早春の2月頃に小輪で一重の花を咲かせる。椿の近種とされているが、植物分類学上の位置づけは定かでない。その理由は自ら種子をつくらないことに由縁し、良木の接ぎ木によって増やされてきたためである。白と紅の交じった花を咲かせるものが「侘助」、紅一色は「紅侘助」、白一色を「白侘助」と呼び、この三品種がよく見られる。このほか薄紅色のものを中心に、「有楽(うらく)」、「数寄屋」、「昭和侘助」などの種類がある。

 お茶会で使われる花を「茶花(ちゃばな)」というが、寒い季節に華やかな椿はたいへん重宝され、「茶花の女王」という異名をもっている。その中でも「侘助」は「千利休好み」といわれる特別な存在で、その控えめな美しさから「わび」「さび」の世界を置き換えて表現することのできる花だとされている。

 大徳寺塔頭(たっちゅう)である総見院(北区)には、日本最古の「胡蝶侘助(侘助の品種)」で千利休遺愛とされる、樹齢400年の「侘助」が生き続けている。京都で見かける侘助の多くが、この老木より接がれ、数百年、数十年と育まれてきた分身である。

 「侘助」という名称は、いかにもこの老木の来歴と深く関わりがありそうだが、詳しくはわかっていない。総見院の寺伝によれば、豊臣秀吉が千利休に与えた(もしくは秀吉が利休から譲り受けたという説も)と記されているそうだが、一説に千利休の下僕で茶人の「侘助」という人物からもらったとも、加藤清正が朝鮮から持ち帰ったともいわれている。「侘び数寄」ということばが転訛したという説もある。どの発祥説も面白く、謎めいている。これほど風変わりな美しい花がほかにあるだろうか。


織田信長の弟で茶人の織田有楽斉にゆかりの品種「有楽」。東日本では「太郎冠者」と呼ばれることが多いそうだ。



白侘助。


京都の暮らしことば / 池仁太   



 清水富美加というタレントがいる。東京都出身の22歳。15年にNHKの朝ドラ『まれ』でヒロインの同級生役を好演して人気が出たという。

 その彼女が突然耳目を集めたのは、芸能界を引退して新興宗教「幸福の科学」に専念すると言い出したからだ。

 彼女の両親も信者だった。だが、数年前に離婚して2人の姉は母に付き、清水は父親と暮らしているそうだ。

 法名(宗教名)は「千眼美子(せんげん・よしこ)」というらしい。

 清水という女性に何の関心もないが、幸福の科学と聞くと、いささか私にも縁がある。といってもあまり愉快な縁ではないが、記憶を辿ってお話ししてみたい。

 幸福の科学と訴訟合戦になったのは、私が『フライデー』の編集長1年目だから、1991年の夏ごろである。

 統一教会などとは違って、緩やかなサークル活動のような団体で、大川隆法総裁が東大出ということも相まって、若い信者が増えていると言われていた。

 そこで『フライデー』でも、この教団のルーツや信者たちの声を取材して、連載することにした。

 大川総裁は大学を出て中堅商社へ入り、そこを退社した後、幸福の科学をつくった。

 第一回目は彼が商社を退社したときの経緯にもサラッと触れたが、大川としてはあまり触れてもらいたくない話だったようだ。

 『フライデー』が発売された翌週の月曜日、朝、講談社へ行くと、入り口からエレベーター前まで大勢の人で溢れ、口々に「フライデー編集長を出せ」「社長を出せ」と騒いでいるではないか。

 社屋に入ろうとすると総務の担当者が私のところへ来て、幸福の科学の信者達で、『フライデー』の記事が許せないと言っている。だから奥にあるエレベーターで上がってくれと言うのだ。

 私は、編集長に会いたいと言うのだから、私が出て話を聞こうじゃないかと言ったが、担当者から「気の短いお前が出ると挑発して、よけいに混乱するからやめてくれ」と懇願され、仕方なくその場を離れた。

 その日から、社内のすべてのFAXに信者達からの抗議文が48時間流れ続け、用紙をまとめてみたら重さは2トンにもなった。もちろん電話も全国からの信者達の抗議で使えなくなった。

 信者には女優の小川知子や直木賞作家の景山民夫らがいた。彼らが先導して、毎日のように講談社の前を「フライデー廃刊」「社長は辞めろ」とデモを繰り広げ、ワイドショーを始めテレビは連日、この話題で持ちきりだった。

 教団側は『フライデー』の記事が名誉棄損に当たると訴え、講談社側も名誉棄損してはいない、お前達のやっていることは業務妨害だとして訴えた。

 互いが告訴した件数を合わせると50件近くにもなった。最高裁まで争われたケースが多いが、そのほとんどは講談社側の勝訴で終わった

 当時、景山と親交があった立川談志や大橋巨泉が、オレが間をとるから景山と会って、話をしてみないかと言ってくれたりした。

 その最中に景山が、自宅で入浴しているときに火が出て焼け死ぬという不幸な“事故”が起き、私の編集者人生でも忘れられない“事件”の一つである。

 幸福の科学は、その後も、幸福実現党という政党をつくったり、自分の出版社から大川の本を次々に出しては信者に大量に買わせ、ベストセラーにするという手法で、信者数を増やしてきていると仄聞していた。

 今週は『週刊文春』(2/23号、以下『文春』)、『週刊新潮』(同、以下『新潮』)が、清水の件を詳しく報じている。

 両誌は、清水が辞めた理由は、信仰のこともあるが、憧れて入った芸能界が考えていたところとは違った、水着の仕事をさせられるのがとても嫌だったと教団側が言っていると報じている。

 清水には出演しているCMも何本かあり、撮り終えて、これから公開を予定されている映画も何本か控えているという。それらの違約金の問題もこれから出てくるのかもしれないが、疑問なのは、なぜこの時期なのかということである。

 『新潮』でジャーナリストの山田直樹が、教団側に事情があると語っている。それによると、ピーク時には信者会員数13万5000人といわれていたそうで、信者から集めるお布施は膨大で、そこから諸々引いても150億円程度は残り、そのカネで銀座や赤坂などの土地を買い漁ってきたという。

 だが09年に政党・幸福実現党をつくり、自民党より過激な右寄り路線をとることで信者離れが起きた。

 また10年に持ち上がった妻との離婚問題などでも、信者数が減り、お布施が激減したという。

 大川の長男は昨年から教団系の芸能プロ社長になっていて、現在は10人ほどのタレントや役者がいるそうだ。

 そこに清水を入れ、『新潮』によれば、「総裁は創価学会員である石原さとみの存在をかなり意識している」(元幹部信者)ので、清水を「幸福の科学のさとみ」にしたいという意向があるというのだ。

 要は、ベストセラー商法も信者数が減れば、これまでのようなやり方は難しくなってくる。政党のほうはいくらカネをつぎ込んでも国会議員ゼロでは、影響力を行使しようがない。そこで苦肉の策として、芸能界に進出して一儲けしようということのようである。

 『週刊ポスト』(3/3号)は芸能界と宗教の関係について触れて、芸能界にはさまざまな宗教を信じている人間がいる、宗教で差別をしてはならないと言っていて、その通りではある。

 だが今回のケースは、少し身勝手すぎるように思う。引退発言後、すぐに幸福の科学から告白本『全部、言っちゃうね。』を出すという手回しのよさも、顰蹙を買ったのであろう。

 本の中で、妻子持ちの人気ロックバンドのメンバーと「ゲス不倫」していたことも告白している。

 可哀相なのはその当人である。どうやらベッキーの不倫が大騒ぎになった頃、このままでは自分たちも文春砲に狙われると思い別れたようだが、今回、芸能メディアに追い回され、実名を明かされてしまったのである。

 その当人、KANA-BOON(カナブーン)の飯田祐馬(めしだ・ゆうま、26)が「心よりお詫び」というFAXをメディア各社に送った。

 そこで清水と既婚者であることを隠して交際していたことを認め、その後、清水に結婚していることを明かしたが、

 「妻との離婚をほのめかしつつ、2016年1月まで交際関係を続けてしまいました。
 このことで、清水さんや妻を傷付けてしまったのは事実であり、その事実に誠意を持って向き合い、深く反省しております」

 としている。だが、このことを妻にも話し、「妻と妻の両親に謝罪をし、夫婦間では解決しております」と書いている。

 飯田は自業自得だが、不倫するにも相手を選ばなければと思ったのは私だけだろうか。

 清水がどんな宗教を信じようといいが、自分勝手な振る舞いで、袖すり合った人やその周囲の人間を“不幸”にしてはならないこと、言うまでもない。

 幸福という大風呂敷を広げた団体名を名乗っている以上、その名に恥じない生き方を、総裁共々してほしいものである。

 清水の出家問題に関してダウンタウンの松本人志が「幸福を科学できていない」と言ったとか。この教団全体に当てはまる名言である。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 私だけではないかもしれないが、日本人は安いことはいいことだということに慣れ、モノの価値ということに鈍感になりすぎてはいないだろうか。
 それは、安倍首相の言う、だからインフレにするということではない。安いといっても程度があると言っているのである。今週とりあげたアマゾンの当日配送、配送料無料という“日常”に慣れすぎてしまっていて、物流を担っている人たちにそのしわ寄せが重くのしかかっていることに、思いを致すことがほとんどない。『現代』の記事は、そのことを改めて考えさせてくれた。

第1位 「~『NHKの大罪』スペシャル~『連続強姦記者』を野放しにしたNHK無責任上司」・「『私はNHK「受信料サギ」に手を染めた』 徴収員の告白」(『週刊文春』2/23号)
第2位 「トランプが進める金正恩政権『転覆計画』の全貌」(『週刊現代』3/4号)
第3位 「アマゾンとセブンイレブンとヤマトがなくなる!」(『週刊現代』3/4号)

 第3位。私はアマゾンのヘビーユーザーである。本やコピー用紙はもちろんのことコーヒーや果物、ティッシュやトイレットペーパーまでアマゾンから買っている。
 なぜか? 歩いてすぐのところにコンビニがある。駅の近くにはスーパーが2つある。
 そこで買えばいいのだが、手荷物になるし、トイレットペーパーなどは持ち歩きたくない。
 それに早く頼めばその日のうちに配達してくれるし、コンビニより安いのだ。
 そのほかにも、アマゾンミュージックやビデオ、小説などを読み上げてくれるAudible(オーディブル)など、アマゾンがなくては夜も日も明けない状態である。
 だがこうした便利な配達も、物流がなければ成り立たない。
 『現代』は、アマゾンだけではなく、セブンイレブンなども個人宅への配送を手がけようとしているが、物流のヤマト運輸や佐川急便が、ここから撤退したら完全に成り立たなくなると警鐘を鳴らしている。
 アマゾンの配送を請け負っている運送会社社員は、繁忙期になると1日に300軒を回ることはざらで、しかも、時間指定の商品が多く、常に時間に追われているからストレスは尋常ではないという。
 そのうえ、仕事が忙しければ賃金が増えるのが常識だが、物流業界では労働時間が長くなっているのに、給与が下がるという「異常」な状態におかれているというのだ。
 厚労省の調べだと、道路貨物運送業の給与は99年をピークに減少している。それに労働時間は全産業の年間労働時間が2124時間なのに、中小小型トラックドライバーは2580時間と長く、単純に時給に換算すると約1500円と、コンビニの深夜バイトと変わらないという。
 よく言われるように、アマゾンの荷物1個の配送単価は何十円と低く抑えられている。
 それに私もよく思うのだが、アマゾンは何を頼んでも箱で持ってくるため(日本郵便は通常は封筒)、郵便受けに入らない。
 そこで個々の部屋まで持ってくるのだが、出かけていれば再配達ということになる。
 本などは郵便受けに入れてもらえば、それですむのだが、どうしてそうしないのだろう。
 多いときは日に何度も宅急便の人が扉を叩き、煩わしいこともある。
 ドローンで家の前まで届ける実験をやっているそうだが、まだまだ実用化は先のことであろう。
 アマゾンは、プライム会員になれば配送料無料で、文庫本一冊でも届けてくれる。そのために町の書店は次々に潰れていく。出版社も、書店としての存在感を強力にしたアマゾンにはなかなかモノを言えない。
 だが、『現代』の「消費者は、物流に対してコストを支払おうという意識が低すぎます」(順天堂大学特任教授川喜多喬氏)のはたしかだ。
 「物流は社会の命綱」と言われるそうだが、モノがあっても運ぶ人がいなくては何もならない。
 われわれ消費者もそうだが、アマゾンなども、日本で生き残りたいのなら、物流に対する殿様商売を改めなくてはならないはずである。
 あまりの安さと時間の指定にアマゾンと取引をやめた佐川急便、その後を引き受けたヤマト運輸、日本郵便が一致団結して、アマゾン支配を打ち破るべく交渉を始めれば、アマゾン側とて譲らざるを得まい。
 消費者にとっては宅配料が値上げになるが、致し方ない。そう考えないと、いくらアマゾンに本を頼んでも、いつまでたっても届かないということになるかもしれない。否、なるはずだ。

 第2位。マレーシアで起きた金正男(キム・ジョンナム、享年45)暗殺事件には驚かされた。故・金正日(キム・ジョンイル)総書記の長男で、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(33)は腹違いの弟になる。以前から、金正恩から殺されるのではないかという噂があったが、なぜこの時期にという疑問はある。
 私は昔ひとりで北朝鮮に1か月近くいたことがあるだけで、現在の北朝鮮についての何の情報もないが、考えられるのは、安倍首相とトランプ大統領の首脳会談が引き金になったのではないかということだ。
 日米首脳会談に照準を合わせて北朝鮮は、新型中距離弾道ミサイル(IRBM)「北極星2型」の発射実験を実施した。
 これと同時に金正男暗殺指令を出したのではないか。金正男は英語を含めて何か国語かをある程度話し、欧米の記者はもちろん日本人記者とも交流があった。
 記者たちにとっては貴重な北朝鮮情報を取れる情報源であったはずだ。彼なら北朝鮮にいる反金正恩派についての情報も、国内のシンパから耳に入っていたであろう。
 金正恩は、ミサイルで日本とアメリカを慌てさせるだけでなく、反金正恩の象徴である金正男を殺すことで、日米や中国にとっても貴重な情報源を抹殺したのだ。
 日米のトップがゴルフ三昧でつるんでいるのを、北朝鮮はあざ笑い、自分たちの本気を見せようとしたのではないか。
 『現代』では近藤大介編集委員が、今から2か月ほど前に、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補がひっそり来日していたとレポートしている。
 彼はトランプ政権でも留任している。彼は、トランプ政権になればオバマよりさらに踏み込んだ政策をとるから、日本は覚悟をしてもらいたいと言ったそうである。
 踏み込んだとは、ワシントンとしては、北朝鮮をアメリカ、中国、ロシアで「信託統治」しようと考えているというのだ。
 しかし、これをやるなら「北朝鮮の後見人」を任じる中国をどう説得するかにかかっている。
 それがもしできたとして、金正恩を第三国に移らせ、誰をもってくるのか?
 長男の金正男が消された今、平壌には次男の金正哲(キム・ジョンチョル)がいるが、彼は女々しくて政治家向きではないという。
 本命は現在駐チェコ大使の金平日(キム・ピョンイル、62)だそうだ。彼は金日成(キム・イルソン)と後妻の間に生まれ、朝鮮人民軍の護衛司令部などの要職を歴任したが、金正日が後継に決まったことで、国外に転出した。
 一時、金日成は彼を呼び戻し、後継を印象づけたのだが、その直後、金日成が「怪死」し、金正日が総書記になり、彼はふたたび国外に放逐されたという。
 おもしろい見方だと思うが、やはり中国がどう動くかがカギである。その中国の「本音」をどう引き出すのか。トランプも安倍もその任ではない。韓国も含めてますます混迷を深める朝鮮半島。その先にあるのは、あまり見たくない惨状かもしれない。

 第1位は『文春』の不祥事が続いているNHK批判記事2本立てにあげたい。
 まずは、山形放送局酒田報道室の弦本康孝記者(28)が強姦致傷と住居侵入の疑いで逮捕された件。
 『文春』によれば、事件が起きたのは昨年の2月23日。20代の女性宅に侵入して性的暴力を加え、2週間のケガを負わせた。
 女性からは事件当日に被害届が出され、初動の時点で弦本の名前が上がったが、慎重に捜査を進めたうえで逮捕に踏み切ったという。
 だが、これだけでは終わらないようだ。弦本がいた前任地・山梨でも5件以上の強姦事件が起きていて、弦本が関与していた可能性が浮上しているというのだ。
 弦本容疑者は早稲田大学を出てNHKに入社。甲府放送局に配属され、山梨県警を2年担当していた。
 そこで先輩社員ともめ事があったが、弦本はそれを「パワハラだ」と上に報告したため、先輩社員は他部署へ異動、弦本も富士吉田支局に異動させられたが、以来、同僚達は彼に注意をしなくなったという。
 これなら、どこにでもいるダメ社員だが、彼が山形に異動する送別会の夜、帰宅した女性職員が家に入ろうとしたところ、何者かに顔を手で覆われた。彼女は驚いてドアを強く閉めたため、犯人は腕を挟まれ、そのまま逃げた。
 その際も女性は警察に被害を届け出たが、その翌日、弦本は右腕を骨折して局に現れ、「階段で転んじゃいました」と言い訳していたという。
 こうした弦本容疑者の数々の“疑惑”をNHKの上の人間が知らないはずはないのに、一人勤務の山形・酒田に異動させ1年間放置したため、今回の強姦事件を起こしてしまった。
 NHKの職場の上司達の責任が問われるべきだと、NHK関係者が語っている。
 一般の企業なら、テレビの前に社長が出てきて謝罪するのが当然のケースである。ましてや、国民の皆さまのNHKである。このまま知らん顔をするわけではあるまいな。

 もうひとつのほうは、NHKという公共放送の根幹に関わる重大疑惑である。
 NHKは視聴者が支払う受信料で運営されている。15年度の収入は過去最高の約6600億円になり、年々徴収額は増えているという。
 その受信料の契約・徴収はNHKが業務委託する地域スタッフや下請け企業の人間がやっている。
 長崎県佐世保市にあるA社もその一つで、そこで行なわれていた悪質な受信料契約の手口を、元徴収員の人間が明かしている。
 簡単に言うと、受信料には「地上放送」と「衛星放送」の2つがあり、地上契約は2か月前払いで2520円だが、衛星なら4460円と倍近い。
 そこで明らかに衛星放送が映らない地域の世帯に、衛星の契約をさせて、受信料を水増しするという「詐欺」をやるのが常習化しているというのだ。
 こうした手口をこの会社では「ブッ込み」と呼んでいるという。
 『文春』は元徴収員の証言を元に、その被害者たちを取材し、6人が被害を認めたという。中には、翌月気付いてNHK長崎放送局に問い合わせた視聴者もいた。すると「すみませんでした。地上契約の変更と返金手続きをします」と言われたが、4か月経った今も音沙汰がないというのである。
 これが事実だとしたら、これだけでもNHK会長は辞職すべきである。同様のことは全国的に行なわれているはずだと、件の元徴収員は言う。
 彼は、自分も刑罰を受ける覚悟で、彼がいたA社を刑事告訴することも辞さないと言っている。
 私が聞いた話でも、NHKが親のいない留守宅に来て、留守居の未成年の娘に受信料契約書を出して、脅すように何の説明もなしに署名させたというケースがある。
 昔、新聞はインテリがつくってヤクザが売ると言われた。今でも実態はそう変わってはいないが、NHKのこのやり方はひどい。
 連続強姦記者が番組をつくって、詐欺師達が視聴者をダマしてカネを集めてくるのだ。
 NHK本体をこそ訴えるべきである。籾井(もみい)会長が退いたからといって、NHKがいい方向に変わったわけではない。安倍政権が操る公共放送などなくなっても少しも困らない。NHK改革は視聴者が声をあげなくては始まらないのだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 我が国の狭い住宅事情を反映して、「片づけのコツ」はテッパンのネタだ。主婦層に向けた生活情報系のテレビ番組や雑誌が、こぞって採り上げている。片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵氏はいまやカリスマ的人気。さらに、やましたひでこ氏が提唱した「断捨離」という言葉も一般化した。

 この流れに「参戦」したというわけではないだろうが、経済評論家の勝間和代氏がおもしろい新語を考案した。それが「収納破産」である。

 多方面で活躍する彼女も、自宅ではどうも片づけが苦手であったらしい。「汚部屋(おへや、おべや)」にはモノが増え続け、ついには家の中の収納スペースを使い切ってしまう。こうなると、いわば「思考停止」状態に陥る。いたるところに未整理のモノが転がっている様子を眺めて、何から手をつけてよいかわからず、ただ呆然とするばかり……。まさに経済的な破産と同じような精神状態となる。これが収納破産だ。

 勝間氏がこの状態からどうやって脱却したかは著書(『2週間で人生を取り戻す!勝間式汚部屋脱出プログラム』 (文藝春秋刊))やネット上のインタビューを読んでいただくとして、筆者としては、その絶妙なネーミングに唸った。モノがあふれるままにしておくと、「いつか取り返しがつかないことになる」と脅かされているよう。破産はイヤだと、たしかに片づけをする気になるのである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 独特の仕草と愛らしい表情で、人を魅了する猫たち。愛猫のためならお金に糸目をつけずに餌や玩具などを与える猫好きも多く、ネコノミクスの快進撃は衰えを知らない。そうした飼い主に出会えた猫は、家族として慈しみ、育てられ、暖かい寝床と空腹を満たす餌に事欠くことはないだろう。

 その一方で、飼い主のいない猫たちもいる。環境省の「動物愛護管理行政事務概要」によると、2015年度に全国の動物愛護相談センターに持ち込まれた猫は9万75匹。そのうちの6万7091匹が殺処分されている。10年前の殺処分数22万6702匹に比べると3分の1以下に減少したものの、いまだ人間の都合で多くの罪のない猫の命が奪われている。

 そうしたなか、2011年から6年連続で「猫の殺処分ゼロ」を実現しているのが、東京都千代田区だ。

 野良猫による糞尿、ゴミ荒らしなどの苦情が保健所に寄せられ、頭を悩ませていた千代田区では、2000年から「飼い主のいない猫の去勢・不妊手術費助成事業」を開始。翌年、住民と在勤者によるボランティアと動物病院の獣医師などがネットワークを組んで、「ちよだニャンとなる会」が発足した。

 そして、路上で暮らす飼い主のいない猫に不妊・去勢手術を行なって繁殖を抑え、元の場所に戻して地域猫として見守っていく「TNR(Trap,Neuter,Return=一時保護/去勢・不妊手術/元の場所に戻す取り組み)活動」を行なっている。

 また、区の協力のもと、区内で保護された猫の譲渡会を定期的に開催し、飼い主探しもしている。譲渡の対象になる猫は、ワクチン接種、去勢・不妊手術、ウィルス検査、のみやダニの駆除も済んでおり、参加費用もかからない。猫が、愛情を注いでくれる飼い主と出会えるような場を提供しているのだ。

 こうした活動が実を結び、千代田区は猫の殺処分ゼロを実現。全国の意欲ある自治体やボランティアの間に、この取り組みが広がりつつある。

 犬に比べて、猫の殺処分数は格段に多い。それは、繁殖率の高い猫の特性にもある。猫は、年に2~3回出産し、1回につき4~5匹の子猫が生まれる。いくら可愛くても、生まれた子猫すべてを飼ったり、新たな引き取り手を探したりするのは難しい。その結果、全国の動物愛護相談センターに持ち込まれて、殺処分の対象となっている猫の8割が生まれたばかりの子猫となっている。

 人間の都合で、猫に不妊・去勢手術を施すことに異を唱える意見もあるが、飼い主のいない猫を年間数万頭ずつ殺処分している現実の前では、バースコントロールは不可欠な対処法となっている。

 2月22日は、「にゃんにゃんにゃん」の猫の日だ。

 人の都合で殺処分される猫がいなくなり、人と動物が共生できる社会の実現を祈りたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 2016年に公開された映画のランキングが各誌・各メディアで出そろった。『キネマ旬報ベスト・テン』第1位など、アニメ映画『この世界の片隅に』が席巻している。こうの史代(ふみよ)・原作、片渕須直(かたぶち・すなお)・監督による本作は、11月12日の公開とともにSNS上で高い支持を受け、客足を伸ばしていった(約3か月の興行で興収20億円を突破)。ヒロイン・すずを演じたのん(能年玲奈(のうねん・れな))は、芸能界のむずかしい事情から、多くのメディアで宣伝協力を得られなかった。だが、その熱演はたしかに観客の心を打った。のん無しでこの成功はあり得ただろうか。

 良質なものが売れるとは限らない、それが現実であろうが、小規模公開からスタートしたコノセカ(一部のマスコミにおける『この世界の片隅に』の略称)は今回、みごとに社会現象化した。異例のヒットの理由については、先に述べたヒロインのハマりようなど、様々な分析がある。当時の庶民の生活描写や、建築物などのディテールなど、「何度も観て確認したくなる」といった視点からのアプローチも多い。

 登場人物のなめらかな動きにも、アニメーション技術のこだわりがある。もちろん、なにもテクニックを見せびらかしたいわけではない。キャラクターたちが画面の中に生きている「実感」のようなものを表現するためだ。そのための手間を惜しんでいない。いろいろとビジネス的(予算的)には怖い選択をしているだろう。だが結果として、コノセカは興行的にも結果を残したのだからおそれいる。片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』が、打ち切り寸前から口コミで逆転した記憶がスタッフの中にはあったかもしれない。

 もう一つ、送り手以外からみたヒット理由を挙げるとすれば、やはり現状の世界の不穏な雰囲気であろう。戦争を知らない世代も、「知りたくない」世代というわけではない。漠とした世情への不安は、若者を無意識的に劇場に向かわせているのではないか。笑いの要素も多いエンターテインメントながら、日常が戦争に振れるとはどういうことか、声高でなくとも伝わってくるのが『この世界の片隅に』という作品であった。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授が提唱する経済理論。アベノミクスが結果を出せず、デフレ脱却が思うようにいかない中、日本経済をリードする新たな経済理論として注目を集めている。

 提唱者のシムズ教授は1942年、米国生まれ。専門は計量経済学、マクロ経済学。2011年に、「マクロ経済学における原因と効果」に関する功績で、ノーベル経済学賞を受賞した。

 シムズ理論は一口で言うと、「デフレが長引く中では、財政悪化を招いてでも、財政出動を拡大すべし。それがデフレ脱却の近道である」というものだ。さらにストレートに言えば、「デフレから脱却できないのは、政府、財務省の役人が財政規律にこだわりすぎるからだ」ということだろうか。

 脚光を浴びるシムズ理論だが、GDP比で2倍、先進国で最悪水準の財政赤字を抱える日本で「財政出動・イケイケ論」は、危険ではないのか、との懸念も少なくない。エコノミストの間では、シムズ理論を実践すると、デフレを通り越して激しいインフレを招く、との見方もある。

 そもそも財政出動のために赤字国債をさらに大量に発行するのは、無責任ではないか。借金を子や孫に転嫁する浪費癖の親の所業である。

 一方、シムズ理論が脚光を浴びる背景についてこんな観測も流れている。

 <消費税再引き上げを見送るべきだ、とする安倍政権による意図的なアドバルーンだ。財政出動の先には消費増税の再先送りの可能性があるのではないか>

 その観測に信ぴょう性を持たせているのは、シムズ教授が、浜田宏一内閣官房参与に近いとされる人物だからだ。浜田氏は、アベノミクスの理論的支柱で安倍晋三首相のブレーンである。

 安倍政権が今後、シムズ理論を取り入れるのかどうかわからない。ただ、採用する際は「財政悪化をどの程度まで許容するのか」の線引きも、しっかり定めておく必要がある。いきなりまた「新しい判断」で消費税の先送りをされたら将来世代の反発を買うだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 SNS上でのやりとりの一手法。昨今は、メッセージの文末に置く絵文字や顔文字の代わりに、漢字や平仮名、もしくは記号などの一文字だけを添えるパターンが、若い世代を中心に増えているのだという。なにも付けないのはそっけない、でも凝るのは面倒というメンタル……なのだそう。

 たとえば、「草」は(笑)の意味で、waraのwの連続、「wwwww」(大爆笑)が「草が生えている」ように見えることが発祥だとされている。

 ほかにも「杉」は「過ぎ」、「乙」は「お疲れさま(それは大変だったね、ドンマイ的な意味でも使われる)」、「み」は「“わかりみ”みたいに、接尾辞を付加しても名詞にならない言葉を無理矢理名詞化する」……ほか、さまざまな一文字メッセージが「ほぼ毎日」と言ってもよいくらい続々と、ちまたに出回っている。

 ただ、コレはあくまで“相互理解”が成立している関係内でのみ通用する一種の暗号のようなものゆえ、まだ知り合って間もない相手へとやみくもに多用すれば「ただの頭の悪いヒト」「誤字も打ち直さないガサツでせっかちなヒト」……と見なされている危険性も高い。

 「草」を(笑)と解釈できない層に「ヤバイ草」なんてメッセージを送ったりしてしまった日には、いろんな意味で「ちょっと危ないヒト?」のレッテルを貼られ、挙げ句の果てには半グレ扱いされてしまうことだって充分にあり得るのだ。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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