日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 前回(第103回)「他山の石とせず」という間違った言い方が広まっていて、「他人事」の意味で使われているようだと書いた。実はこの「他人事」にあえて読み仮名を付けなかったのだが、皆さんはこの語を何と読んでいるであろうか。
 そのまま素直に読めば「たにんごと」。だが、伝統的な読み方は「ひとごと」なのである。
 「ひとごと」は『日国』によれば、平安時代から用例が見られる(『紫式部日記

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 ちょっと前の話だが、当時小学生だった私の子どもが持って帰った「学校だより」に目を通していて、おやおやと思う表現を見つけた。
 他校で起きたいじめ問題に関して、本校ではそのような実態は認められないが、決して他山の石とせず、そのようなことが起きないように注意深く学校生活の様子を見守っていきたい、という内容であった。
 もうお気づきになった方も多いであろう。引っかかったのは「他山の

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 最近の小学生向けの国語辞典は、すべての漢字にふりがなを付けたもの(総ルビ)が主流になっている。このコラムでも再三紹介している「辞書引き学習」を、小学校低学年から、場合によっては幼稚園児から始める子どもが増えているためである。
 編集部でもそうした動向を受けて、小学生向けの辞典類は新刊も改訂版も極力総ルビにするようにしている。漢字にふりがなを付ける作業は、データさえあれば最近はソフトを使

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 タイトルを見て、ほとんどの方は、また「情けは人のためならず」「流れに棹(さお)さす」などの話かとお思いになったかもしれない。だが今回はことわざそのものの意味のことではなく、ことわざの中で使われていることばを間違って理解しているものがあったという話である。
 “あった”というのは実は筆者自身のことで、いささか恥をさらすことにもなるのだが。というのも、先ごろ刊行された『故事俗信ことわざ大辞

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 「常用漢字表」は一般の社会生活で使われる漢字の目安を示したものである。ところが、あくまでも筆者の好みなのだが、使うのにいささか抵抗を感じる漢字がないわけではない。たとえば「子供」という表記がそれである。 
 「常用漢字表」では「供」の訓「とも」の例欄に「供、子供」が掲げられていて、公用文などでも何ら問題なく使えることになっている。にもかかわらず、つい「子ども」と書きたくなってしまうのだ

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