日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 スズランの異名をご存じだろうか? 筆者も知らなかったのだが、「きみかげそう」というらしい。漢字で書くと「君影草」。
 その名を知ったのは、ある読者からのお手紙であった。その方は亡くなられた奥様の追悼文集を執筆なさっていて、文中で奥様のことを、奥様が愛したスズランの異名「君影草」と呼びたいとお考えになったらしい。そしてその呼び名の根拠として、『日本国語大辞典』でも引用している植物学者松村

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第88回
 

 2011年の流行語大賞が「なでしこジャパン」に決まったという。日本女子サッカーチームのワールドカップ初優勝は、震災後の日本の明るい話題のひとつであった。
 「なでしこジャパン」の「なでしこ」はもちろん「大和なでしこ」からきている。「大和なでしこ」は日本女性の清楚な美しさをたたえていう語だが、一般にその意味で使われるようになったのは江戸後期になってからのようで比較的新しい。

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第87回
 

 野田佳彦総理が、先日あった若手企業経営者の会合で、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加と消費税率の引き上げなどについて「捨て石になってけりをつける」と挨拶したという。首相の強い決意を感じさせる発言ではあるが、正直言って「捨て石」ということばにいささか違和感をもった。というのは、「捨て石」は意味が揺れていることばで、その威勢のよさとは裏腹に、総理の意図が必ずしも正確に伝わってこない気がし

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 体格がいい人のことを俗に、「がたいがいい」とか「大きながたいをしている」などと言うことがある。この「がたい」ということばは比較的新しいことばで、現時点では辞書によって載せていたりいなかったりしている。
 語源に関しても、似たような意味のことばに「がかい」があり、辞書によっては「がたい」はこの「がかい」と「図体(ずうたい)」との混同か、としているものもあるが、実はその関係はよくわからない

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 日本語にはその語のもつ音(おん)からの印象で、意味を誤解させられてしまう語があるらしい。
 たとえば、「彼はやおら立ち上がった」というときの「やおら」がそれである。
 文化庁が発表した2006(平成18)年度の「国語に関する世論調査」では、本来の意味である「ゆっくりと」で使う人が40.5%、間違った意味の「急に、いきなり」で使う人が43.7%と、逆転した結果が出てしまったので

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