梵鐘とは、仏寺の鐘楼に吊された鐘で、ときを知らせ、集会の合図として人を集めるために撞き鳴らされてきた。インドの仏寺で用いた打楽器と中国の銅鐘(どうしょう)が原点で、中国から朝鮮を経て日本に伝えられた。日本に現存する最古の鐘は575(太建7)年の銘がある中国の鐘(奈良国立博物館所蔵)だ。日本でつくられた和鐘で現存最古のものは、698(文武2)年に鋳造された銅製の梵鐘で、妙心寺(右京区)に所蔵されている。現在は1974(昭和49)年に複製した梵鐘が実際に用いられているが、その原型となった梵鐘は、黄鐘(おうしき)調の素晴らしい音色を響かせたといわれている。

 京都には多くの名鐘がある。なかでも有名な梵鐘は、知恩院(東山区)の大鐘だろう。高さ3.3メートル、最大直径2.7メートル、重さ70トンで、厚みが30センチもあり、戦時中には、大きすぎて運び出せずに供出を免れた、といういわれがある。除夜の鐘では、僧侶が倒れ込みながら大綱を全身で引き、その動きに合わせた16人もの僧侶が、「エーイ、ヒトツ」と掛け声をかけて小綱を引き、鐘を撞く。その様子は行く年に欠かせない風物詩になっている。

 また、「日本一重い」という方広寺(東山区)の大鐘は、「大坂冬の陣」で開戦の口実とされたいわくつきの鐘だ。前述した知恩院のものとともに「日本三大梵鐘」に数えられる(あとの一つは東大寺の鐘)。ほかにも、姿が美しいとされる日本三名鐘の一つ平等院の梵鐘や、安珍と清姫の伝説で知られる妙満寺(左京区)の梵鐘などが有名で、京都には平安期から近世初期までに鋳造された梵鐘が、おそらく32体残されているといわれる。

 さて、妙心寺所蔵の和鐘は奈良時代になろうとする時代につくられたものであるが、平安京における梵鐘の音は、物質、方位、季節、色彩との関係性の中で捉えられ、調音されていたという説がある。わかりやすくいうと、東を表す「双調(そうぢょう)」の音色は、青々とした若葉が萌える春のはつらつとした音であり、西を表す「平調(ひょうぢょう)」は、「深まる秋のもの悲しい音」といった風である。現在も遺されている梵鐘の調査で断言することは難しいそうだが、平安期には、各方面にある寺院の梵鐘がそれぞれの音高に調律され、ときを告げていた可能性があるという。

 千数百年前の大晦日には、梵鐘の音色がどのように重なり調和して、夜空に響いていたことだろう。

参考:『平安京 音の宇宙』(平凡社)中川真著



知恩院・大鐘楼の除夜の鐘。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチンは第4代ロシア連邦大統領。ロシア・サンクトペテルブルク(旧レニングラード)生まれ、64歳。

 2016年12月15日に来日して、安倍首相の郷里である山口県の旅館で首脳会談をした。だが、約束の時間に2時間半も遅刻し、期待された北方領土問題には何ら進展はなく、翌日は柔道の聖地「講道館」を見学して早々に帰国してしまった。

 今年は日ソ共同宣言と日本の国連加盟から60年、安倍首相の父親・安倍晋太郎が亡くなってから25年と、節目の年に何とか成果を出したかった安倍首相だが、プーチンからは「領土問題は全くない」と相手にされなかったのである。

 このプーチンの訪日をメディアは「日ロ首脳会談 あまりに大きな隔たり」(朝日新聞)、「進展見られず」(読売新聞)、「『引き分け』より後退か」(産経新聞)と酷評した。

 『週刊新潮』(12/29・1/5号、以下『新潮』)で北大名誉教授の木村汎(ひろし)氏がこう言っている。

 「日本にとって99%敗北。元島民の北方領土への自由訪問が広がりそうなことだけは1%分評価できます」

 また、『新潮』によれば、唯一の成果といわれる「北方4島に日本企業も進出できるようになる、共同経済活動案」にも乗り越えるには厳しすぎる障壁があるとしている。

 現在北方4島には約1万7000人のロシア人が居住しているというが、ロシア極東事情に詳しいジャーナリストはこう話す。

 「ウラジオストクから運ばれてくる麻薬が蔓延しています。ロシア本土より監視の目が緩いことから格好の取引場所となっており、密売人たちに重宝がられているためです。また、択捉(えとろふ)島にあるロシア軍基地から横流しされた武器を市民が所有していて、それを使っての犯罪も横行。道路事情も悪く、悲惨な交通事故が地元紙の紙面をよく飾っています。警察などの役人たちの間では、横領や賄賂が常習化しています」

 こうした治安の悪さとともに、日ロ双方が主権を訴えている北方4島では、もし日本人が罪を犯した場合、どちらの法律で裁くのかなどの難しさもある。

 プーチンの好きな柔道には「柔よく剛を制す」という言葉があるが、今回は剛の前に軟弱な安倍があえなく投げ飛ばされたということである。

 だが、安倍首相は投げ飛ばされただけではなく、プーチンにとんでもないお土産まで貢いだと『週刊現代』(12/31・1/7号)は報じている。

 「安倍晋三首相は、北方領土の共同経済活動という名のもとで、カジノ建設を狙っています。それをトップ同士で詰めることが、プーチン大統領をわざわざ故郷・山口まで招待した大きな目的の一つだったと思われます」(中村逸郎筑波大学教授)

 中村教授が言うには、トランプとプーチンの共通の友人の一人がロシア人のヴェルホフスキー上院議員で「北方領土の帝王」という異名を持っているという。

 その人間が抱いている野望が「北方領土にカジノ建設」だそうなのだ。

 『新潮』(12/22号)は、安倍首相がカジノ法案を急いだわけは、カジノ経営のノウハウを持っているトランプへの配慮があり、カジノをつくってトランプ大統領にお越しいただくというシナリオを描いているのではないかと報じている。

 安倍の北方領土で共同経済活動をという構想に、メガバンクや日本企業は積極的ではない。

 そこでカジノをつくって共同経営すれば、プーチンもトランプも歓んでくれるという浅知恵を思いついたのであろうか。

 それなら、わずか審議6時間という短さであわててカジノ法案を通した安倍の「意図」についての説明がつく。

 プーチン訪日までに何としてでも法案を通してプーチンの歓心を買いたかった。もしそうだとしたら安倍というのは、ひたすら情けない男である。

 では、プーチンという男はどういう人間なのだろうか。

 『ニューズウィーク日本版』(12/20号、以下『ニューズ』)の「世界を手玉に取るプーチンの本心」に詳しい。

 『ニューズ』によれば、プーチンはソ連時代の諜報機関で、プーチンの出身母体でもあるKGBの復活を狙っているという。彼の領土拡張に対する野心は「ロシアの国境に終わりはない」というものだそうだ。

 北方領土は「大祖国戦争(プーチンは第二次大戦をこう呼ぶ)におけるロシアの勝利を象徴する重要な一部」だと考えているから、北方4島を返すつもりなどさらさらなく、目的は日本から資金を絞り出すことにある。

 そのためには日本が中国に抱いている恐怖心を利用できると公言している。

 アメリカ大統領選にトランプが勝利したことはプーチンにとって千載一遇のチャンスだと考えているはずだと、プーチン戦略について書いている。

 ロシアがウクライナ南部クリミア半島の一方的併合をしたことに対して、欧米が行なった金融制裁はロシア経済に確実にダメージを与えたが、ロシアの人びとはプーチンに不満を言うどころか、「プーチンが事実上の権力を握った99年からの10年で、実質所得(インフレ調整済み)が倍増したことを感謝している」というのである。

 中でも読みどころはプーチンの日常を描いた特集。朝起きて朝食を取るのは正午を少し回ってから。側近たちが待機しているのにもお構いなく、プールで2時間ほど泳ぐ。愛読するのは歴史書。

 執務室では情報漏れが心配なためコンピューターは滅多に使わない。ドイツ語が堪能で、外国メディアが彼を悪者扱いしていても知りたがる。ネットに拡散している彼の風刺ビデオも見ているという。

 住まいはモスクワの郊外で一人暮らし。両親はすでに死去し、妻は精神疾患を患い長い別居の末に離婚。2人の娘の存在は国家機密だが、政治には関わっていないそうだ。

 専用機は3機。どこへ行くにもコックと安全な食材を持って行き、「たとえ国家元首が用意した食材でも、決して口にしない。クレムリンの検査を通ったものでない限り、外国産の食材は食べないのが決まりだ」という。

 安倍首相が地元の旅館で用意したもてなし料理を食べたとすれば、プーチンが安倍に心を許したということになるのかもしれないが、どのテレビ局も新聞も、安倍とプーチンがどんな料理を食べたのか、酒は何を飲んだのかを報じているところはないようだ。

 子どもの頃は「ワル」でならし、みんなが宇宙飛行士になりたかった時代にKGBに入ることを夢見ていた。ソ連崩壊後、わずか10年でロシアの主にのぼり詰めたが、その間何をしていたのかは全く不明。

 そんな鋼のような肉体と冷徹な心臓を持った全身KGB男と、三代続いた政治家のボンボンである安倍首相などが太刀打ちできるわけはない。

 2017年は、プーチンと商売のためなら手段を選ばないトランプ、あわよくばロシアと組んでアメリカをひねり潰そうと虎視眈々と狙う習近平に囲まれて、安倍外交は嵐の前の小舟のように心許ない舵取りをすることになるはずである。日本沈没はあり得る。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 日本のテレビがジャ-ナリズムだと思う人はほとんどいないだろうが、広告の落ち込みで、企業から広告費をもらいながらそれを隠し、局の独自取材と見せかけるステルスマーケティング、略してステマ番組が横行しているようだ。
 雑誌でもときどき、そのページが広告だと明記しない特集を作って読者を騙すということが表沙汰になるから、どっちもどっちもではあるが。あれだけの原発事故を起こしながら、原発はクリーン、原発を再稼働させなくてはエネルギーが足りないと、電力会社が膨大な広告費で電通を使って、識者にテレビでいわせるのもステマ番組であるはずだ。そうしてみるとほとんどの番組がステマか?

第1位 「明治『R-1ヨーグルト』とテレビ局の裏金『ステマ番組』」(『週刊新潮』12/22号)
第2位 「漢方大手『ツムラ』が売る『社員に飲ませられない生薬』」(『週刊新潮』12/22号)
第3位 「ビールを飲んで認知症を予防しよう!」(『週刊文春』12/22号)

 第3位。私も家人も、この頃自分が認知症ではないかと思うことがたびたびある。年だからと諦めてはいるが、『文春』はビールが認知症予防になると報じている。
 もはや遅いとは思うが読んでみた。
 何でもビールの苦みになっているホップに含まれるイソα酸という成分が有効だというのだ。
 アルツハイマー型認知症は大脳皮質に異常なタンパク質が沈着してできるらしいが、脳内に溜まったこの悪い物質を包み込み消化してくれる免疫細胞を、イソα酸が活性化させるそうだ。
 50歳から70歳の男女25名に1日グラス一杯のノンアルコールビールを4週間飲み続けてもらったら、6割の人に脳活動の上昇を示唆する結果が得られたという。
 これは東京大学と学習院大学の共同研究で、発表したのがビールメーカーのキリンというところがやや引っかかるが、トリスならぬビールを飲んでハワイへ行こうではなく、ビールを飲んで認知症よさようなら、となれば、嬉しい話である。
 だが、飲みすぎてはいけないし、イソα酸を多量に入れてしまうと苦すぎて飲めないようだ。早く何とかしてくれないかね、キリンさん。

 第2位。ツムラという漢方薬大手がある。かつては入浴剤のバスクリンで当てたが、多角経営や創業者一族の元社長による特別背任事件によって倒産寸前までいった。だが、漢方薬に特化した製薬会社として再出発し、昨年度の売上高1126億円を誇るという大復活を遂げている。私もここの「葛根湯(かっこんとう)」は風邪の引き始めに効くと愛飲している。
 『新潮』は今年7月に役員会議で配られた内部文書を入手したという。
 その文書は、中国産の生薬原料からツムラが使用許可を出していない農薬が検出されたため、再発防止を図るために今後どのような対策を取るべきかが書かれているという。
 ツムラのガイドラインには、栽培手順や使用許可農薬の徹底、万が一の時には医療機関から原料生薬生産地まで遡れる生薬トレーサビリティ体制、生産団体の監視も行なうという3本の柱があるという。
 だが、ツムラの幹部の話では、製造する漢方薬の原料は国内とラオスでもわずかに栽培されてはいるが、8割はあの中国で栽培されているというのである。

 「誰が作ったのかを把握している農民は全体の約55%で約1万人。つまり、残りの1万人の生産者は誰かも分からなければ、農民たちがどんな栽培を行っているかさえ、不明なのです」(ツムラの幹部)

 さらに衝撃的な一文が書かれていた。

 「自分の家族に飲ませることができる生薬を供給する」

 おいおい、それじゃツムラは自社の家族には飲ませられない薬を売っているのか?
 『新潮』が広報担当者を直撃すると、こう答えた。

 「この一文は、生産者としての意識向上、動機づけとしてのスローガンなのです」

 2015年に農薬の不適切な使用が発覚した際、中国の農民にどうすればわかってもらえるかと考え、この表現が家族を大事にする中国人が腑に落ちるということでつくった。したがって日本の社内向けではないというのだ。
 だが社の3本柱の重要な一つ、トレーサビリティが確立していなかったというのは、ツムラの信用を落とすのではないか。
 また、こうした内部文書がメディアに流れるというのは、社内で権力闘争が起こっている現れではないのだろうか。
 再び、昔のような不祥事が起これば、ツムラは二度と立ち直ることはできないだろう。

 第1位。ステマ番組とは、広告料金をもらいながら、それを隠して、あたかも独自で探し当てたような番組を作ることをいう。
 昨年9月に、TBS系列のローカル局「IBC岩手放送」が、明治から広告料金をもらってR-1乳酸菌がインフルエンザ予防に効くなどと放送し、番組審議会で問題になった。
 R-1乳酸菌といえば、私もときどき飲む明治のヨーグルトであるが、局の幹部が事実を認め、番組で用いた素材も明治から提供を受けたと“自白”したという。
 これは当然ながら放送法で禁じられているが、『新潮』が調べたR-1乳酸菌を扱い、明治の名前が出て来ない番組は、IBC放送後も全キー局にわたってあったそうである。
 私はあまり見ないが、テレビではコンビニやスーパーを取り上げ、そこで売っている商品を製造過程から事細かに紹介するような番組が多くある。
 ひな壇に並んだお笑い芸人たちが「メチャスゴ~イ」「おいしいそう」などと出来レースで驚いてみせるが、あのような番組もステマではないかと、私は睨んでいる。
 茶の間の視聴者も、漫然と見ているだけでなく、ステマかそうではないのか見分ける厳しい目を養うことが必要だろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 タイなどのエスニック料理に欠かせないパクチーは、好みが分かれる食材といっていいだろう。どうしても苦手な場合、もしかしたら味覚遺伝子によるものかもしれない。最近の研究で、独特の香りを「石鹸のようだ」と感じる遺伝子が判明したらしい。

 とはいえ、パクチー入りの料理をたいへん好む者も一方ではいる。都内では専門のレストランもオープンしており、ビジネス的に成立しているのだ。SNSなどで、毎日パクチーを食べていると表明する猛者も現れている。そんな「パクチー中毒」たちを、「パクチスト」と称するそうだ。おもに若者が多く、やはり高齢者ほど香りなどが苦手という意見は目立つ。これは遺伝子ではなく単純に食文化の慣れの問題だろう。生まれたときからパクチーがある世代は、独特の香りも受け入れやすいはずだ。

 なお、外食だけでなく家庭でもパクチーを楽しむことを「うちパク」というらしい。新語が次々と現れることは、ブームになっている証拠。この勢いで、日本におけるパクチーの存在感は増していきそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 11月1日、大手広告代理店の電通が、子育てサポート企業だと国が認めた「くるみんマーク」を返上した。

 「くるみんマーク」は、次世代育成支援対策推進法に基づき、2007年に始まった「子育てサポート企業」に認定された企業に付与される証だ。「くるみん」という愛称は、赤ちゃんを大事にくるむ(包む)イメージから発想された。

 認定を受けるためには、育児休業取得率の向上や残業時間の削減、フレックスタイム制や変形労働時間制の導入など、すべての従業員が子育てと仕事を両立できる雇用環境や労働条件を整える必要がある。その上で、企業が守るべき行動計画を公表。従業員にも周知し、都道府県の労働局に届け出ることが義務づけられている(従業員100人以下の企業は努力義務)。

 そして、行動計画で定めた目標を達成するなど、一定の要件を満たした企業が、都道府県の労働局に申請すると、厚生労働大臣から「子育てサポート企業」として認定される。

 認定を受けると、一定の税制優遇が受けられ、子育てに理解のある企業の証である「くるみんマーク」を表示できるため、2016年9月末時点で2657社が「くるみんマーク」の認定を受けている。

 電通は、2007年、2013年、2015年に「くるみんマーク」の認定を受けた。だが、先ごろの女性従業員の過労自殺は、明らかに労働基準法に抵触している。子育てサポート企業の認定基準には、「次世代法や労働基準法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などの関連法令に違反する重大な事実がないことが必要」と明記されており、電通が子育てサポート企業としての実態が伴っていないことが露呈。認定マークの返上に追い込まれた。

 だが、「くるみんマーク」の実態が伴っていないのは、電通だけなのか。2015年度の男性労働者の育児休業取得率は、わずか2.65%。労働時間の長さから復職をためらったり、待機児童問題から働きたくても働けない女性たちも数多くいる。今回の電通の過労自殺は、氷山の一角という見方もある。

 くるみんマークを取得した企業は、税制優遇を受けている。その社会的責任を果たすためにも、行動計画が計画倒れに終わらないように、本当の意味で子育てをサポートする企業であってほしい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 バブル期には太い眉(そう、お笑い芸人・平野ノラのアレだ)、1990年代には細眉のトレンドがあった。近年では多様化というか、メイクのブームや年齢に合わせて眉もイメチェンする向きが多くなった。そして2016年、芸能界を「あまりいじらない、もしくはそのまま」の「ネイティブ眉」が席巻し、それにあこがれる女子が増えているそうだ。

 広瀬すず、中村アン、有村架純(ありむら・かすみ)などはネイティブ眉の代表的な存在ととらえられているが、実際のところ彼女たちはネイティブ「風」といった太めの眉。ただ、平愛梨(たいら・あいり)の妹としても知られる平祐奈(たいら・ゆうな)など、ティーンのモデル・アイドルたちのあいだで本当に「いじりなし」の眉が注目されてもいる。最近は昭和のごとく「清純派」が好まれる流れがあって(これも男たちの勝手なレッテルなので困ったものだが)、ネイティブ眉はその象徴のように語られている。

 「清純」とはまた違ったニュアンスで、生まれたままの眉は「若さ」を強調するところもある。いまは眉を整えている石原さとみも、若いときにはネイティブ眉に合った役柄が多かった。貴重な少女の時代には、おとなのように背伸びをするよりも、何もしないほうが顔に合っているという場合がある。年齢相応の眉、それはまさに自然なことではないだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 高速道路といえば、その最高速度は現行で100キロ。警察庁は、これを条件付きで120キロに引き上げるという。引き上げは1963年に日本で初めて高速道路(名神道)が開通して以来初めてのことだ。ただ、大型トラックの最高速度については、現行の80キロに据え置く。

 とりあえずは、2017年にも2か所(岩手県の東北道、静岡県の新東名高速道路)で110キロで試行する。安全性などで問題がなければ、その後、他の高速道などにも順次対象区間を広げる。速度も120キロに引き上げていく。道幅や路肩が広く、カーブや勾配が少ないなどの区間が規制緩和の条件。具体的には、東北道、関越道、常磐道、新東名、東名、東関東道、九州道の一部区間が検討されているという。

 それにしても、なぜ最高速度を引き上げるのか。報道によると、大半の車が、実際に規制速度を超えて走っている実情を勘案したという。引き上げで、渋滞が緩和されるということはないとみられる。

 裏を返せば、取り締まりを強化し、120キロを少しでも超えれば、確実に摘発する可能性もある。

 いくら最高速度の限度が上がったとはいっても、スピードの出し過ぎは慎みたい。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 2016年11月30日、『めざましテレビ』(フジテレビ系列)内で発表された、渋谷・原宿の女子高生386人を対象に行なったアンケート結果からランキング化したピンポイント的流行語大賞のこと。今年のベストテンは以下のとおり。

1位:卍(まんじ)(写真を撮るポーズの掛け声・テンションが上がったとき・やんちゃな人のこと…などを指す)

2位:よき(「いいね」という意味。古典の授業から発生したのだそう?)

3位:○○まる
(「あざまる」「ラブまる」など「まる」は句点の「。」代わりとして使用。「OK。」より「おけまる」のほうが可愛い?)

4位:アモーレ(本家の新語・流行語大賞と意味は変わらないが、女子高生はおもに親友に向けて使用する…らしい)

5位:はげる(「毛が抜けそうなほど嬉しい」という意味。かなり意味不明)

6位:マ!?(「マジ!?」の省略形。「ジ」しか省略していないのだが…?)

7位:BFF(「Best Friend Forever」をDAIGO風にアレンジしたもの。「いつまでも友だちだよ」という意味)

8位:ゲロ○○(「超」に比較的似た接頭語のこと。「吐くほどすごい」という意味)

9位:スノる(顔認識アプリ『SNOW』を使って写真を撮ること)

10位:○○み(やばみ・きもみ…とすることによって語感が柔らかくなる)

 あくまで渋谷・原宿発であり、これらの最先端の難読文字を、全国の女子高生がナチュラルに使いこなしているかどうかは怪しかったりもするのだが、LINEやメールなどを最大限に有効利用する女子高生にとって、あらゆる言葉の暗号化は、文字変換の際の一手間を省くという面でも、案外合理的なのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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