できる子を獲るのが基本方針です」(スカウトの宮本洋二郎氏)

 そうやって見つけ、入団してきた素材を徹底的にしごく。

 「とにかく量をこなす。ひたすらボールを追い、バットを振り込むんです。昨年の秋季キャンプでは連日、朝から晩まで最大十時間の猛特訓を繰り返しました」(カープ担当記者)

 カープ向きの選手は、「何としてもプロで伸し上がりたい強烈な野心がある選手、そして猛練習に耐えられる心と身体の強さを持っている選手たちです。スカウトの方はよく『カープの方に顔が向いていない選手ではついてこられない』と言います。本当は他の球団に行きたかったのにという逃げの気持ちが出てしまうと猛練習についていけず、成長のマイナスにしかならないからです」(スポーツジャーナリストの安倍昌彦氏)

 これだけ一貫したスカウト・育成の方針がありながら、なぜカープは24年間も低迷したのだろうか。

 スポーツジャーナリストの二宮清純(せいじゅん)氏が『文春』でこう分析する。

 「要因は主に二つ考えられます。九三年に導入されたFA制度とドラフト逆指名制度です。逆指名制度は〇七年に発覚したドラフト裏金問題で廃止されましたが、この二つは、資金力に乏しくマネーゲームに参加しない方針のカープにとっては極めて不利な制度でした」

 しかし、それもディズニーランドを視察して作ったという「マツダスタジアム」建設から観客動員力が激増、特に女性客が増え、今や観客の約6割が「カープ女子」だといわれる。

 今回の優勝は緒方孝市(こういち)監督(47)の采配も大きいが、大リーグ・ヤンキースで活躍していて高額な年俸を提示されたのに、それを蹴って昨年カープに戻ってきた黒田博樹投手の存在を抜きには考えられないだろう。

 『文春』の「野球の言葉学 鷲田康」によると、黒田復帰への動きは3年前から始まっていたという。

 その年、チームは16年ぶりにクライマックスシリーズに進出し、阪神を破り、巨人とのファイナルステージでは負けたが、広島首脳陣に「優勝できる」と思わせた。

 黒田を復帰させるために、黒田の戻ってきやすい環境づくりをした。その一つが「野手の人とはどうも溝があった」という黒田のために、野手出身の野村謙二郎監督を交代させたことだった。

 その次が、07年にFAで阪神に移籍したが定位置争いに敗れ、退団必至だった黒田の盟友・新井貴浩を、松田オーナーが「話し相手でいいけん、新井を戻してやれ」という鶴の一声で復帰させたことだった。

 さらに貧乏球団だったカープが、男気を発揮して広島に戻るといってくれた黒田に報いるために、年棒4億円を払ったことだ(今季はさらに2億円上積みした)。

 エースの前田でさえ3億円だったのにである。だが、昨季は黒田を軸にしたチーム作りができず、優勝どころか4位に沈んだ。

 今季は前田がいない分、黒田カープが完成して優勝したと見るカープ担当記者が多いようだ。

 カープがクライマックスシリーズを勝ち抜き、パ・リーグの覇者と日本シリーズを戦って日本一になってほしいと思う。

 日本シリーズといえば、1979年の近鉄バッファローズとカープとの一戦を思い出す野球ファンも多いだろう。

 この第7戦で、カープのリリーフエース・江夏豊が投げた21球はスポーツノンフィクションの金字塔『江夏の21球』(山際淳司)としてまとめられている。

 私はこの試合をテレビで見ていた。4対3と一点リードしている広島の名将・古葉竹識(こば・たけし)監督は、7回から江夏をリリーフに送った。

 9回裏、近鉄の先頭打者がヒットを放って俄然盛り上がる。近鉄の名将・西本幸雄(ゆきお)監督は代走に盗塁記録を持つ藤瀬を起用。

 その藤瀬が二盗を試みる。捕手が悪送球してランナーは三塁へ。バッターは四球でノーアウト一塁三塁。一塁ランナーが二塁へ走るが捕手は投げず、二塁三塁で、一打サヨナラの場面。

 ここでバッテリーは次の打者を敬遠する策にでる。無死満塁。カープ絶体絶命の大ピンチ。

 次は投手だが、西本監督は「左殺し」といわれる佐々木を代打に送る。佐々木は空振り三振で一死満塁。

 ここからがこの試合の白眉である。次の石渡は、江夏が投げる直前にスクイズの構えをする。江夏はすでに投球動作に入っていた。カーブである。

江夏はその握りのまま、スクイズをはずす高めの球を捕手のミットめがけて投げ込むのである。まさに神業というしかない。石渡は必死にボールに当てようとするが届かない。

 走り出していた三塁走者はあわてて戻ろうとする。だが、二塁走者がすでに三塁に達していたため戻れずにタッチアウト。これで二死二塁三塁。

 江夏は最後のバッターを空振り三振に切って取り、カープは初の日本一になった。

 このとき江夏が投げた21球それぞれについて、江夏、対したバッター、両監督などにインタビューしてまとめたのが山際の本である。

 日本にはスポーツノンフィクションは育たないとよくいわれる。巨人に象徴される球団の閉鎖性、選手たちの表現不足、ライターの勉強不足と取材源への遠慮などが、その理由として挙げられる。

 山際はまだライターとしては駆け出しで、しかも野球にそれほど詳しくなかったのが功を奏したといわれている。

 こうした球史に残る名勝負を残してきた広島東洋カープが、日本シリーズで再び後世に語り継がれる名勝負を演じて、われわれ野球ファンを楽しませてほしいものである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 強姦致傷の容疑で逮捕されていた高畑裕太容疑者が、一転、不起訴で釈放された。では、警察の誤捜査で、裕太は「冤罪(えんざい)」だったのかというと、そうではないようだ。被害女性には示談金を払ったと弁護側も認めているのだ。しかもその同じ口から「裕太は無罪」という主張が発表されたのだから、われわれは混乱してしまう。この手の事件は、当事者同士しかわからないことが多くあるはずだが、週刊誌はどこまで真相に迫れたのか、読み比べてみてください。

第1位 「三田寛子ショック! 夫・中村橋之助 芝翫襲名目前の『禁断愛』」(『週刊文春』9/22号)
第2位 「高畑裕太『冤罪声明』を仕掛けた親バカ女優」(『週刊文春』9/22号)/「誰も解説しない『高畑裕太』釈放から読み取れること」(『週刊新潮』9/22号)/「高畑裕太『49歳といわれる被害女性』あの夜の因縁」(『女性セブン』9/29・10/6号)/「すべての謎が解けた! 高畑裕太強姦致傷事件『示談交渉を仕切った暴力団関係者』」(『フライデー』9/30・10/7号)
第3位 「『小池百合子都知事』金庫番が手を染めた特権的錬金術」(『週刊新潮』9/22号)

 第3位。小池都知事がちゃぶ台返しをした豊洲移転問題だが、この裏には都議会のドン・内田茂都議だけではなく、都政そのものに大きな闇があることが明らかになろうとしている。
 報道では、盛り土の件については3知事、石原、猪瀬、舛添に伝えていなかったといわれるが、舛添はともかく、石原、その下にいた猪瀬が知らなかったというのは、私には納得できない。
 その後、石原は、当時、自分からそう言ったと認めた。
 『文春』によると、盛り土中止を決めたのは、

 「築地移転問題のトップは、局長級ポストの中央卸売市場長です。〇八年十一月時点ですでに空洞案が検討されていました。その後、一一年三月、都は日建設計と新市場の基本設計について業務委託契約を結びました。この契約書を決済したのは、現場責任者の部長級職員です」(都庁幹部)

 当時、日建と契約を結んだ現場責任者の上司であった市場長の岡田至氏は、「豊洲移転が最適」だと都議会でも答弁し、盛り土より空洞のほうが、後々地下水が上がってきてもすぐ乾燥してより安全だと話していたと、『文春』が報じている。
 少なくとも現場は盛り土をしていないことを知っていた。だがそれを上に上げずに豊洲移転を強引に推し進め、その裏では内田氏たちが利権漁りに奔走し、ゼネコンが御礼にとカネを渡していたという「構図」になりそうだ。
 五輪にまつわる癒着構造も、豊洲移転の利権構造も、根は同じようなものである。経緯、カネの流れの透明化を小池都知事はどこまで解明できるか。闇は暗く深い。議会が始まれば小池都知事に対する反撃も苛烈を極めるかもしれない。
 都民の支持を背景に、小池都知事の蛮勇を期待したい。

 と言っていたところ、早くも『新潮』が小池の金庫番が特権的地位を利用して「錬金術」に手を染めていたと報じている。
 これを為にする報道だとは言わないが、この構図、私のようなぼんくら頭では、なかなか理解できないので、興味のある方は『新潮』を買って熟読してもらいたい。
 要約すると、小池氏の側近に水田昌宏氏という人間がいる。年齢は40代前半。小池が環境大臣をしていたときに大臣政務秘書官になり、一時期公設第二秘書だったこともある。 私も水田の「秘書」と肩書きがついた名刺を持っている。
 小池の政治資金管理団体の14年分までの会計責任者でもある。今回の都知事選の選挙運動費用収支報告書の出納責任者は、水田の妻の名前になっているという。
 その上、小池の自宅の土地2分の1、建物の5分の1は水田と共有で、水田は家族と小池と同居しているというのである。
 こうした前提があって本題はこうだ。水田がマンション経営をやろうと言い出し、群馬県の高崎でマンションを建てたのだが、その土地は穴吹興産というところが所有していて、普通の人間が手を出せる土地ではなかった。穴吹と水田が「『深い関係』にあったことの何よりの証拠だろう」と『新潮』は書いている。
 そこを手に入れ、マンション建設が始まろうという時期に、小池の資金管理団体に施工業者が100万円寄付している。
 この土地には群馬銀行が4億1500万円の抵当権をつけている。もしこれをフルローンで建てたとしても、マンションを貸すとすると、一銭も遣わずに、『新潮』の計算によれば、毎月相当のカネが“濡れ手で粟”で入ってくることになるという。
 さらに不可解なのは、都知事選の結果が出た翌日、このマンションを含む小池、水田が関係する3つの物件に、共同担保としてみずほ銀行(みずほは都の指定銀行)が根抵当権3億3000万円を設定しているのだが、この設定日と同日に、自宅もマンションの根抵当権も解除されていることだ。
 「何かよほどのことがあった」(現役銀行マン)のではないか。どちらにしても共同物件に根抵当権を設定するには双方の承諾が必要だそうだ。そして根抵当権が設定される前に、水田は会計責任者を辞め、8月時点では秘書でもなくなっていたのだ。
 小池は『新潮』の取材に「水田昌宏氏の私事」と回答したというが、一連の不可解な物とカネの動きは、『新潮』の言うとおり、小池に説明責任があるだろう。
 自らと、親密だった秘書が関わった疑惑の情報公開を至急やるべきである。そうしないと、次々にスキャンダルが反小池派から流されること間違いない。小池とて、叩けばホコリは出てくるはずだ。そうさせないためにも疑惑は丁寧に説明して火は小さいうちに消しておくことだ。

 第2位。俳優・高畑裕太が強姦致傷容疑で逮捕されたのが8月23日。逮捕早々、裕太は「欲求を抑えきれなかった」と告白したなど、罪を認めているかのような報道があり、芸能界追放はもちろんのこと、下手をすると懲役5年以上の実刑判決が出るかもしれないと言われていた。
 ところが9月9日に突然、不起訴&釈放となったのだ。17日ぶりにシャバに出てきた裕太は、「ご迷惑をおかけして本当に申しわけありません」と大声で報道陣の前で頭を下げたが、報道陣やテレビを見ているわれわれを睨むような表情が印象的だった。
 異例なのはその日、無罪請負人といわれる弘中惇一郞弁護士事務所が、不起訴に至った経緯を説明する文書を発表したことである。
 そこで、裕太からの話は繰り返し聞いたが、他の関係者の話は聞けていないので、事実関係は解明できていないが、裕太は合意があるものと思っていた、逮捕時の報道にあるような「部屋に歯ブラシを持ってきて」などと呼び出し、引きずり込んだという事実はなかったとして、起訴・裁判になっていれば、無罪を主張した事件だったと言っている。
 『文春』、『新潮』はともに、示談が成立したし、被害者の傷も軽傷のため「致傷」で起訴するのは難しくなった(致傷の場合は本人の親告がなくても起訴できる)と検察が判断したのではないかという見方をとっている。
 だが釈放後、裕太がいた事務所は、彼を解雇している。
 『新潮』でフラクタル法律事務所の田村勇人弁護士はこう言う。

 「無罪主張と示談は相反するものです。冤罪と考えているなら、そもそも示談するべきではない。一般人であれば200万~300万円の示談金も、彼のような有名人になると2000万円は下らないと思います」

 『文春』でも刑事事件に詳しい弁護士が、「声明にある高畑さん側の主張が事実であれば、美人局の被害にあったようなものです。虚偽告訴罪の告訴、捜査機関への損害賠償請求もするべきなのに、それをなぜしないのでしょうか」と疑問を呈している。
 釈放されても万々歳とはいかないようである。
 『フライデー』は、被害にあった40代の女性が当日の朝、相談した男がいた。その男が彼女に医師の診断書をとらせ、警察に通報したのだが、その男は「指定暴力団の関係者であることが判明した」と、“裕太の知人”が語っていると報じている。
 被害女性は、裕太が来たとき、「ファンなんです」と言い、その夜は、裕太は供述書で「二人でエレベーターに乗って部屋に向かった」と言っているという。
 そうであれば、事件後も部屋で寝ていて、警察に踏み込まれるまで知らなかったというのは、彼にその意識がなかった可能性が高いと、『フライデー』は書いている。
 件の被害女性の知人は、示談交渉でも大きな役割を果たしたという。彼は地元でも、指定暴力団の関係者として知られた存在であるとも書いているが、裕太の知人の話でまとめているので、裕太サイドに同情的で、罠にはめられたのではないかというニュアンスが読み取れる。
 この藪の中に分け入ってさらなる真相を探ろうとしたのは、男性誌ではなく『女性セブン』である。
 『セブン』は「レイプをしても、カネさえ積めば許される」ことになると批判し、「裕太が本当に凶悪事件を起こしたのなら、相応の罰を受けるべき」だとし、先の弁護士の文書は「『セカンドレイプではないか』との批判も上がっている」と手厳しい。
 それに「合意」があったなら、裕太が社会的な制裁を受ける必要はないはず。だから、この事件を曖昧なまま終わらせてはならないと、現地取材を試みるのである。
 件の女性は橋本マナミに似た、はきはき喋る美人だという。当夜、裕太が女性を引きずり込んだと言われるが、隣の部屋にいた撮影スタッフは「争う物音はまったくしなかった」と話している。『セブン』の記者も泊まって、「壁は決して厚いとはいえず、隣の部屋のテレビの音が聞こえるほどだった」としている。
 こうしたディテールが大事なんだ。
 それでも、裕太の暴力に恐怖し、声も出せなかったという可能性は残る。
 警察が連行し、弁護士が接見する前に供述調書を取っておくというのは警察としては常道だったと見る。だが、当人が芸能人ということで「手柄」になると、功を焦った面もあるのではないかとも見ている。
 寝起きを襲われ、それほどの重大事件だとは思わず、容疑を認める発言をしてしまった可能性はある。
 なぜ彼女は警察ではなく、知人男性に連絡したのか? その男の年齢は60代で、土木関係の仕事をしており、女性が襲われたときのトラブルの対処法をよく知っている人だと地元の人間が話しているが、どんな人間なのか? ともあれ彼女から相当な信頼があったことは間違いない。
 事件発生から1時間で警察に通報。それまでに医師の診断書が揃っていたというから、見事な早業である。
 示談はしたとしても、なぜ裕太サイドの「無罪」主張を許しているのか? 今回の場合は、裕太側が犯罪事実は認めないが遺憾の意を表明するためにカネを払ったというケースではないかというのだ。それでも「裕太が“強姦していない”と主張することを許していることには、違和感を覚えます」(社会部記者)
 豪腕弁護士が、示談金で相手を黙らせ、示談が成立したのだから「致傷」で公判維持は難しいですよと、水面下で検察サイドに伝えて、不起訴にさせたのではないかというのが、『セブン』の読みのようだ。
 件の彼女は、10日後に開かれたパーティーに参加して、記念撮影では「イェーイ」とピースサインを出していたそうだ。その写真を見た記者は、

 「赤と黒を配したノースリーブのドレス姿の彼女は、なるほど30代にしか見えない美しい女性だった」

 女性誌の取材力畏るべしである。男性週刊誌は恥ずかしい。

 第1位。以前にも書いたが、今年は後年「ゲス不倫」の年として人びとの記憶に強く残るだろう。『文春』がまたやってくれた。
 今回『文春』の餌食になったのは歌舞伎界の大名跡八代目中村芝翫(しかん)を襲名する中村橋之助(51)である。
 橋之助の女房は元タレントの三田寬子(50)。2人には3人の子どもがあり、おしどり夫婦としても知られる。
 橋之助の不倫相手は京都先斗町(ぽんとちょう)の三十代の人気芸妓・市さよ
 『文春』によると2人の仲は以前からで、知る人ぞ知る関係だったようだ。『文春』がターゲットを定めて狙っていたのは、2人を撮ったグラビアのアングルからもわかる。
 8月29日に浅草寺で「お練り」があって、そこには三田も一緒にいたのだが、その橋之助を少し離れてジッと切なさそうに見つめる市さよが写っているカットは、映画の一シーンのようである。
 その日の深夜、彼女と落ち合った橋之助は、食事をそそくさと済ませ彼女の泊まっているホテルオークラへと消えていったという。
 しかし、小一時間もすると橋之助はホテルを出て、女房の待つ自宅へと帰ったそうだ。浮気はするがカミさんには知られたくない。わかるな~その気持ち。
 2人は時に週3回も逢瀬を重ねていたそうだ。
 市さよは小柄で器量よし。お座敷での評判もよく、新聞、雑誌や本をよく読む勉強家でもあるという。最近は芸舞妓の世界を代表してCMやバラエティにも出演している。
 彼女をお座敷に呼びたいと思っても1か月待ちだという。
 こう書いてくると、郷ひろみや作家の伊集院静、俳優の高橋克典らと浮名を流した元京都祇園の芸妓・佳つ乃を思い出させる。
 歌舞伎役者と芸妓の逢い引きなんて、いいな~と思うが、現代では『文春』が許しません
直撃を受けた橋之助は、「女房にどうやって伝えればいいのやら……」と呟いたそうだ。
 その女房殿、三田はどう答えるのか。亭主からすでに告白されていて「ここ数日寝るに寝られない」と言いながら、気丈にこう答えている。

 「私は主人を信じることにしましたので、具体的に何時にどこでどうとか野暮なことは聞きませんでした。ただ、こんな大事な襲名前に誤解を招くような行動をとって人様にご迷惑をおかけしたということをお詫びしたいと思います」

 亭主にはギャーギャー言わずに淡々と叱ったら、「わかります。申し訳ない」と平謝りだったという。

 「歌舞伎の“芸”の話ではなく、人として、役者として、旦那様として、父親として責任があります。文春さんがこうして来られたのも、神様が主人のために必要だと思ったのでしょう。自覚を持つようにと。真摯に受け止めなさいと」

 その言やよし。いや~いい女房殿である。しかし、2人きりになったら怖そ~。
 だけど男でも女でも、道ならぬ恋って燃えるんだよな。フジテレビの『ザ・ノンフィクション』(日曜日放送)のスタッフの皆さん、この3人のこれからを追いかけてもらえないかな。別に忍び会っているところが撮れなくても、三者三様、おもしろいドキュメンタリーになると思うのだが。
 雑誌で不倫を公表された男女、夫婦がその後どうなったのか。当然だが、あまりハッピーな人はいないようだ。
 ゲス不倫の元祖・ベッキーは別れたし、「五体不満足」の乙武洋匡(おとたけ・ひろただ)(40)も、ついに仁美夫人と離婚したことを発表した。子どもの親権は夫人が持つという。
 三田・橋之助夫婦はどうなるのだろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 これは「おじいちゃん」をめぐるちょっといい話だ。舞台は東京都北区の街角にある中村印刷所。家族で営む小さな印刷所で、その社長・中村輝雄さんは70代前半である。

 数年前、中村社長は近所で製本業をたたんだばかりの男性と「新商品」の開発を始めた。それが開いても中心の「ノド」の部分が膨らまない方眼ノートだった。開いても水平となることで、ページをまたいで書くことが容易となり、コピーやスキャンをしてもノドの黒い影が出ない。デジタル時代においても使い勝手がよく、様々な分野で活用が考えられる。……これは、その良さが理解されてからの紹介。この技術は「ナカムラ・プリンティング・バインダー」から「ナカプリバイン」と命名され、東京都トライアル発注制度の認定商品にまでなったが、当初はまったく売れなかった。

 中村社長のパートナーの元製本業の男性はさらに高齢で、現在は80歳。その「おじいちゃん」は、よかったら友人にでもあげてくれ、と失意の中で孫娘にノートを渡した。若い孫は、少しは宣伝になるかという軽い気持ちで、ノートに関してツイートを残した。

 ここから快進撃が始まった。またたく間に「こんな使えそうな商品が埋もれているなんて!」と情報が拡散。売れに売れて、町の印刷所は大わらわとなった。そうこうするうちに、「ジャポニカ学習帳」でおなじみのショウワノートとの提携が決まって、現在に至る。日の目を見るべき商品が、優しい孫のツイッターから本当に日の目を見た。これはじつに痛快な話ではないか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 これまで利用できる人が限られていた個人型の「確定拠出年金」が、来年(2017年)1月から誰でも利用できるようになる。掛け金の全額が所得控除できたり、運用益が非課税になったりするなど、税制上有利な制度ではあるが、思わぬ落とし穴もある。

 毎年、一定額のお金を継続的に受け取る「年金」を大きく分けると、(1)法律で加入が義務付けられた「公的年金」、(2)個人や会社単位で任意に加入する「私的年金」がある。

 公的年金は、すべての国民を対象にした「国民年金(基礎年金)」に加えて、会社員は「厚生年金」が上乗せされる。

 私的年金は、個人や会社単位で任意に加入するもので、加入するかどうかは自由。個別に民間の生命保険などで加入するのが「個人年金保険」で、これを会社単位に広げたものが「企業年金」だ。

 企業年金には、いくつかの種類があるが、2001年に導入されてから、徐々に利用者が増えてきているのが「確定拠出年金」だ。

 年金のために拠出する掛け金の額だけが決まっていて、運用先を投資信託にするか、定期預金にするかなどは自分で選び、将来受け取る年金額は運用成績によって変動する。

 確定拠出年金には、「企業型」と「個人型」があり、これまでは、会社員で利用できるのは、勤務先に制度のある人だけ。個人型は自営業者や勤務先に企業年金の制度がない人を対象としており、誰でも利用できるわけではなかったのだ。

 それが法改正され、2017年1月からは勤務先に確定拠出年金の企業年金制度がない会社員、専業主婦なども個人型の確定拠出年金を利用できるようになる。

 確定拠出年金が注目を浴びる背景にあるのは、節税効果だ。個人型の確定拠出年金の掛け金の上限は、自営業者は月6万8000円(年81万6000円)、会社員、専業主婦等は2万3000円(年27万6000円)と決まっている。この掛け金は、全額が所得控除されるので、所得税や住民税が軽減されるのだ。

 運用期間中に、値上がりして利益が出たり、分配金を受け取ったりした場合は非課税。将来受け取るときも、老齢給付金を一時金として受け取る場合は退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金等控除などの優遇策が設けられているので、引き出すときもほとんど税金はかからない。ただし、原則60歳まで引き出すことはできない。

 収入のない専業主婦には、所得控除のメリットはないが、運用中や年金受け取り時の節税効果だけでも他の金融商品に比べると有利になると言われているのだ。

 このように税制優遇面でのメリットが取り上げられるが、加入時や毎月の口座管理費などの各種手数料は年間2000~7000円程度かかる。掛け金が少ない人や所得が少なくてそもそも納税額が低い人は、節税効果を実感できないこともある。

 また、企業型の確定拠出年金で、従業員の給与から掛け金を差し引く「選択制」という制度を利用している会社は要注意だ。

 本来、企業型の確定拠出年金は、企業が掛け金を負担するが、「選択制」を導入していると、(1)加入する場合は、給与の一部を減額して掛け金を捻出する、(2)加入しない場合は、その分を給与や賞与として受け取る、といった方法が取られている。

 選択制の確定拠出年金に加入すると、給与から掛け金が差し引かれるので、その分、毎月支払う税金や社会保険料の負担は軽くなる。だが、給与が下がると、厚生年金や健康保険の保険料を決める標準報酬月額の等級も下がるので、将来受け取る厚生年金や健康保険の傷病手当金の額なども減額される可能性もある。影響はこれだけではなく、雇用保険からもらえる失業給付、育児休業給付などにも及ぶ。

 目先の負担は軽くなっても、万一の病気や事故のときに受けられる給付、老後の年金が減額されてしまうのは心配だ。

 人生に必要なお金は、老後資金だけではない。住宅ローンがある人は、その分のお金を返済に回したほうが、家計の負担を減らせることもある。いくら税制優遇を受けられるからといって、確定拠出年金にお金を回しすぎて、借金しないと生活できないようになっては元も子もない。

 今の家計に必要なお金を見極めて、バランスよく利用して上手に老後資金作りをするようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 リオ五輪とリオパラリンピックの興奮がさめやらぬなかだが、今年はまだ新しい時代の幕開けを思わせるイベントが残っている。その名も「サイバスロン(Cybathlon)」なるスポーツ競技会だ。からだの不自由なアスリートたちが、最新のテクノロジーを駆使した義手・義足などの補装具、あるいは電動車イスとのコンビネーションで様々な種目に挑戦するというもの。2016年10月8日から、スイス国立コンピテンスセンター・ロボティクス研究所の主催で行なわれる予定である。

 SF作品にはよくロボットのような「パワードスーツ」が登場するが、これはすでに現実化した技術で、パワード義手などとともに今回の種目の中に取り入れられる。門外漢にしてみれば、すごい世の中になったと感嘆するほかない。だが実際のところ、日常生活レベルではまだまだ開発途上だ。たとえば、走る・つかむといった最低限の行動には有用でも、針の穴に糸を通すような繊細な作業は難しい。サイバスロンには世界の研究者たちが競い合い、技術を一歩でも二歩でも前進させようという意図がある。

 光と音による演出もなされるというから、日本でも映像として見られる機会があることを期待したい。ネット上では、脳波をコントロールして車や馬を動かすレースなどに対し、ゲーム世代も興味津々のようである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 2016年9月、政府税制調査会が2017年度の税制改正論議をスタートさせた。改正の目玉は、「夫婦控除」。政府が、従来の「配偶者控除」に代わって、新たに導入を目指している新制度である。

 そもそも配偶者控除とは、配偶者(妻)が家事専業や年収103万円以下の場合、世帯主(夫)の課税所得を一律38万円減らす制度だ。要は、専業主婦がいる家計の税負担を軽くするものだ。

 そのため、パートの主婦らが、パート収入を103万円以下に抑える「103万円の壁」が問題となり、それが、「女性の社会進出」を阻む壁にもなっているという。

 「働き方改革」を旗印に掲げる安倍政権は、「アベノミクス」を再興させるためには、「女性の労働力アップが不可欠」との判断から、配偶者控除の廃止が喫緊の課題だとする立場だ。そして、その代替制度として浮上したのが、夫婦控除というわけである。

 夫婦控除は、簡単に言えば、夫婦であれば、年収や働き方を問わず、誰でも控除が受けられる制度。政府は、「導入が実現されれば、女性の社会進出が促進され、国内の労働力が増大する。経済発展をもたらす」とそろばんをはじく。

 ただ、専業主婦が減ることで、「伝統的な日本の家族像が崩れる」との懸念が保守層の間で強固に存在しているのも事実。また、内縁関係にある「夫婦」や「同性婚カップル」の扱いをどうするかの課題も整理する必要がある。

 導入に際しては、丁寧な議論が必要だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「関西人あるある!」のなかで、もっとも定番の一つとされている「お好み焼き定食」。念のため説明すると「お好み焼きをオカズにして米を食べる」といった、関西人からすれば「全然普通やん!」と言わずにはいられない日常的慣習だが、そのお膝元(?)である大阪府が今年8月、「太っている人はやせ型の人よりも『お好み焼き+ごはん』など主食の重ね食べをしている」という、府民の食状況を調査した「大阪版・栄養調査」の結果を発表し、一部の関西人から「そんなん、余計なお世話じゃ!」と反感の声が飛んでいる、らしい。

 「お好み焼き定食」以外にも「うどん+かやくごはん」「ラーメン+チャーハン」……ほか、「2種類の主食の重ね食べを週1回以上している人」の割合を肥満度(BMI)別に見ると、肥満(BMIが25.0以上)男性は70.7%と、やせ型男性(BMIが18.5未満)の53.5%、普通体重男性(BMIが18.5%以上、25.0%未満)の58.6%を上回っていたのだという。

 たしかに、「ラーメン&チャーハンセット」だとか「カツ丼&盛りそばセット」だとかを思わず注文してしまった場合、筆者もその日は「やらかしちゃった感」に苛まれたりもする……けれど、「お好み焼き定食」に関しては、そういう“後悔の念”が、不思議なことにあまりよぎらない。おそらくその理由は、お好み焼きにはキャベツやら豚肉やら紅ショウガやらネギやらの具材がタップリ入っており、「小麦粉が混じったオカズ」だと解釈しているから、なのではなかろうか? 結局、太りやすいことに変わりはないのだが……(笑)?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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